上期決算「KDDI・ソフトバンク」と「ドコモ」で明暗が分かれたワケ 鍵を握る“メインブランドへの移行”

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2024年11月09日 06:11  ITmedia Mobile

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ソフトバンクは、コンシューマー事業のモバイル分野が122億円の増収になった

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社が、上期決算を発表した。3社とも、2021年からの官製値下げで通信事業の収益確保に苦しんでいたが、KDDIとソフトバンクはその状況を完全に脱したように見える。スマホの契約数が順調に伸びている他、1ユーザーあたりの平均収入を示すARPUも上昇の幅が大きくなっている。


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 背景には、メインブランドへの移行が進んでいることがある。一方で、ドコモは通信サービス収入が減少。基盤を強化するにあたってユーザー獲得に重きを置いた結果、販促費用もかさんで営業利益も落ち込んでいる。ARPUは第1四半期から横ばいで反転には至っていない。3社決算を比較しながら、通信事業の現状を分析する。


●メインブランドへの移行が加速、原動力になった金融・決済連動料金


 通信料収入の増加傾向がはっきり出たのが、KDDIだ。上期の通信料収入は7427億円。前年同期との比較で、46億円の増収になった。同社の通信料収入は前年度に反転しているが、その増収幅は8億円だった。通信量値下げの影響を脱し、その勢いが徐々に加速している。ブランド別に見ると、メインブランドのauが約3%、サブブランドのUQ mobileが約7%の増収になっており、特にUQ mobileが成長をけん引していることが分かる。


 一方で、ARPUを底上げする原動力になっているが、UQ mobileからauへのブランド変更だ。こちらも、前年同期で約2倍に拡大。サブブランドで獲得を増やしつつ、メインブランドへの移行で稼ぐというマルチブランド戦略がうまく機能し始めていることがうかがえる。


 KDDIの代表取締役社長CEOの高橋誠氏も、「ブランドミックスも改善傾向にある」と自信をのぞかせた。UQ mobileからauへ移行すると、基本的にはデータ容量が無制限の料金プランになり、ARPUは上がる。UQ mobileで獲得したユーザーを、auにどう移行させていくかが今後の鍵になる。


 コンシューマー向けの通信事業は、ソフトバンクも近い状況といえる。同社のモバイル通信は、上期に122億円の増収。前期の下期に売上高が反転して以降、そのトレンドが拡大している。コンシューマー事業全体での営業利益も、4%の増益を果たした。また、スマホの累計契約者数は3110万に達しており、内訳の詳細な数は非開示ながら、メインブランドのソフトバンクも純増しているように見える。


 決算説明会では、同社の代表取締役社長執行役員兼CEO、宮川潤一氏が「『ソフトバンク』への移行収支」と題したデータを公開した。これによると、2023年度の上期は、ソフトバンクからY!mobile(ワイモバイル)への移行が超過しており、収支はマイナスだった。これに対し、2024年度上期はY!mobileからソフトバンクへの移行がプラスになった。これは、通信料値下げ以降、初めてのことだ。


 宮川氏は、「通信料値下げの結果、Y!mobileがメインになり、価格重視のお客さまの移動が活発になった。ソフトバンクとY!mobileブランドのすみ分けに注力し、昨年度ペイトクを出したが、その評価も高まり、徐々にソフトバンクへの移行が増えてきた」と語る。PayPayでの還元率上昇と大容量、無制限のデータ容量を組み合わせたペイトクが浸透することで、風向きが変わってきたというわけだ。


 宮川氏は、「数を追いかけて無駄な獲得コストをかけるよりも、中身を改善した方がいい。どちらかといえば、ソフトバンクブランドとY!mobileブランドの入れ替え(促進)にお金を使っていく」と語る。KDDIもメインブランドへの移行数は重視しており、2社とも、金融・決済連携の料金プランによって、メインブランドへの移行を促進する方針にかじを切ったといえる。


●auマネ活プランやペイトクに改定の兆し? 2社は特典見直しを示唆


 とはいえ、データ容量が無制限で、かつ金融・決済サービスと連動した料金プランはまだスタートしたばかり。2社ともキャンペーンとして契約当初の還元率を上げるような施策は用意しているが、その効果も徐々に切れつつある。例えば、auのauマネ活プランは、au PAYゴールドカードで料金を支払うと、その金額に対して20%のポイント還元が受けられるが、これは12カ月間限定。開始当初に契約したユーザーは、既に特典が終了している。


