【シドニー時事】オーストラリア政府は、豪銀行大手オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)が太平洋島しょ国に持つ支店網を維持するよう働き掛けを強めている。金融分野でこの地域への進出をうかがう中国に対抗するため、事業拠点存続へ公的支援に乗り出した。
ANZは、中国寄りの外交を進めるソロモン諸島やキリバスを含め、九つの島しょ国に支店を構える。だが、この地域は市場規模が小さいため採算性が極めて低く、経営を圧迫している。撤退すれば、中国の金融機関が空白を埋めに進出し、地域で影響力を強めるとの警戒感が広がっている。
今年1月に台湾と断交し、中国と国交を結んだ島しょ国ナウルでは、豪ベンディゴ・アンド・アデレード銀行が来年半ばまでの撤退を表明。これを受け、中国国有の中国銀行が進出に向けた事業調査に着手した。豪政府はナウルで他の豪銀行が営業できるよう調整を進める。
チャーマーズ財務相は11日の講演で、「ANZと大詰めの交渉を行っている」と説明。「フィジーからクック諸島に至るまで9カ国での事業が確実に続くようにする」と強調した。ANZも「政府の支援でサービスを継続できるなら歓迎だ」との姿勢を示した。