市販車ベースHRC-K20Cエンジンのポテンシャルと気になるコスト。HRC/ホンダが目指すターゲット

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2024年11月07日 18:20  AUTOSPORT web

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市販車ベースのK20Cエンジンをレース仕様のHRC-K20Cとして開発して臨んだ鈴鹿での初テスト。
 11月7日に鈴鹿サーキットで行われた、スーパーフォーミュラSF19に搭載した市販車のシビック・タイプRのエンジンテスト。HRC(株式会社ホンダ・レーシング)が主導し、HRC-K20Cと呼ばれる市販のシビック・タイプRエンジンを改良したエンジンであることが明らかになったが、今回のプロジェクトについて現場開発陣を率いる佐伯昌浩プロジェクトリーダーに話を聞くことができた。
 
 今回発表されたHRC-K20Cは、市販車のシビック・タイプRエンジンK20C(2リッターVTECターボの水冷直列4気筒エンジン、カタログ値で最高出力330ps(馬力)/6500回転)をベースとして、最高600馬力にパワーアップさせてレースカテゴリーでの使用を前提に再開発。AからDの4つのスペックを備え、今回のSF19への搭載は最高スペックのスペックDを搭載してテストを行った。

 SF19に搭載されたスペックDのHRC-K20Cはドライサンプ化され、シリンダーブロック、シリンダーヘッドを鋳造方法を工夫して強化。現代フォーミュラカーではエンジン自体がリヤ部のフレームのような役割になり高い剛性が求められるが、エンジンのブロック部にドライサンプ用のロワケースを装着するなどして、剛性を確保しているという。

「今回のテストで搭載しているのは一番上のDというスペックで、F1直下のフォーミュラ・カテゴリーでも耐え得るエンジンとして考えています」と話すのは、今回のプロジェクト開発責任者であり、スーパーGTやスーパーフォーミュラでも現場を統括するHRCの佐伯昌浩プロジェクトリーダー。

「ブロックは当然、K20Cでして、内蔵物に関しても基本的にはK20Cなので大きくチェンジしているわけではありません。ヘッドはエキゾーストと別体になっています。量産はヘッドと一緒になってエキゾースト1本出しになっているところ、4気筒それぞれにエキゾーストが出ているスペックになっています。エキゾーストが一体になっていると、どうしても水冷却するとラジエターのサイズも大きくなってしまう。そういう冷却への対応としてエキゾーストを別体にして、エキマニ(エキゾーストマニホールド/多岐管)に変えているのがこのスペックDの特徴です」



 このHRC-K20Cの開発が目指す先は、どのようなものなのか。

「この先に考えているのは、まずはもっともっとコストダウンしたいなと。タービンも市販品に変えたいですし、ECU(電子制御)も今回は普通のSF23のものを使っていますけど、エンジンと汎用ECU、または汎用ECUのデータ提供なのか、いずれにしてもエンジンとセットで販売して、リースという形態は取りたくないと考えています。リースになると、どうしてもサポート費やメンテナンスで、こちらもユーザー側も相当なコストがかかってしまう。全体的なコストをどんどん下げていきたいなと。そこはこれから突き進めたいです」と話す、佐伯リーダー。

 気になるHRC-K20Cの価格、そして販売時期などは、今の段階ではまったくの未定だという。

「まだ正確には言えないのですけど、今の開発時点で(レーシングエンジンに比べて)半分以下のコストですので、これからもっともっと下げたいと思っています。基本的には市販車の量産部品も多用していますので、レーシングエンジンに比べて、実際にオーバーホールした時もコストは安く収まるし、このエンジンをもっと商用化できる試験ができれば、かなりお安く提供できるのではないかと考えてます」と、続ける。

 そもそものこのエンジンの開発の目的に関しても、レーシングカーの中古車事情や需要が多いことが発端となっているという。

「今回、久しぶりにSF19のシャシーを持ち出してエンジンを搭載していますけど、SF19からSF23に変わった時点で、各チームさん、SF19の部品はそのまま廃棄になってしまっているんですよね。そういう車両に対してのエンジンを販売することができれば、海外の国でもレースができる。チームとしても新車を買う時に中古車として販売できれば負担は減らすことができるという流れにもなると思っています」

 欧米ではすでに古いF1マシンやF2クラスのマシンを走らせてヒストリック・レースとして行われているが、まだまだランニングコストも高く、日本では馴染みが薄い。それはフォーミュラカーに限ったことではなく、かつてのCカーやスポーツカーなど、日本のこれまでのレース車両の多くにも同じ状況が当てはまる。

「フォーミュラに限らず、たとえばハコ車でもメーカーからのエンジンがないからドンガラになって廃棄するだけという車体が出てきているのはたしかなので、そういうところにも活用できたらなと考えています。他のアジア圏とかで、古いレーシングカーを集めてレースを開催するとか、GT300のJAF車両などもPU/エンジンがないと言われているので、そういうところにも活用できるかなと」

 今回のテストでスーパーフォーミュラのマシン、そして鈴鹿というエンジンへの負荷が大きい状況で問題なく走行できたことから、今後はベンチテストで耐久性の確認などの作業が進められるという。

「もうかなり満足できている状態なので、あとはベンチテストの方で何万キロ保証を取るのかとか、そういう段階かなと。とにかく我々としてはK20Cの4種類のバージョンを作り上げた状態で、この先、要望があれば販売していきたいと考えています」

 レースの裾野を広げるような今回のホンダ/HRCの新しいエンジンプロジェクト。もっと多くの人にレーシングカーが身近になれば、現役のカテゴリー、そしてレースにもポジティブな影響が期待できそうだ。

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