もちろん、復帰を予定していながら途中で気が変わることもあるだろう。
育休中に「予定が変わった」ケース
「上の子が産まれた時は出産から8カ月で復帰しました。その後、下の子が産まれ、もちろん復帰するつもりでいたんです。ただ保育園が決まらない。ついに2年近くが経過してしまい、そんな時夫の海外駐在が急に決まって」悩みに悩んだ末、フユミさん(43歳)は夫と共に海外で暮らすことを選んだ。6年前のことだ。当時、2人の子は5歳と1歳10カ月だった。
「上の子と同じ保育園に下の子が入っていれば、もしかしたら夫の単身赴任もあったかもしれませんが、保育園には入れない、助けてくれる親族もいないとなれば、私一人で働きながら子育てはできないなと。海外暮らしも大変だろうけど、家族一緒にいたいという夫の気持ちも分かる。
結局、一緒に行くと決めて会社に話したところ、そういう事情ならしかたない、でも帰国したらパートでもいいからまた働いてねと言われ、それはうれしかったですね」
事情はどうあれ「同僚の言葉に傷ついた」
同僚たちにも話をしたのだが、仲のよかった同期から言われた言葉にフユミさんは傷ついた。
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単身赴任も、国内ならまだしも海外だとなかなか会えないし、子どものことを考えてもお父さんには一緒にいてもらいたい。
誤解しないでほしいと彼女には伝えたけど、どうも彼女は『もともと退職するつもりだったくせに』とうわさを振りまいたみたいです」
夫の海外勤務は5年におよび、昨年、フユミさん一家は帰国し、日常生活もようやく落ち着いたところだ。
「当時の上司に帰国したことを伝えると、『すぐにでもパートでいいから来てほしい』と言われたんですが、まだ落ち着かないのでと。来春、下の子が小学校に上がるので、それから少し考えてみようかなと思っています」
ただ、あの時、彼女を批判した同期がまだ在籍していると聞き、気持ちが少し萎えている。理解してくれる人もいれば、そうやって誤解して悪口を振りまく人もいる。それが社会だと分かっていながら、フユミさんは少し気乗りがしない自分を感じている。
育休と有休を「使い切って退職」したケース
同僚女性が育休後に辞めたのをそばで見ていた経験があるというサエコさん(40歳)。
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その1年後、カヨさんは出産、育休に入った。そして育休と有休をめいっぱい使ったあと退職したのだという。
「彼女、妊娠していない段階から、育休を取ってから辞めてもいいのかなとあちこちでつぶやいていたようで、辞めた時は計画的だったんじゃないかとうわさされていました。でも結局、復帰する意志はあったものの、生後1年たってお子さんに病気が見つかったんですって。
あとから本人に連絡をとったら結構な難病で、とても仕事は続けられなかったようです。でも彼女は、会社であとあとまで悪く言われていたから、下手なことを言うと疑われる可能性があるんだなと学びましたね」
悪用はダメ、妙な疑念を持つ人もいる
サエコさんは第二子出産後も育休をめいっぱいとった。今、焦って早く復帰するより子どもが保育園に少しでも慣れてからと、じっくり構えることに決めたのだという。「産休も育休も、そして育休手当も、労働者の権利だから、きちんと申請してきちんともらうべきだし、使える制度は使った方がいい。産後はこっちも疲れているから、無理だってできませんし。だけど、それを悪用してはいけない。当然のことですよね。
悪用する人なんて、ほとんどいないと思うけど、なかには妙な疑念を持つ人もいなくはないから」
育休をとった時、いいわね、独身は休めないからねと先輩女性に嫌みを言われたとサエコさんは言う。
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たくましく生き抜いていかなければねと、サエコさんはウインクして見せた。
<参考>
・「育児休業給付の内容と支給申請手続」(厚生労働省)
・「育児休業給付金 申請前に、確認してますか?」(ハローワーク磐田)
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))