文房具やオフィス向け家具の製造を手掛けるコクヨは、企業向けに家具やオフィスレイアウトを展示する東京ショールーム(東京都港区)を12月上旬にリニューアルオープンする。自社ブランドの新商品を拡充するほか、企業カルチャー醸成を目的としたコンサルティング事業にも進出していくという。
【画像】コクヨのショールームはこちらから! 「まるで公園の遊具」なオフィス家具、高級ラインのブランド「SAIBI」、国産木材にこだわった「yuimori」、開放的なWeb会議ブースなど(計9枚)
●オフィス需要は旺盛
コクヨのファニチャー事業は中国の市況悪化という向かい風を受けつつも、国内需要は堅調で、今期の通期目標は売上高1618億円(前年比4.7%増)、営業利益227億円(同1.1%)と増収増益を見込む。執行役員の森田耕司氏は、コロナ禍の落ち着きを背景に「企業の多くはオフィスの価値を高めることで、出社の意義も高めたいと考えている」と話す。
●自社オフィスでの取り組みを生かす
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東京ショールームのリニューアルに当たっては、自社オフィスのリノベーションで得た知見を生かした。同社は2019年に、働く時間や場所を選びやすい環境を整えるべく、東京・品川オフィスのリノベーションを開始。2021年に「THE CAMPUS(ザ・キャンパス)」としてオープンした。
新オフィスでは同社の文房具製品を販売するなど、地域に開かれたスペースを用意。またオフィスフロアは、その日の業務内容や気分によって働く場所を決められる仕様とした。こうしたリニューアルの効果もあり、同社では縦割り組織の改善や服装のカジュアル化、社員が新たな取り組みに挑戦しやすくなるといった変化が起きたという。
自社オフィスで得た知見を踏まえ、新たなショールームのキーワードは、企業の「らしさ」をつくり上げていくことだとした。ワークスタイルマーケティング本部長の永井潤氏は、「人材の流動化が進み、組織が多様化する中、『企業カルチャー』を通して共通の価値観を作っていくことがますます重要になっていく」と説明。
顧客に対して、理想とする組織風土や働き方をヒアリングした上で、空間設計や建築を手掛けていく。例えば「もっとオープンな会社にしたい」というニーズがあれば、自然とコミュニケーションを取れるような家具や空間配置を提案するといった形でこれに応えていくという。
ショールーム会場では「公園」をイメージした家具のシリーズを紹介。遊具のような作りのテーブルでは、「自販機で居合わせた人と、ドリンクを飲みながら気軽な立ち話をする」といった用途を想定しているという。
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●コンサルにも進出
コクヨが今後広げようとしているのがサービス領域だ。
同社は10月下旬、企業が持つ「自社ビル」を一棟丸ごとリノベーションするサービスを開始した。こちらの事業も自社オフィスでのリノベーション経験を生かしたもので、既存ビルの建築条件や設備に合わせて、活用できていない屋上エリアを緑化テラスへ変えるといったカスタマイズを提案する。
位置情報や座席予約システムといったICT技術の導入も支援し、空間設計にとどまらないサービス面も充実させる構えだ。
また、2025年春には企業カルチャーの変革を目的としたサービス「TEAMUS(チームアス)」をリリースし、コンサルティング事業にも進出する予定だ。取り入れるのは、社員のストレスチェックやエンゲージメントサーベイ。これによりチームの状態を可視化し、オフィス空間の提案やリーダーへのコーチングを行うことで、現場の意識変容や働き方改革に伴走するという。
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永井氏は「『家具のコクヨ』にとどまらず、企業カルチャーを育むサービスを紹介していきたい」と力を込めた。「オフィス回帰」の波に乗って、コクヨは新事業領域を成長させられるか。
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