株式会社ベガコーポレーションは11月11日、理想のお部屋をコーディネートできる無料アプリ「おくROOM」をiOSでリリースしました。
引っ越しや模様替えなどに便利なこのアプリですが、その一方で「創作にも使えるのではないか!?」という考えがふと頭をよぎります。趣味と仕事の両方で小説執筆経験のある筆者が、実際にアプリをインストールしてその可能性を確かめてみました。
「おくROOM」では、同社が運営する家具・インテリアブランド「LOWYA」の商品を3Dモデル化。スマホ内に表示されるヴァーチャル空間上に配置し、部屋を自由にコーディネートすることができるアプリです。
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「あの家具気になるけど、実際に部屋に置いたらどうなるんだろう?」という、引っ越しや模様替えの際につきまとう悩みを解決するのに非常に便利。
本来であればそのように実生活に沿って使うべきところですが、公式サイトやリリースのイメージ画像を眺めていた筆者はふと「これ、創作活動にも使えるんじゃないか?」と思いました。
筆者は活動歴10年ほどの小説書きです。ここ1年ほどは商業執筆の経験もあります。
そんな筆者が日ごろ小説を執筆するにあたって地味に難しいと感じ、気を抜くと雑に扱ってしまうのが「人・物の位置関係」。
誰がどこにいて、何がどこにあって、その中でキャラクターがどう動くのか。
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小説ではそれらを事細かに描写することはまずありませんが、かといって頭の中にイメージできていないとシーンに矛盾が生じてしまいます。
対策として「紙に簡単に配置図を書く」ということをたまにやりますが、難点は平面であること。家具の高さまで考慮できていないため、シーンによって高さが変わるベッドなど、現実にありえない家具を登場させてしまうこともあります。
その点、部屋を3Dで表現してくれる「おくROOM」は3次元的にインテリアを検証することができるので、この悩みを解決してくれそうな予感がします。
実際にアプリをインストールしてみましょう。
「おくROOM」は現在はiOSのみの対応。Android版も今後リリースされるそうですが、時期は不明です。インストールおよび利用に料金はかかりません。
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アプリを立ち上げるとアカウントの有無や、会員登録を促すポップアップが出ます。
すべての機能を使うためにはLOWYAのアカウントが必要ですが、部屋のコーディネートなど基本的な機能を使うだけであれば「ゲストで利用する」でも問題はありません。
今回はゲストとして利用します。
トップ画面は大きく「アイデア」「アイテム」「マイコーデ」「設定」の四つのメニューに分かれています。
部屋のコーディネートを行うには「マイコーデ」メニューを選択します。左上にある「部屋を新しく作る」という青い四角をタップすると、1から自分の部屋を作ることができます。
部屋の作成をする前に、まず間取りを設定します。テンプレでは4.5帖〜20帖。シークバーをいじると0.6帖から29.6帖まで設定可能です。
0.6帖はほぼ扉だけの激せま物件ですが、端にほんのわずかに隙間があるので、ミステリの間取りとして使えそうな気がしないでもないです。
床面積を設定したあとは、床材の設定です。ホワイトやナチュラルなど王道のものから、ヘリンボーンやブラックマーブルなど高級感あるものまで、全15種類の中から選べます。
今回は床面積を6.0帖、床材をナチュラルで設定してみました。
設定した後は、いよいよ部屋のコーディネートです。画面上に現れる窓とドア以外何もない部屋は、引っ越したばかりの新居を思い出させ、どこか懐かしい気分になります。
アングルはスワイプで自由に変更可能。俯瞰視点で見ることもできますし、ピンチアウト&インで拡大縮小も自由自在です。2本指での同時スワイプで縦横の移動もできます。
コーディネートには下部にある3つのメニュー「おまかせコーデ」「アイテム追加」「内装/環境」を使用します。
一番右にある「内装/環境」メニューでは、デフォルトで備わっている窓やドアの種類・配置を変えることができるほか、床材や間取りの再設定も可能です。
さらにライティングの変更や、背景を昼・夜で切り替えることもできます。
部屋に入ってくる日差しの方向も、小説を執筆するうえではとても重要です。
適当に描写していると、絶対に有り得ない位置に日なたができて「この人会話中に模様替えした?」という事態にもなりかねません。
エモーショナルなシーンでこれをやると一気に台無しになります。なので、日差しまで確認できるのはものすごくありがたい機能です。
下部メニューの真ん中「アイテム追加」で、部屋の中に家具を配置することができます。
追加したい家具を選び、置く場所を選択するだけの簡単操作。場所や向きも自由に変更することが可能です。
「おくROOM」はインテリアブランド「LOWYA」を運営する株式会社ベガコーポレーションが手がけているので、登録されているアイテムも基本的には「LOWYA」のものになります。
アイテム数は1000点以上あり、いずれも精巧に3Dモデル化されています。
