これからはいつでも一緒 持ち運べる最高峰キーボード「REALFORCE RC1」は誰に適した製品か?

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2024年11月14日 17:11  ITmedia PC USER

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REALFORCE史上初の70%キーボード「REALFORCE RC1」

 国産メーカーのキーボード最高峰と言えば、東プレの「REALFORCE」かPFUの「HHKB」と考える人は多い。HHKBは1996年の初代モデル以来、さまざまな製品が登場しているが、コンパクトな60%キーボードレイアウトという点は一貫して変わっていない。


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 一方、REALFORCEは2001年の第1世代発売以降、一部のテンキーレスモデルを除いてトラディショナルなフルキーボードレイアウトを踏襲してきた。よって持ち運びの最高峰はHHKB、据え置きの場合はREALFORCE──と住み分けられていたともいえるだろう。


 だが、ここに来てREALFORCE史上初となる70%レイアウトを採用した新製品「REALFORCE RC1」が10月に登場した。この新しい選択肢は市場に受け入れられる製品に仕上がっているのか、見ていくことにしよう。


●70%キーボードの魅力


 2010年代後半に省スペースキーボードが注目されるきっかけとなったのは、ゲームとの相性の良さだった。コンパクトなキーボードはマウスまでの移動距離も小さくて済み、狭いテーブルでもマウスを動かす領域を広く確保できる。


 キーボードの小型化はキーそのものを小さくするのではなく、主にゲーム操作であまり使われないキーを小さくしたり、削減したりすることで実現している。そのため、ゲームの操作性に影響しないことが特徴だ。


 その後、リモートワークの普及によって一般ユーザーにも省スペースなデバイスへのニーズが高まってきた。


 「持ち歩きはしないまでも、自宅の限られた作業スペースでマウスとキーボードが快適に利用できる」というメリットが重要視されるようになったということだ。現在、一般的な企業が貸与するビジネスPCはキーボードを搭載しているノートPCもしくはタブレットだ。


 そこにわざわざ「外付けのキーボードを付けよう」と考えるユーザーは本体内蔵/付属のキーボードでは得られないレベルのフィーリング、そして取り回しの容易さを求めていることは間違いない。


 その結果、ゲーミングキーボードから始まった高品質省スペースキーボードが一般キーボードでも多く見られるようになってきたと考えられる。


 省スペースキーボードではキー数によって60%キーボード、70%キーボードなどと表現されることが多い。以下の表はキーボードサイズごとの一般的な特徴をまとめたものだ。


 ただし、ANSIやJISなどの規格が定められているフルサイズキーボードと異なり、省スペースキーボードはメーカー独自の設計となっているため、キーレイアウトはメーカーや製品によって違いがある。あくまで一般的な傾向として見てほしい。


 省略されているキーはファンクションキー(Fnキー)との同時押しで代用することが一般的だ。そのため、キー数が少なくなればなるほど、Fnキーと併用するキーが増えることになる。


 省スペースキーボードの購入を検討する人にとって、自分が多用するキーが削除されていないかどうか、あるいはFnキーとの同時押しに不便はないかといったものが選択基準の1つとなるだろう。


 そういった観点では、まずファンクションキーがなくなり、6列から5列に変わる65%と70%の違いが大きい。そしてもう1つ、65%キーボードはEnterキーやバックスペースのような使用頻度の高いキーが右端に配置されておらず、右端にはナビゲーションキーの列が1列追加されていることも見過ごせない。これは65%キーボードだけに見られる特徴で、慣れない人は全く慣れることができないようだ(筆者は慣れなかった)。


 そこで、筆者が一般用途において最適と考える省スペースキーボードが70%キーボードとなる。


 ファンクションキーや矢印キーを残し、テンキーレスキーボードと同等の操作性を保ちながらコンパクトさも実現した6列配列の70%キーボードは、初めて省スペースキーボードを選ぶ人や、ノートPCの内蔵キーボードからグレードアップを図る人に特におすすめだ。そして、その70%キーボードの最高峰と考えられる製品の1つが、今回取り上げるREALFORCE RC1となる。


●REALFORCE RC1の実機をチェック!


