不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。
そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる!
第112回のテーマは、日本代表の贅沢な攻撃陣について。FIFAワールドカップ26 アジア最終予選で、3-4-2-1の攻撃的な布陣で首位を独走する日本。タレント豊富な前線はさまざまな選択肢が模索されるなか、現状のベストな選択を福西崇史に解説してもらう。
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■堂安律が右ウイングバックで重宝される理由
――インターナショナルマッチウィークに入り、日本代表はFIFAワールドカップ26 アジア最終予選で11月15日(金)にインドネシア、11月19日(火)に中国とアウェイ2連戦を戦います。
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ここまで首位を独走する日本ですが、システムを3-4-2-1に変更し、攻撃的なタレントをより多く採用する形が奏功し、相手を圧倒してきました。そのなかでウイングバック、シャドーはタレント豊富で組み合わせの選択肢が多く、森保一監督を悩ませているように思いますが、どのように見られていますか?
福西 どの組み合わせでも機能していますが、まだ試行錯誤の段階ではあると思います。対戦相手の戦力次第で色んな組み合わせを試しているように見えますね。とくに右ウイングバックを堂安律にするのか、伊東純也にするのか。ここの選択肢が悩みどころだと思います。
――右ウイングバックはここまで堂安選手が先発していますが、彼が重宝されている理由はどういうところにあるのでしょうか?
福西 サイドに起点を作って、中に絞り込みながら仕事ができるという点が大きいと思います。伊東の場合、スピードで縦に仕掛けることができますが、現状は交代カードの武器として残しておきたいのかなと思います。
堂安は伊東のように縦へ仕掛けることは難しいですが、そのぶん周りとのコンビネーションのなかで時間やスペースを作る役割を担っていますよね。右の堂安が起点を作り、左の三笘が打開する。先発はそういう左肩上がりのバランスで並べていると思います。
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■堂安律との組み合わせは久保建英
――堂安選手との組み合わせで、右シャドーの選択肢はここまで南野拓実選手、久保建英選手の二人となっています。福西さんはどの組み合わせがよりいいと感じていますか?
福西 これは好みだと思いますが、僕は久保がいいと思います。どこに強みを持たせるかですよね。相手のサイドバックに揺さぶりをかける、1トップをサポートさせるなら南野だと思います。
逆に右サイドを打開したいなら久保ですよね。堂安の突破を手助けしたり、久保がサイドに出て堂安が中に入るというコンビネーションを二人は確立できています。だから右サイドを強みにしたいなら久保という選択になると思います。
――伊東選手を出すときには誰がシャドーに入るのがいいんでしょうか?
福西 伊東の場合、南野か鎌田大地でしょうね。個人的には鎌田がいいと思います。それは縦に突破するためのスペースを空ける動きや相手のサイドバックとボランチが厚くケアしてくるときに、引き連れて中へカットインするためのスペースを作る動きなど、伊東が突破するためのスペースメイクに長けていること。さらにライン間でパスを受ける上手さもあるし、伊東が裏へ抜け出したときにいいパスも出せます。そういった意味で鎌田がよりいい選択になると思います。
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■なぜ久保建英はあまり使われないのか
――堂安選手と久保選手の組み合わせを挙げてもらいましたが、現状では久保選手の出場がかなり限定的になっているのは、もったいないなと感じている人も多いと思います。
福西 組み合わせの問題ですよね。今のシステムで久保の適正があるのはシャドーになります。ただ、アジア予選では相手がかなり引いてきて、中盤にはスペースがないので久保はどうしても得意なサイドへ流れていきます。
そうなると中でも仕事ができる堂安と組むしかない。これが伊東だった場合、彼もサイドで仕掛けたいので久保と使いたいエリアが被ってノッキングしてしまうし、守備能力的に久保をウイングバックという選択肢は現状ないですね。
――そのシャドーの序列的にも現状は南野選手や鎌田選手のほうが上ですよね。
福西 守備面や周りとの連携面、左の三笘を生かすというところ、堂安から伊東に交代したときの組み合わせの問題など、色んな点から序列は南野や鎌田のほうが上になっていると思います。ただ、あれだけのクオリティを持った久保の出場が限定的になっているのは非常にもったいないのも確かです。
久保を生かしきれないのは、前回のカタールW杯から続いている日本の課題の一つだと思うし、森保監督も試行錯誤していますよね。
■三笘薫と中村敬斗の共存という新たな武器
――左ウイングバックは三笘選手がファーストチョイスですが、左シャドーは南野と鎌田の二人という選択肢があります。三笘選手との組み合わせでベターなのはどちらでしょうか?
福西 これも好みになってしまいますが、個人的には南野ですね。理由としては三笘がドリブルで仕掛けてくることは相手もわかっているので、なかなか飛び込まずに構えてくることが多くなっています。
そのときに、裏への抜け出しが上手い南野がシャドーに入ることによって相手の陣形にずれが生じたり、判断を迷わせたりすることで三笘の選択肢を増やせるからですね。
――左の選択肢として、これまで同じポジションを争っていた中村敬斗との共存が可能になりました。
福西 これは非常に大きいですね。新たな武器を手に入れたと思います。先ほどの南野や鎌田は三笘を生かすプレーに長けていますが、二人が同時に出ることでどちらもドリブルで仕掛けられるので相手は対応にかなり困ると思います。オーストラリア戦も中村のドリブル突破から同点弾が生まれました。後半の疲れている時間帯にあの突破はかなり効果的でしたね。
今後、W杯本番を戦うことを想定すると、中村の成長によって攻撃的な武器が増えたことはとても大きいですね。中村を先発で使って、三笘をジョーカーとしても使えるし、二人を同時起用でより攻撃的な形な選択肢もできました。
――今予選を通じて、攻撃の選択肢、カードの幅がより広がりましたね。
福西 本来は攻撃的な形だけではなく、強豪が相手になったときの形も試したいと思いますが、アジアではそれが難しいですよね。インドネシア戦、中国戦も日本の攻撃陣がどんな組み合わせ、コンビネーションで相手を圧倒するか注目してもらいたいと思います。
構成/篠 幸彦 撮影/鈴木大喜