神奈川県警は11月4日の午前9時9分、横須賀署地域課で駐在所勤務の巡査長、澤田義弘(36)を逮捕した。
容疑は5月24日、横須賀市の郵便局で、同市内に住む70代男性の通帳と印鑑とともに、容疑者が偽造した委任状を提出して、現金700万円をだまし取ったというもの。
被害者とは顔見知りの関係
「澤田容疑者と被害者の男性は普段から顔見知りだったようです。男性から預かっていた通帳と印鑑と、勝手に作成した委任状を持って、警察官の制服姿のまま、郵便局で預金を引き出しました。8月下旬に男性の親族が高額な引き出し金に気づいて、横須賀署に相談して発覚しました」(全国紙社会部記者)
沢田容疑者は、警察の取り調べに対して、「私がやったことで間違いない」「借金の返済にあてた」と、容疑を認めている。
現役の警察官が、本来は守るべき住民の金をだまし取るという、ありえない犯行。神奈川県警監察室は、
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「被害者をはじめ、県民のみなさまに深くお詫び申し上げます。警察官として言語道断の行為であり、今後の捜査・調査結果を踏まえ、厳正に対処してまいります」
と、謝罪し、遺憾の意を表した。
2023年2月から横須賀市にある『吉倉町(よしくらちょう)駐在所』に勤務する“駐在さん”だった澤田容疑者。そこから1kmほど離れた郵便局へ行き、窓口で700万円を引き出した。
「容疑者が警察官の制服を着て、警察手帳も見せたうえで、通帳と印鑑、指定の書類を提出してきて、被害者に代わっておろしたいと申し出たので、窓口の担当者は“信用して金を渡してしまった”と言っています。ただ、警察官だからといって、その手続きを省略してというわけではなく、規定の手続きにのっとって対応しました」(日本郵便株式会社の南関東支社、広報担当)
本物の制服を着た警察官であれば、信用してしまうのも無理はない。
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近所で聞いた容疑者の評判は
澤田容疑者の評判を駐在所の近所で聞いた。
「背は高めで、ややふくよかな体形。よく挨拶もしていたし、いつもニコニコしていて気さくな雰囲気でしたよ」(近所に住む女性、以下同)
駐在所には、月曜から金曜は住み込みで勤務。週末の土日は別の場所にある自宅に帰っていたという。
「昨年の3月ごろ、町内会のチラシに“私事ですが結婚することになりました”と書いていました。8月に結婚したようですが、その後も月曜から金曜は泊まって、土日は駐在所を空けていました。子どもはいなかったみたいです」
一方で、こんな話も聞こえてきた。
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「前任の駐在さんは30年以上ここにいて、雨の日も風が強い日も小学校の前の道路に立って、熱心に交通誘導していました。でも、新しい駐在さんは、一度もそうしている姿を見たことがなかったね。自分では“いつも立ってますよ”と言っていたけど、口だけで調子がよかった。パトロールだって、せいぜい週1回ぐらいだったからね」(近所に住む男性)
沢田容疑者の実家は、横須賀市に隣接する横浜市にあり、母親による女手ひとつで育てられたと話す近所住民もいた。
「結婚相手は“母親が結婚相談所で見つけてきた”って。8月に新婚旅行でモルディブに行って、スキューバダイビングをやってきたとも言っていました」(近所に住む別の男性、以下同)
結婚相手を見た人はいなかった
ただ、駐在所の近所では誰も結婚相手を見た人はいなかった。
「新婚なら一緒に住めばいいのにって。駐在所なら家賃や光熱費はかからないし、2DKほどなら1人じゃ広すぎるだろうし。それに、なんで多額の借金があったのかも不思議でね。あの駐在さんは、いくつか“謎”があったね」
そんな男が、つい数日前まで警察官として何食わぬ顔で町の駐在所に勤務していた。
「駐在さんは、担当する地域の一世帯ずつ訪ねて、住民基本台帳と同じような『巡回連絡カード』を作っています。だから、貯金がありそうな独居老人や、歩行が困難な人や認知症の人がどこに住んでいるかもわかったうえで、“自分が代わりにお金を下ろしてきてあげる”と言って、今回みたいな犯罪が起きたのかと思うと怖いです。被害にあった男性は、この町内会ではないようですが」(近所に住む別の女性)
澤田容疑者の逮捕後、駐在所の後任は決まっておらず、ガラス戸は鍵がかけられ、無人で中はガランとしていた。駐車場には、容疑者が所有していた軽自動車と大型バイクが残されたままに。
町を守るはずの駐在さんだった容疑者が、その信頼を失墜させた罪は重い。