※本稿は『HUNTER×HUNTER』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。
『HUNTER×HUNTER』で現在進行している「王位継承編」では、これまでにないほど膨大な数のキャラクターたちが一挙に登場し、それぞれの思惑に基づいて戦いを繰り広げている。そのなかでとくに注目すべきは、ヒソカとクロロ率いる「幻影旅団」との対立だろう。というのも、今のヒソカはあまりに謎めいた立ち位置になっているからだ。
(参考:【写真】これは欲しい……『HUNTER×HUNTER』の人気キャラをモチーフにしたZoffコラボメガネ)
あらためてこれまでの展開を振り返っておくと、両者は今暗黒大陸に向かう移民船「B・W(ブラックホエール)号」のなかに散らばっており、「幻影旅団」メンバーを鬼とした“鬼ごっこ”のような状態となっている。
ヒソカはクロロに敗北した後、“幻影旅団潰し”を宣言し、コルトピとシャルナークを殺害。そして復讐に燃える「幻影旅団」は、同じB・W号に乗り込んでいるはずのヒソカをしらみつぶしに探し回っている……という状況だ。ところがこの一見単純な鬼ごっこには、いくつもの怪しい描写が垣間見える。
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まずB・W号への乗船にあたって、ヒソカの相棒的なポジションだったイルミが「幻影旅団」へと加入している。その理由は、ヒソカから「ヒソカ自身の殺害」を依頼されたためで、イルミいわく“本気”で殺し合いに臨んでいるらしい。
だが、読者のあいだでは「そもそもこのイルミがヒソカの変装ではないか」という説も存在した。根拠となっているのはイルミの一人称で、「王位継承編」以前は基本的に「オレ」と言っていたところが、B・W号乗船後は「ボク」へと変わっている。この一人称は奇しくもヒソカと同じものなので、中身が入れ替わっているのではないか……というわけだ。
また自己紹介のシーンで、右手でカタカナの「ヒ」のような形を作っていることももう1つの根拠。これは作者・冨樫義博が推しているアイドルグループ・日向坂46のポーズなのだが、同時にヒソカの「ヒ」であって、入れ替わりを示唆していると考察されていた。
そのほか単行本の表紙においても、気になる描写があった。第12巻と第36巻の表紙は、両方とも「幻影旅団」のメンバーたちが描かれているのだが、“対”のデザインとなっている。12巻では「ヨークシンシティ編」時点でのメンバーが全員並んでいる一方、36巻では死んだメンバーが消され、その場所に花が描き足されているのだ。そして36巻の方には、なぜか花をもったイルミの姿も描かれていた。
この表紙において「花=死者」を意味しているのはほぼ間違いないので、イルミがすでにヒソカに始末されていることが暗示されているのかもしれない。36巻のカバー袖で、「ネタバレ。あえてね。」という意味深な作者コメントが掲載されていたことも、この説を後押ししている。
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カキンマフィアの前に現れたヒソカは偽物?
だが、この「イルミ偽物説」を打ち消すように、9月4日に発売された第38巻ではヒソカが姿を現してしまった。流れとしては、「幻影旅団」の協力者となったカキンマフィアの捜索網に引っかかった形だ。発見された場所は第3層で、カキンマフィア同士の抗争が収まるまでのあいだ、第1層の娯楽エリアで遊んでいてほしいと頼まれていた。
こうなると構図はとてもシンプルで、最下層から徐々に上層へと移動している「幻影旅団」と、第1層で控えるヒソカという図式になったように見える。しかしこのヒソカに関しても、「別人ではないか」という疑いを差し挟むことは不可能ではない。
「幻影旅団」メンバーのボノレノフは、「戦闘演武曲」という念能力の使い手だが、その技には他人に“変身”できる「変容」(メタモルフォーゼン)というものがあるという。乗船直後にボノレノフはクロロにこの技の使い道を考えてほしいと頼み、協力関係を結んでいたため、何らかの作戦によってヒソカに成りすましている可能性はありえるかもしれない。そして第3層のヒソカが偽物だったとすれば、ヒソカが現在イルミに成りすましているという説との矛盾点もなくなる。
あるいは、逆にイルミは本物で、第3層のヒソカの方が偽物だったという考え方もできるだろう。つまり第3層のヒソカは、イルミが「針」の能力によって擬態した姿ではないかという仮説だ。
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ちなみに36巻収録の第380話では、イルミがカルトと共に第3層にいるところが描かれていた。しかもそこでイルミは、「仕事」(ビジネス)のため第3層に残ることを強く主張している。その後、何らかの策があって“ヒソカのフリをする”という奇策に出た……と考えることもできなくはなさそうだ。
もっとありそうな線としては、単純にイルミとヒソカの敵対がフェイクで、本当はいまだに裏で手を組んでいるという可能性も捨てがたい。ヒソカの真の依頼には「ヒソカに化けて囮になる」という行為が含まれており、それこそがイルミのいう“ビジネス”だったのかもしれない。
変身能力をもつキャラクターが入り乱れているB・W号。互いに裏をかく探り合いは終わる気配がなく、考察しがいのある展開がまだまだ続きそうだ。ヒソカと「幻影旅団」のメンバーによる死闘はどこへ向かっていくのだろうか。
(文=キットゥン希美)
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