スケートボード アリサ・トゥルー インタビュー
今夏のパリ五輪スケートボード・女子パークで金メダルに輝いた14歳のアリサ・トゥルー(オーストラリア)。母は日本人で、愛理沙(ありさ)の漢字名も持つ彼女の活躍に、日本からも祝福の声があがったのは記憶に新しい。9月の「X Games Chiba 2024」に合わせて来日したアリサに、五輪金メダリストとしての今を語ってもらった。
* * *
【金メダルの裏側...これって作戦って言えますかね?】
ーーパリ五輪での金メダル獲得、おめでとうございます。お祝いとして、アリサ選手が大好きだというお茶漬けのもとをプレゼントできたらと思います。お茶漬けのなかでは何味が一番好きですか?
アリサ・トゥルー(以下同) ありがとうございます! 海苔茶漬けが好きです。白いごはんにピッタリの味で、とてもおいしい。小腹が空いた時に、簡単に食べられるのがいいですよね。
|
|
ーー日本語のほうは上達してきましたか?(※インタビューは英語で行なった)
前よりはちょっとわかるようになってきていますが、しゃべる機会があまりないので、なかなか上達してないです。
ーーでは、さっそくパリ五輪を振り返ってもらいましょう。
パリ五輪はすごく楽しくて、いい経験になりました。いつも競技しているのとは違う、五輪専用のパークのコースで滑れたのがうれしかったです。
ーー金メダルは予想どおりでしたか?
|
|
金メダルを獲ることは全然予測していなくて、決勝に行くことまでしか考えていませんでした。そして、決勝の最後のランが自分の納得する滑りだったので、それが一番うれしかったです。
ーー女子パークの予選が終了した時点では、決勝に進んだ8人中で日本の開心那選手がトップ、アリサ選手は6位でした。逆転の作戦はありましたか?
順位よりも、自分がもっともやりたかった一番難しいランをすべて滑りきることに集中していたら、点数が上がって、順位も上がっていったんです。これって、作戦って言えますかね?(笑)
ーーそして、大技「マックツイスト540」(※空中で身体を1回転半する大技)を決勝のラストランでみごと成功。大逆転での金メダルとなりました。そうして、アリサ選手は日本でも有名人に! 街中を自由に歩き回れなくなった?
そこまでは、まだないですけど(笑)。
|
|
【変わったこと、変わらなかったこと】
ーーオーストラリアではどうですか? アリサ選手はオーストラリア史上最年少の五輪金メダリスト。金メダルを獲って、周囲で変わったところがありますか?
私の友だちの対応は何も変わってなくて、今までと同じ。金メダルをすごく喜んでくれています。時々、空港で自分が知らない人たちに、「あっ! アリサ選手だ」って感じで見つけられることがあって、ビックリしちゃいます。
ーーアリサ選手はどんな対応を?
サインをしたり、一緒に写真を撮ったりしますよ。
ーーでは、アリサ選手自身で金メダル獲得後に何か変わったところはありますか?
私のなかでは何も変わってなくて、金メダルを獲った時はすごくうれしかったんですけど、五輪が終わってからも大会は続いていくので、意識はつねに次の大会、次の大会というふうになっています。
【日本の選手たちはライバルであり友だち】
ーー2021年の東京五輪・女子パークは1位が四十住さくら選手、2位が開選手、3位が日系イギリス人のスカイ・ブラウン選手。前回のインタビューでは、日本人や日系の選手たちには「スケートボードが合っている」という話が出たと思います。
私も日系選手なので、彼女たちみたいに、パリ五輪では表彰台に立ちたいと話したのを覚えています。
ーーそして、パリ五輪でも1位がアリサ選手、2位が開選手、3位はブラウン選手と、今回も日本人や日系の選手たちが表彰台を独占しました。その強さの秘密は何だと思いますか?
