患者団体代表との対話で挙がった課題とは
「薬機法」を知っていますか? 医薬品の品質や安全性等を確保するための法律で、患者さんへの直接的な広告・プロモーションを規制する内容も含まれています。
製薬企業と患者さんとの直接のコミュニケーションに制限があるなか、患者ニーズを理解し、医薬品情報をどのように患者さんに届けるかは製薬業界全体の課題です。
そのような状況下で、中外製薬は「患者中心」を最優先の価値観(コア・バリュー)に掲げ、患者さんの意見を事業全体に反映するスキーム「PHARMONY(ファーモニー)」を構築しました。同社は患者団体と同社社員参加型のイベント「CHUGAI PHARMONY DAY 2024」を2024年10月16日に開催しました。
プログラムのひとつが、2020年から継続している中外製薬代表取締役社長と患者団体代表とのダイアログ(対話)でした。
中外製薬社長と患者団体代表とのダイアログの様子(中外製薬提供)
登壇者は同社代表取締役社長の奥田修さんと、悪性リンパ腫の患者団体である一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン理事長の天野慎介さん、一般社団法人日本筋ジストロフィー協会代表理事の竹田保さんです。
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患者団体の立場から天野さんと竹田さんは「臨床試験などの有益な情報を見つけにくい」「どの薬を使えばよいかわからない、新薬が出たことすら知らない患者もいる」と課題をあげ、積極的な情報提供を要求しました。
これに対し、奥田氏は「少なくとも求められるものに対しては正確な情報提供をするべきだ。医薬品のプロモーションには、さまざまな規制があるため、患者さんに直接意見を聞いてはいけない、直接販促してはいけないという思考がしみついている状態なので、少しずつ考え方を変えることが必要だ。医療全体の中で製薬会社1社ができることはほんの一部なので、産官学に医療従事者を加えたマルチステークホルダーを巻き込みながら、患者団体と協働していきたい。協働はゴールではなく、医療ニーズに応え、創薬や患者さんがよい選択をできる成果につなげていきたい」と意見を述べました。
9年7か月の治療経験のある乳がん再々発患者からのメッセージ
中野季里子さん(中外製薬提供)
プログラムには、乳がん再々発患者である中野季里子さん(認定NPO法人オレンジティ理事)の講演もありました。
9年7か月間に及ぶ治療経験中、中野さんのテーマは「がんと向き合い、生きる姿勢は明るく楽しく笑ってときに涙する」でした。
ただ、治療は計画通りには進まず「体も心もボロボロで副作用による身体症状はつらかった。自分は一般的な治療経過から外れているとも感じた」と赤裸々に気持ちを述べました。
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中野さんは、メンタル的に苦しい状況下でも「病院でのコミュニケーションはしっかりとる」「自分の状況や考え、思いを言葉で伝え、見える化する」をポイントに周囲の方々への感謝の気持ちを大切にしてきたといいます。
中野さんはさまざまな経験からご自身を乳がん治療における少数派と定義し、「再発転移患者や患者遺族がどのような気持ちで治療生活を送っているのか、その声を社会などに届けたい。そして社会は、私たちの小さな声にこそ耳を傾けてほしい」と強調しました。
プログラムの中には、中外製薬と患者団体との協働プロジェクトの発表もありました。患者さんと製薬企業が、一緒に歩むことが求められる時代です。薬の情報を最も必要とするのは患者さんに間違いありません。よりよい形で情報提供が行われるように、PHARMONYという取り組みが、どう展開し、どのような成果につながるのか今後に注目です。(QLife編集部)
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