 REALFORCE RC1(以下、RC1)は、REALFORCE史上初の70%キーボードであり、英語配列/日本語配列、それぞれキー荷重30g/45gの計4モデルで展開されている。


 カラーバリエーションは本体色がブラックのみで、キーキャップ色はダークグレー/ライトグレーが用意されている。キーキャップはPBT素材で、摩擦に強い昇華印刷だ。コンパクト化にあたり、なるべく線を少なくしたスタイリッシュなデザインを意識したとのことで、ケースやスタンドの角、ラバーフィートなどは角をなくした丸みのあるデザインになっている。


 キー数は英語配列が78個、日本語配列が82個だ。サイズは約29.5(幅)×130(奥行き)×39(高さ)mm、重さは約0.6kgとなっている。A4ノートPCとほぼ同じ幅なので、ノートPCにキーボードを載せる、いわゆる“尊師スタイル”での利用も可能だろう。ラバーフィートは幅が狭いものだが、ポジションによってはキーボードブリッジなどを併用する必要がある。


 バッテリーには720mAhのリチウムイオンバッテリーを採用し、約1カ月使えるという。他のモデルがアルカリ単三形乾電池2本で約3カ月使えることを考慮するとかなり控えめな数値だが、これは軽量化と小型化を考慮してのことだろう。


 接続方式はUSBによる有線と4台までのペアリングが可能なBluetooth 5.0のハイブリッドなので、充電切れになってもUSBケーブルがあれば使い続けられる。


 キーはNキーロールオーバーに対応している。これは「全てのキーを同時に押しても、全てのキーが押されていることが認識できる」という全キー同時押し対応と、「全てのキーを次々に(離さずに)押していった場合にも、正しい順序で認識できる」という2つの機能を指している。


 一般的なUSB HIDクラスキーボードではプロトコル上、一般キーのデータサイズが6バイトしかないため、同時押下キーを6つまでしか認識できず、7つ目のキーを押しても無視されてしまう(修飾キー除く)。


 7つ目以降のキー押下を認識できるようにしたものがNキーロールオーバー対応となるが、実装によっては既に押されているキーの1つを離したことにして、7つ目のキーが押下されたことにするものもある。


 この場合、7つ目のキーは認識できるものの、7つのキーが押下されていることは認識できない。REALFORCEの場合は7つ目以降のキーが押下されたことも認識できる上に、7つ以上同時に押下されていることも認識できる(ただし、Bluetooth接続時には制限がある)。


●「REALFORCE R3」よりパワーアップしたカスタマイズ性


 APCとキーマップ設定は、「REALFORCE R3」と同様に純正のユーティリティーアプリ「REALFORCE CONNECT」(Windows/macOS対応)から行えるが、2つの機能追加が施されている。


 1つはAPC設定の細かさだ。APCはアクチュエーションポイントチェンジャーの略で、各キースイッチがオンとして認識される押下距離を変更できるというもの。


 R3では0.8mm/1.5mm/2.2mm/3.0mmの4段階での設定が可能だが、RC1では0.8mmから3.0mmまで0.1mm単位で設定できるようになった。アクチュエーションポイントをあらかじめ最大16種類設定しておき、それを各キーに割り当てていくという2段階で行うため、正確には0.8mmから3.0mmの23段階で設定できるわけではないが、実用上で困ることはないだろう。


 R3ではキー全体に対するAPC設定として全て(全キー同じ設定)、個別1、個別2の3つを保存しておき、それを切り替えて利用することができた。RC1では全て、個別の区別はなくなり、最大4つを保存/切り替えることができる。初期状態ではFn+Q/W/E/RがAPC切り替えキーとなっている。


 そしてもう1つの違いがキーマップ数が2つから4つに増えたことだ。マップ切り替えは初期状態で「Fn+F1〜F4」に割り当てられている。キーマップ、Bluetooth接続先、APC設定が全て4つにそろえられたので、感覚的に切り替えキーが分かりやすくなった。


 設定内容をオンボードメモリに保存できることは以前のモデルと同様だが、持ち運びがしやすいRC1では、その恩恵を受けるケースも多くなる。キーマップとAPCの設定数増加に合わせてさまざまなシチュエーションに対応しやすくなったといえるだろう。


●R3とまったく変わらないフィーリングを実現


 RC1最大の特徴は「REALFORCE R3と全く変わらない機能とフィーリング」──これに尽きる。キースイッチには当然ながら東プレ伝統となる静電容量無接点方式の静音タイプを採用している。