日本の選手たちはすごく練習をするんです。そういうところが強さと関係あると思います。そんな日本の選手たちに負けないぐらい、私もたくさん練習しています。
ーーパリで表彰台に立った3選手は、仲がいいんですか?
住んでいるところが違うので、いつもスケートを一緒にできるわけではないですけど、大会ではいつも会って話してますし、いい友だちです。
みんなとてもいいスケートボーダーなので、彼女たちがいるから自分も一生懸命頑張れるし、自分と一緒に高みを目指してくれる、ライバルって言えばライバルだし、友だちだって言えば友だちだし......そんな感じかなと。
【次なる大技を大きい大会で決めたい】
ーー今後、追う立場ではなく追われる立場になってくると思います。
たしかに、自分が今回の五輪で勝ったので、きっとみんなが自分を追い抜かしていこうと頑張ってくると思うんです。でも、自分もみんなに負けないように上を目指して頑張っていきますし、みんなすごく上手なので、次は誰が勝つかわからない感じだと思っています。
ーーアリサ選手は14歳とまだまだ若いですが、これからどんどん若い選手たちが出てくると思います。これからはどんな選手になっていきたいですか?
もっともっとスケーティングを上達させながら、私よりも若い選手たちが、どんどんインスパイアされていく滑りをしていきたいです。自分だけじゃなくて、みんなが上達していくような滑りをしていければと思っています。
ーー今、一番見せたい技は?
やっぱり「スイッチマックツイスト540」(※利き足とは逆のスタンスで空中1回転半する大技)。パークで、それも大きな大会で成功させたいと思っています。それが今の私の目標であり、見てもらいたい技です。
ーーパリ五輪に続いて、2028年ロサンゼルス大会以降の五輪でも金メダルを獲り続けたいという目標はありますか?
もちろん目指したいと思ってはいますが、とりあえず、すべての五輪で決勝に進むことをまずは目標にしていきたいですし、自分がやりたい技を、大会でしっかりやっていきたいです。
【スケートボードをすることはFun】
ーー今回の「X Games Chiba 2024」は、パリ五輪が終わって、次へ向けてのスタートという大会になると思います。
自分にとっての一番難しいランを成功させて、友だちと楽しみたいと思っています。(※結果は女子パーク優勝)
ーー「友だちと楽しむ」。スケートボードでは"Fun"が大切ですか?
スケートボードをすることが"Fun"じゃなかったら、スケートボードをする意味がないと思いますし、それは私だけじゃなくて、みんなもそうだと思いますよ!
ーーまだロサンゼルス五輪まで4年ありますが、それまでずっと"Fun"でいけたらと?
そういう気持ちで、とりあえず、すべての大会で自分のベストを尽くしていきたいですし、その結果として勝てたらうれしいと思います。
ーー最後に、日本のスケートボーダーたちにメッセージをお願いします!
スケートボードが好きなみなさん! スケートボードの技をどんどん覚えて、これからも一緒に"Fun"していきましょう!
* * *
「X Games Chiba 2024」女子パークでも優勝を決めたアリサ。予選トップ通過で臨んだ決勝は、1本目でミスが続くも、2本目では得意技の「マックツイスト540」を決め2位に浮上。さらに3本目は、45秒間の試技がアッと言う間だと思わせる安定感と完成度で、唯一の90点台を叩き出し、パリ五輪を彷彿とさせる大逆転で勝利した。
【プロフィール】
アリサ・トゥルー Arisa Trew
2010年、オーストラリア・ケアンズ生まれ、ゴールドコースト育ち。スケートボードだけでなくサーフィンも得意な「二刀流」選手。2024年パリ五輪スケートボード・女子パークで金メダルを獲得。得意技は、ボードに乗った状態で空中に飛び出し、ボードを1回転半させる「マックツイスト540」。好きな日本の食べ物は、餅、アイスクリーム、たい焼き。お茶漬けのもとは遠征の時は忘れずに持っていくほどの大好物。