ソファ、収納、テーブル、キッズなどカテゴリーごとに15種類に分かれているうえ、各カテゴリー内でフィルターを掛けることができるので、大量のアイテムからも探しやすいです。
また「小物」というカテゴリーには電化製品やキッチンなど「LOWYA」ブランドではないアイテムも200件近く登録されています。
これらをスペースが許す限り自由に配置することで、部屋をコーディネートしていきます。
画面左下には配置した家具の合計点数と金額が表示されます。部屋のイメージと予算感をすり合わせるのに便利なのはもちろんのこと、創作の観点からもありがたい機能です。
キャラクターが部屋にどれくらいお金をかけているかが分かるので、例えばお金持ちのキャラクターを登場させるときには説得力が増すことでしょう。
自由度が高くて便利なお部屋コーディネートですが、中には「イチから考えるのがめんどくさい」という人もいるかと思います。
そういう人には下部メニューの左にある「おまかせコーデ」がおすすめ。
部屋のタイプ、アイテムのカテゴリ、テイスト、予算を選ぶと、自動で条件にあった部屋を生成してくれるのです。
あとは生成された部屋を自分好みに変更すれば、すぐにオリジナルの部屋を作ることができます。
実際に出来上がった部屋を観察し、その中で登場人物がどう動くのかをイメージすれば、よりリアリティのあるシーンが描けるようになるに違いありません。
欲を言えばアイテム追加で「人間」を配置できるようになるといいかなと思います。個々のアイテムのサイズ感がよりわかりやすくなる気がするので。
ちなみに「小物」カテゴリーには「猫」がひっそりといて、家具の上に配置できます。
一連の機能によって創作の悩みの1つである「人・物の位置関係」が解決するので、それだけで十分すぎる機能なのですが、実は筆者にはほかにも創作するうえでの悩みがあります。
それは間取りがワンパターンになってしまうことです。
筆者は家具やインテリアに造詣が深いわけでも、センスがあるわけでもありません。なので作品の中に部屋を登場させる場合は、どうしても“自分が知っている部屋”だけになってしまいます。そうなると“自分が知らない部屋に住んでいる人物”が描けません。
部屋はその人の生活の軸となる空間ですから、キャラクターの個性は部屋にも現れてくるわけです。みんながみんな同じような間取りで、同じような家具しかない部屋に住んでいるわけがありません。
キャラクターがどんな部屋で生活しているかをイメージするにあたっては、Googleで「男子大学生 一人暮らし 部屋」とか「社会人女性 可愛い系 部屋」とか検索をかけているのですが、全体像を見ることができないのが難点。
しかしその問題も「おくROOM」が解決してくれます。
トップ画面に戻り、下部メニューの「アイデア」を選ぶと、他の人がコーディネートした部屋を見ることができるのです。
現在は公式が用意してくれているもののみ利用できますが、後々のアップデートでは、上部タブにある「みんなの」から一般の人のコーディネートも利用できるようになるのだと思います。
公式が用意してくれている部屋コーディネートは、記事執筆時点(2024年11月15日)では49種類。
各コーディネートにはテーマやポイントなどが記載されていて、さらに使用しているアイテムも一覧で確認できます。
そして、もちろん実際にコーディネートされた部屋に入ることができます。カメラを動かしながら全体を見たり、アイテム類を操作したりすることも可能です。
アイデア一覧のページでは間取り、部屋タイプ、テイストなどで絞り込みをかけることもできるので、キャラクターのイメージにあった部屋もすぐに検索できます。
この機能があれば「自分の作品って全部のキャラクターが同じセンスで生きてる……?」と悩む機会が減ること間違いなしです。
まだ少し触っただけではありますが、「おくROOM」が創作活動のサポートツールとして使える可能性はかなり強く感じました。
筆者は小説書きなので、記事では小説の創作を軸に話を進めましたが、マンガやその他映像・イラスト系の創作に取り組まれている方は、より顕著にその便利さを実感できるのではないかなと思います。
ただし、利用規約を読むと「本アプリ並びに本アプリ内のコンテンツ及びユーザーコンテンツについて、個人的な利用範囲を超えて商業又は営利目的において利用してはならないものとします」とあります。
つまり、アプリで作成した部屋を、そのまま商業利用することは不可、ということ。あくまで参考程度にとどめておくのが無難と言えるでしょう。
とはいえ、これほど便利なツールがスマホのアプリで、しかも無料&会員登録なしで使えるのは感嘆もの。忖度なしに画期的すぎて感動します。何より「LOWYA」ブランドの販促ツールでありながら、それ以外の小物が充実しているのもありがたいです。このおかげでかなり自由度が増していると感じます。
現時点でも機能は十分すぎるほどですが、今後のアップデートでアイテムが追加されたり、一般ユーザーのコーディネートが閲覧できるようになったりすれば、より一層創作活動の手助けになり得そうです。
<参考・引用>
「おくROOM」プレスリリース
※記事内の画像は「おくROOM」アプリ、及び関連ページのスクリーンショットです
(ヨシクラミク)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024111603.html
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