フリーランスの取引に関する法律「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(以下フリーランス新法)が11月1日に施行されます。
昨今、副業人材の増加に伴い、企業や行政がフリーランスに仕事を依頼することも珍しくなくなりました。新しい法律でフリーランスと企業間の取引はどう変わるのか。下請法とフリーランス新法の違いは何か。企業が留意すべき点などを解説します。
●フリーランス新法を分かりやすく
労働法の世界において、フリーランスは労働者として定義されていません。そのため、労働基準法の適用外となってしまい、権利が十分に保護されていませんでした。
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不利な条件で契約をさせられたり不当な扱いをされたりしても、クライアント企業から仕事を請けたいがために泣き寝入りする人もいました。厚生労働省の調査では、フリーランスの中で過去3年間に約4割の人が報酬の不払いや依頼のキャンセルなど依頼者から納得ができない行為を受けたという実態があります(参照:PDF)。
こうした問題点を解決するため、フリーランス新法では、次のような内容が定められました(参照:PDF)。
また罰則も定められています。発注事業者が法律に違反した場合、行政による調査を受けることになり、指導や勧告が行われます。勧告に従わない場合には命令・企業名の公表、さらに命令に従わない場合は50万円以下の罰金に処されることもあります。
●下請法があるのに、なぜ必要なのか?
今までも企業側が業者に対して発注する場合、不当な扱いを規制するための下請法という法律はありました。下請法では、発注元企業が下請事業者に発注した商品やサービスについて、代金の支払遅延や代金の減額、返品などといった下請事業者に不利益を与える行為を禁止する旨を定められている他、罰則も設けられています。
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しかし、下請法は法人を対象としていたため、保護の対象からフリーランスが抜け落ちていました。また規制対象となる発注側も資本金が1000万円以上の企業に限定され、資本金1000万円以下の企業には適用されなかったのです。デザイナーやライターに仕事を発注する編集プロダクションなどは、資本金1000万円以下の企業も多いでしょう。
フリーランス新法は、このような資本金要件の制限なく、フリーランスに対して取引を発注する企業や事務所などを規制するものです。企業に勤める傍ら、副業として企業から仕事を受託している人も対象となります。
●フリーランス新法が設定された背景は?
以前はフリーランスというと、ソフトウェア開発者やデザイナー、ライターなど特定のスキルを持った人が中心でした。近年、働き方の多様化に伴い、副業などでフリーランスとして働く人もいるため、その数は増えています。
内閣官房日本経済再生総合事務局が2020年に実施した調査では、462万人がフリーランスとして働いていると試算されています(参照:PDF)。その内訳もデータ入力やコールセンターのような事務関連、飲食店サービスなどの生活関連サービス、配送や建設などの現場作業関連など多岐に渡っており、専門・技能職とは限らないようです。
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それに伴い、企業に雇用されていた社員が担っていた業務を外部のフリーランスへ委託する企業も増えています。理由は2つあります。1つは、社会保険料などを支払わなくてよいのでコストを削減できる点です。労働者の外注といえば、派遣社員もありますが、派遣社員を受け入れる場合と比較しても派遣会社に支払うマージン料を払わなくて済むので費用を削減できます。
2つ目の理由は、定年後もフリーランスとして働き続ける人が増えているからです。高齢者雇用安定法の改正により、企業には70歳までの就業確保が努力義務として課せられています。とはいえ、70歳まで定年を延長する企業は少数で、65歳以降はフリーランスとして業務委託契約で依頼する企業が多いという実情があります。
●企業が留意すべき点は
フリーランスを活用している企業にとって、今回の法改正は重大な転換点です。特に総務や経理など契約や支払いに関する業務に携わっている人は、次の3点について確認しましょう。
・フリーランスとして働いている人の洗い出し
フリーランスというと、自宅で好きな時間帯に仕事をしている人をイメージする人が多いかと思われますが、会社に出勤している人もいます。昨今では、同じ職場内でも正社員以外に嘱託(アルバイト)、派遣社員、フリーランス、学生インターンなどさまざまな属性の人が働いているケースがあります。それぞれの立場によって適用される法律や扱いは異なります。嘱託だと考えていたらフリーランスだったということもあるかもしれません。
・契約書の確認
11月1日以降、新たにフリーランスと業務委託契約を結ぶ際、使用する契約書や発注書はフリーランス新法で義務付けられた内容を織り込んだものとしなければなりません。なお11月1日以前の契約内容については、遡(さかのぼ)って新しい法律が適用されることはないものの、現在使用しているものを見直して、不備があれば修正を行うのが確実です。
・支払日の管理
フリーランス新法では、発注事業者が成果物を受け取ってから60日以内に支払いを行うよう義務付けられています。支払い期日を超えないよう、社内で管理を徹底する必要があります。現状で支払い期日管理が適切に行われていなければ、まずは支払うべき相手と金額、期日を表にまとめてチェックできるようにしましょう。
フリーランス新法に関する情報は、厚生労働省や公正取引委員会などのWebページに掲載されています。厚生労働省が公開している動画で概要を把握した上で、公正取引委員会の「事業者間取引適正化等法に関するQ&A」を読むのが効率的です。
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