「爆音で音楽聴き続け、耳鳴りが止まない人生に」 若い世代に増加するヘッドホン難聴…気づくのに10年、なぜ? 医師に予防法を聞いた

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2024年11月14日 07:00  まいどなニュース

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いつでも、どこでも音楽を…イヤホン・ヘッドホンを使用する時間は? 音量大丈夫? 写真はイメージです(Akarawut/stock.adobe.com)

「爆音で音楽を聴き続けた結果ヘッドホン難聴になり1秒たりとも耳鳴りが止まない人生になったから気をつけて」(なそさん@NyasoNostalgic)

【調査結果】イヤホンの使用時間、どれぐらい増えている?

イヤホン使用時間が約3人に1人の割合で長時間化(※注1)する傾向のなか、「あなたにもヘッドホン難聴のリスクあり!」と、「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」が注意喚起しています。今回、ヘッドホンで爆音で音楽を聴き続け、難聴を患う「なそ」さんと、医師に症状と予防方法を取材しました。

「どこへ行くにもイヤホンを付けて…」

現在、40歳のなそさんの耳に異変が起こったのは6、7年前のこと。「家にいるとキーンという高音の大きな耳鳴りがしている事に気づきました。夜、寝ようと思っても煩わしく眠れない程の耳鳴りで、翌日病院に行くと4000Hz帯(高音)の音が聞こえなくなっている、おそらく音楽を大音量で聴き続けた事によるヘッドホン難聴であろうと診断されました」。

音楽好きだったなそさん。「高校生くらいからどこへ行くにもイヤホンを付けて音楽を爆音で聴いていました」と難聴になる前はかなり耳を酷使していたようです。

その後も症状がなくなることなく、耳鳴りは続いています。「静かな場所でも無音になる事はありません。煩わしい音が24時間頭の中で響き続け、多分一生止まる事が無いと思う」と不快感をやり過ごさざるを得ない日々。

「聴覚は二度と元には戻らず後悔しても遅い。好きな音楽を聴けなくなるくらいなら今すぐ音量を下げろ。音楽が好きであればあるほど辛いぞ! 本当に辛いぞ」と、自身の経験をもとに、そして、音楽好きとしても強く訴えます。

なそさんは難聴の症状と戦いつつ、テーブルマジシャンとしてXで依頼を募集するなど、武者修行中です。

ヘッドホンを使用する人が増えて…

ヘッドホン・イヤホンの長時間、大音量の使用により、耳が聞こえにくくなる「ヘッドホン難聴」をリーフレットを通じて注意喚起しているのは、医療・福祉の専門家らによる「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」。

耳、鼻、のど、頭頸部(脳、脊髄、眼球を除く顔から首まで)を専門とする同学会は、厚生労働省のサイト「e-健康づくりネット」内にて、「音量を下げて、少なくても1時間に1回、10分程度は耳を休めよう!」と予防を呼びかけています。背景には世界中でヘッドホンなどによって若者が難聴の危険にさらされていること、日本でもこの10年で10〜40代の聴力の低下が報告されていることをあげています。

今回、同学会に所属する日本医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の松延准教授にヘッドホン難聴になる経緯などを聞きました。

ヘッドホン難聴に、気づかない人も?

松延准教授はヘッドホン難聴について、「大きな音によって耳の奥の内耳にある、音を感じとる有毛細胞が失われ、慢性の音響性聴器障害による騒音性難聴です。昔は工場や工事現場で耳栓をせずに働き、いつの間にか聞こえ具合が悪くなることがあったのですが、それと同じです」と説明。

仕事の場合は終業時刻になれば騒音から離れられますが、音楽だと楽しくて聴きすぎてしまうのが問題で、「そのまま寝ちゃうと最悪です」とのこと。

特に若者のヘッドホン難聴が現在問題視されているのは、「ヘッドホンやイヤホンを小学生くらいから使う世代が出てきたのは10年くらい前です。そういった世代が成長し、10代、20代となり、周りよりちょっと聞こえが悪いんじゃないかと、または学校や職場の検診で引っかかって、受診する時代になってきたからだと思います」。

ヘッドホンなどを使い始めてから、難聴に気づくのに“10年”もかかることがあるのは、「ヘッドホン・イヤホン難聴は少しずつ、ゆっくり進むので、病院で受診することもなく、気づかない人が多いと言われています」。

では、どういったときにヘッドホン難聴だと気づくのでしょうか。「聞こえづらさ、耳鳴り、耳が詰まったような感じ、そういったことががきっかけになると思います」。

病院では、「イヤホンで大音量で聞き続けていたか」などの問診を受け、他に耳に負担をかける要因がなければ、ヘッドホンやイヤホンが原因だと推定、ヘッドホン難聴だと診断されると言います。

個人差はあれど、音の大きさ、時間の長さにより、どの年代でもなりえて、「大切なのは予防と対策」とのことです。

内耳にある音を感じ取る有毛細胞は一度失われると再生されず、ヘッドホン難聴を治療することはできません。できるのは、内耳に負担を掛け過ぎないように指導することのみ。

「難聴の程度は聞く音の大きさ、聞く時間、個人差で決まります。それを減らすしかありません。そうするには、音を小さくする、聞く時間を少なくする。時々耳を休めるといったことが大事です」。若者が難聴の危機にあると注意喚起されていますが、「どれくらいの若者が難聴になっているのか、正確な数字はありません」。

音量はどれぐらいを意識すれば?

音量については、WHOが80デシベルで週40時間の使用を超えると難聴のリスクが高まるとしていることを踏まえて、「周りにいる人たちの会話が聞こえるくらいの音にしましょう。周囲の人が大声で呼ばないと聞こえないくらいだと音が大きすぎます。周りの人たちの会話ってだいたい5、60デシベルくらいなので、それが聞こえる程度だと70デシベルくらい」。

また、飛行機や地下鉄の中など騒音がする場所では、知らずにボリュームを90デシベルほど上げてしまうため、ヘッドホンなどを使わない方がいいとのこと。「どうしても使いたいんだったら、ノイズキャンセリングのイヤホンを使った方がマシ。性能次第では騒音を軽減してくれるので、ノイズキャンセルではない時ほどはボリュームを上げないはずです」。

「予防が第一。なってしまったら治りません」と念を押す松延准教授。周囲の人の声が聞こえる程度の音量で使う、騒音がする環境ではノイズキャンセル機能が搭載されているヘッドホンやイヤホンを使用するなど、音楽好きであるほど、普段から意識したいですよね。

※注1
新型コロナ以降、イヤホンの使用時間が増えたという人は31.2%、変わらないは64.1%という結果に。また、使用時間は1時間〜3時間未満が一番多く29.2%、次いで30分〜1時間未満が29%。なかには12時間以上という人も1.1%だがいた。
『NTTソノリティ株式会社「イヤホン・ヘッドホンの長時間使用と“イヤホン蒸れ”に関する調査」』
調査方法:インターネット
調査地域:全国
調査期間:2023年6月26日(月)〜6月29日(木)
調査対象:15歳以上の全国の男女 2,165名
調査主体:NTTソノリティ株式会社

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・谷町 邦子)

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  • ヘッドホンや大音量とは関係なく、帯状疱疹になってから左耳が聞こえないわ。退院直後に電話かけようと思って、いつも通り左耳に受話器あてたら何も聞こえなくて気づいた。
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