 キーピッチ19mm、キーストローク4.0mm、ステップスカルプチャーも同様で、タイピングのフィーリングはソフトタクタイルだ。REALFORCE特有の“スコスコ感”も変わらない。軽量ではあるが、剛性を含めて安定性もしっかり確保されており、この点においてもR3と全く同じフィーリングで利用できる。


 違いがあるのはキー数だ。テンキーレスモデル(英語配列)から省略されたキーは以下の通りだ。


・一部の編集キー(Insert、Print Screen、Scroll Lock、Pause/Break)


・一部のナビゲーションキー(Home、End、Page Up、Page Down)


・右Windowsキー


 テンキーレスモデルの左端ブロックから、Deleteキーを除く編集キーと6パックキーを削除した。さらにカーソルキーをフルキー部分に押し込めるために右Windowsキーを削除している。その他、右Alt、Shiftキーの小型化、Fnキーの配置変更も見られる。


 筆者は普段、REALFORCE R3の英語配列テンキー付きモデルを愛用している。本稿執筆のため、REALFORCE RC1の英語配列/30g荷重(C1HK13)をしばらく使用していたところ、テンキー付きモデルよりもカーソル移動キーがかなりしっくりとはまる印象だった。


 筆者の手癖だと、カーソル移動時には右手をホームポジションから離し、人差し指を左キー、中指を上キー、薬指を右キーの上に移動させるのだが、それらのキーがキーボードの右下端に位置しているためポジションが取りやすい。


 だが、カーソル移動キーと同様に多用するHome/Endは、右キーの上にあるFnキーと左キー/右キーの同時押しのためにかなり使いづらかった。もちろん、REALFORCEはFnキーを含めた全キーのマッピングが変更可能なので、試行錯誤しながらカスタマイズを行ってみた。小さすぎて使いづらい右ShiftをHomeに、FnキーをEndに変更、Fnキー自身はいいところにある使わないキーの代表であるCapsLockに設定するとかなり使いやすくなった。


 ここで設定したキーが特殊キーばかりであることに注目してほしい。Shiftキーはいわゆる修飾キーと呼ばれるもので、HIDクラスキーボードではAltやCtrlと同様、同時押下を前提とした特別な扱いになっている。


 また、Caps Lockはトグルキーであり、こちらも状態を保持する特殊なキーとなっている。さらにFnキーはOSが関知しない、ハードウェアレベルのキーだ。そのため、キーマップ変更をうたうキーボードでもこれらのキー、特にFnキーの変更をサポートしていないものも多い。だが、キー数削減で影響を受けやすいのもこのあたりだ。


 コンパクトキーボードにはこれらのキーも含めたフルキーリマップ機能が重要だ。少なくとも「キーの配置に慣れることができなかった」という悲劇を回避できる確率は格段に上がるだろう。


●持ち運べるREALFORCEが奪うパイはどこにあるのか


 REALFORCE RC1のコンセプトは「極上の打ち心地をどこにでも」──その言葉通り、RC1はREALFORCEの先行モデルをそのままコンパクトにした製品だ。


 省スペースにするためにスペックダウンしたものはバッテリー駆動時間だけ、しかもそれでも1カ月は利用できる省電力設計になっている。


 スイッチも含めて東プレ 相模原事業所で製造されるため、設計レベルだけでなく、製造レベルでの品質も非常に高い。キーボードには珍しい生粋の日本製であり、ふるさと納税の返礼品となることも予定されている。


 筆者は最初にこのRC1の話を聞いたとき、「これはHHKBの市場に手をかけることになるのではないか」と思った。だが、数週間に渡って使い込んでみた結果としては、HHKBと競合するのではなく、REALFORCEの裾野を広げる製品として確固たる礎を築くことができる、REALFORCEの正統進化であると考えるようになった。


 つまり、今までサイズ感が合わずにREALFORCEを見送っていた人や、自宅ではREALFORCEを使っている人が持ち運び用の2台目として購入するケースが多いのではないだろうか。そして、まさしく、そのような人のニーズに応えてくれる逸品に仕上がっている。


 カラーバリエーションこそ少ないものの、最初から英語配列/日本語配列が同時発売されること、そして30g/45gのキー荷重バリエーションが用意されていることからも、東プレの本気度が伝わってくる。


 オプションとしてダークブルー/ダークモーブ/ライラックの3色のカラーキーキャップ、2mm/3mm厚のスペーサーの販売も予定されているので、今後のREALFORCEの重要な一画を占めるモデルとなることは間違いなさそうだ。



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