夏に90万枚も売れた「アセドロン」、今度は冬の“汗冷え”をドロン! グンゼだからできることがある

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2024年11月14日 09:21  ITmedia ビジネスオンライン

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暖かさと通気性を両立した「ファイヤーアセドロン」

 汗による不快感を解消するグンゼの「アセドロン」シリーズが、発売から7カ月で累計90万枚を販売し、好調を維持している。年内に100万枚に到達する見込みだ。


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 10月には、汗対策に加えて防寒機能を追加した「ファイヤーアセドロン」を発売した。シリーズに冬用アイテムを加え、年間を通じて汗による不快感の解消を目指す。


●冬は「汗冷え」に悩む人が多数


 冬用インナーの市場では、防寒機能が重視されることが一般的だ。しかし、グンゼが実施した調査によると、冬用インナーの着用率は高い一方、満足度は半数程度という結果が出た。冬にも汗にまつわる悩みが多く、特に「汗冷え」に困っている声が多く寄せられた。


 秋から冬にかけての寒暖差が激しい時期こそ「汗冷え」の悩みが顕著となるが、従来の冬用インナーは「防寒」に特化している。そのため、着用すれば暖かいものの、蒸れると体が冷えてしまうという課題があった。


 「暖房の効いた場所では暑くて汗をかき、外に出た瞬間に寒くなる。こうした声が圧倒的に多かった」と商品企画担当の藤本和彦氏は説明する。


 そこで、グンゼは防寒機能を持たせつつ、汗による蒸れをケアする機能を持ったファイヤーアセドロンの開発に着手した。


 しかし、「体温を逃がさないようにしつつ、熱くなりすぎないようにする必要がある」と藤本氏が語るように、開発には相反する課題があった。この課題に対し、グンゼは編み方の工夫で解決を図った。


●汗冷え解消への技術的アプローチ


 アセドロンは、吸湿性の高いレーヨンとドライ感の強いポリエステルを組み合わせた独自の糸構造が特徴だ。糸の中心部(芯部)にレーヨンを、外側を覆う部分(鞘部)にポリエステルを配置。鞘部に設けた隙間が汗の通り道となり、素早い拡散を可能にする。


 この基本構造を維持しながら、ファイヤーアセドロンでは糸の配合を変更。芯部のレーヨンに吸湿発熱機能を持たせつつ、衣服内の余分な湿気を素早く放出する仕組みを採用した。これにより、暖かさを保ちながら、汗によるベタつきを防ぎ、汗冷えを解消することができた


 一般的な吸湿発熱インナーは、瞬間的なエネルギーで湿気を熱に変える仕組みであり、その熱は徐々に外に逃げ、結果的に体が冷えてしまう。一方で、ファイヤーアセドロンは、熱を逃がさず、かつ湿気だけを効果的に放出する機能を追加した。


 グンゼは、アセドロンシリーズで年間を通じた汗の不快感解消を目指している。ファイヤーアセドロンは、気温や使用シーンに応じて2つの厚さを展開する。冬場は気温変化が大きいため、商品構成を中厚と重厚の2つのタイプに分け、汗対策機能を維持しつつ、防寒性は着る環境によって選べるようにした。


 商品ラインアップは、長袖インナーを中心に、パジャマやソックスまで幅広く展開。見える部分のデザインにもこだわり、1枚でアウターとしても着られる仕様にした。「防寒インナーとは異なる、新しい価値を提供したかった」と藤本氏は語る。


●春夏の成功を生かしたブランド戦略


 10月の発売以来、まだ本格的な寒さには至っていないものの、市場からの反応が出始めている。「レディースインナーの動きが早く、アセドロンブランドを知る消費者からの期待も大きい」とマーケティングを担当する日和崇氏は手応えを語る。


 マーケティング面でも新たなアプローチを採用。従来の「吸水速乾」「吸湿発熱」といった業界用語ではなく、「ベタつき」や「汗冷え」など、実感を伴う言葉を打ち出すことで直感的な理解につなげたほか、広告展開では春夏の「肌着革命」から、秋冬は「どういう時に汗をかくのか」をより実感できる表現にした。


 ロゴデザインにも統一感を持たせた。「春夏で話題を呼んだブランド資産を生かし、既にアセドロンを知る方にファイヤーアセドロンも認知してもらいたかった」(日和氏)


 購入者からの反響も上々のようだ。極度の冷え性に悩む人は、寒い時期に着込むことで汗をかきやすくなり、着替えを余儀なくされていたが、ファイヤーアセドロンを使用してからは着替えの回数が減ったという。


 そのほか、開発メンバーが発熱時に着用して快適だった体験も、新たな使用シーンの可能性を示している。


●今後の展望と課題


 アセドロンシリーズの展開は、グンゼの商品開発のあり方そのものも変えつつある。「これまではプロダクトやエビデンス重視で、数値的な部分を追求する傾向にあった。アセドロンを展開してからは、ユーザーからの声にどう応えるかという視点が加わった」と藤本氏は説明する。


 一方で、ここ数年目立つ「暑さの長期化」は、ファイヤーアセドロンに限らず秋冬商品の位置付けに影響を与えている。「冬は必ず来るが、長い夏への対応は課題。商品の打ち出し方や、シーズンをどう考えるかなど、工夫が必要」と藤本氏は語る。


 近年のアパレル業界は、機能性の訴求を重視する傾向にある中、同社は肌着本来の役割に立ち返った。その結果が「汗」という年間を通して発生する悩みへの着目だった。「インナーウェアメーカーとして、肌に一番近い商品をつくる私たちだからこそできることがある」と日和氏は語る。


 春夏商品の成功を足がかりに、冬市場でも独自のポジションを確立しようとするグンゼ。来年も商品の進化は続き、市場の声を生かしながら、春夏の新商品開発も進めている。年内100万枚到達を視野に入れるアセドロンは、冬のインナーウェア市場に「防汗」という新たな価値を提案できるか。


(カワブチカズキ)



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