路上やイベント会場、ショッピングセンターなどにやってきたクルマの中から複数のケージが外部に出されます。複数のケージの中にはそれぞれ子犬や子猫が入っており、そのかわいさから人間の気を引き、そのまま販売するという「ペットの移動販売」。
実店舗を持たない業者が行うことが多く、ペットショップよりもさらに過酷な「移動」などのストレスを犬猫が強いられるためこれまで問題視されてきた業態です。
動物愛護法改正で、実質「移動販売」ができなくなったはずだが…
2020年に改正された動物愛護管理法で、ペット販売業者に「購入希望者に、『事業所内』で動物の現物確認・対面説明をすること」と義務づけられました。
直接的に「ペットの移動販売はダメですよ」という法令ではないものの、「事業所内で動物の現物確認・対面説明」が義務づけられたことで、実質的には、「ペットの移動販売」は事実上不可能になりました。しかし、一部地域ではこの法令の理解が乏しいのか、それともあえて法令を無視しているのか、今なお堂々と「ペットの移動販売」を行い続ける業者が存在します。
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高知市内の「ペットの移動販売」のケースでは…
こういった「ペットの移動販売」で売られる動物の中には、ペットショップで売れ残った犬猫や、持病を抱えた犬猫も少なくないとされ、その場しのぎで犬猫を売り切って「あとは知らない」を決め込む業者もいると言われています。
2024年6月、高知市内のとある場所で「ペットの移動販売」が開催されました。ここで販売されたワンコのうち、3匹に呼吸疾患が認められました。
過去にはこの業者による「ペットの移動販売」出身の柴犬が、犬パルボウイルスに感染しており販売後にすぐに死に至ったケースもありました。
目下すべきは「移動販売で犬猫を買わないこと」
これらの事態を受け、地元の愛護団体・アニマルサポート高知家では、高知市保健所の生活食品課に直談判。別の市民からも多くの「ペットの移動販売」中止の声が寄せられていると言い、高知市長からも前向きな意見を得ることができました。
ただし、こういった働きかけで「ペットの移動販売」が減りつつあるものの、完全になくなったわけではなく、いまだに全国各地でその場しのぎの怪しげな販売が行われているのも事実です。
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アニマルサポート高知家の代表は「自治体による移動販売業者への立ち入り検査の甘さは拭えない」と言います。移動販売を行う業者に対し、ガイドラインでは「事業所への2日間以上の観察業務」というものが掲げられているものの、代表から見て「形だけの検査によって許可をおろしているように見える」とも。そして、こういったまだまだ甘い状況の中で目下できる「ペットの移動販売」への阻止行動は、「ペット移動販売業者から絶対に犬猫を買わないこと」だと言います。
「買う人がいなくなれば、移動販売業者は成り立たなくなり、同時に悲しい思いをする犬猫も減る」と言い、法律の曖昧さや業者の実態も不明瞭である今の状況から言うと、まずできることは「やはりこれしかない」と筆者も共感しました。
どんな犬も猫も、かわいく映るものです。
しかし、過去の犬猫の生活はもちろん、健康状態や、後の犬猫が迎える持病などのケアは素人には全く分かりません。結果的に「飼いきれない」となり、飼育放棄に至ったり棄てられたりして辛い思いをするのは当の犬猫たちです。
こういった悲しい一生を遂げる犬猫を1匹でも多く減らすためにも謎が多い「ペットの移動販売」は真っ先に規制すべきだと思いました。
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(まいどなニュース特約・松田 義人)