 同様に、ペイトク無制限も契約時点ではキャンペーンで初めて契約したときの還元率が5%から10%に上昇する。上限は4000円から変わらないが、ここに達しやすくなるのがメリットだ。5%だと1カ月に8万円使わないと還元を受け切れないのに対し、10%であれば4万円で4000ポイントを受け取ることができる。料金プランの恩恵をより感じやすくなるといえる。ただし、こちらの特典も料金プラン適用から3カ月間限定。キャンペーンが終了すると、通常と付与率は5%まで下がる。


 この点は、両料金プランの課題といえる。キャンペーンが終わった時点で、ユーザーがサブブランドに戻ってしまう恐れもあるからだ。これに対し、KDDIの高橋氏は料金プランの改定を「考えている」と断言。「auマネ活プランは非常に調子がいいので、少しエンハンス(強化)したい。マネ活を入れたあと、他社もペイトクなどをやってきたが、ちょうど1年たったので次の手を考えている」と語った。


 ソフトバンクも、こうした動きに対抗する方針を示した。宮川氏は、ブランド切り替えをどう促進するのかという質問に答える形で、「端的に言うと、ペイトクの魅力を高めることをやっていきたい」としながら、次のように語る。


 「Y!mobileからソフトバンクへ移行するお客さまの気持ちとしてあるのは、1つが容量だが、もう1つはペイトクでPayPayを使い、結果として今までよりも値下げになると思われている。この要素をどちらも取り込めるよう、ペイトクの魅力を磨きたい」


 決済・金融サービス連携の料金プランは、ドコモが4月にahamoポイ活を導入、8月にはeximoポイ活をスタートし、競争が激化している。メインブランドでは、大容量や無制限のデータ容量に加え、自社の金融・決済サービスと連携させることでいかに“お得感”を打ち出せるかが鍵になってきたというわけだ。auマネ活プランやペイトクの導入から1年がたち、その傾向がはっきり見えてきたといえる。


●減収が続くドコモ、ARPU向上やネットワーク品質改善が課題か


 一方で、サブブランド対抗のirumoを2023年7月に導入したドコモは、少々事情が異なる。KDDIやソフトバンクが早くからサブブランドでユーザーを獲得し、メインブランドへの移行を促進してARPUを向上させるフェーズに入ってきたのに対し、ドコモはirumoによる減収が現在進行形で直撃している状況に置かれている。


 上期のモバイル通信サービスの収入は、前年同期比で354億円の減少。端末などの機器収入もこれを補いきれず、コンシューマー通信全体でも208億円の減収となった。また、営業利益はモバイル通信サービスの収入減に加え、機器販売収支や販売促進強化でのコスト増が響き、減益幅は472億円に拡大している。原因について、ドコモの代表取締役社長、前田義晃氏は「irumo導入当初、多くの方にご加入いただいた影響」と語る。


 ARPUは3910円で第1四半期から横ばいで下げ止まっているが、これは旧料金プランからeximoやahamoへの移行率が上がっている効果が大きい。また、irumoやeximoといった段階制の料金プランについても、「データ利用量が年々増加しており、容量の大きい方(段階)に移行する傾向がある」(前田氏)という。


 これは、ドコモが「将来の収益の礎となる顧客基盤の獲得、シェアの拡大に注力すべきである」(同)という方針を打ち出した影響も大きい。若年層に照準を合わせた施策を家電量販店などで展開することで、純増数は増加。「足元では、10月のMNPが想定を大きく上回るプラスになっている」(同)としており、流入も増えている。スマホなどのハンドセット解約率も低下した。


 とはいえ、コンシューマー向けの通信事業での増収幅が拡大し、ARPUも上昇基調に入ったKDDI、ソフトバンクと比べると、回復が遅れている印象も受ける。サブブランド的な料金プランの導入が遅かったこともあり、2社とは時間差で料金値下げの影響を受けている格好だ。irumoやahamoからeximoへの移行を進めていくには、まだ時間がかかる可能性もある。


 また、こうした大容量プランは、高品質なネットワークがあってこそ生きてくるものだ。ドコモは体感品質の改善に取り組んでいる最中。年度末までにSub6と転用周波数帯を使った5Gのどちらも拡大し、エリアとネットワーク容量を両立させていく方針だが、結果が出るにはまだ時間もかかる。一方で、前田氏は「全体の設備投資も通常のコストも、品質対策に振り向けている」(同)といい、チューニングが中心だった従来以上にコストをかけ、本格的に対策を進めていることを示唆した。通信品質は増加するデータトラフィックを支える要ともいえるだけに、その成果にも注目しておきたい。



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