一般的に、退職金の相場は勤続年数や役職に左右されます。そのため、定年が近づくと「どのくらい退職金がもらえるのか?」気になる方が多いのではないでしょうか。
今回は、大学卒で大企業に働いている人の退職金の相場と、定年後の働き方を紹介します。
大企業に勤務する人がもらう退職金の相場はいくら?
厚生労働省(中央労働委員会)は「2023(令和5)年賃金事情等総合調査」で、大企業における学歴別のモデル退職金額を公表しています。この調査の対象企業は、運輸・交通関連業種以外は資本金5億円以上かつ、労働者1000人以上の独自に選定された380社が対象です。
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●大企業のモデル退職金(男性)
【2023(令和5)年】
・大学卒:2858万4000円
・高校卒:2162万5000円
●定年退職する年齢とは?
退職金は早期・定年など退職した後にもらえるものですが、定年する年齢はいくつに定められているのでしょうか。
この調査の集計対象企業157社のうち、156社(99.4%)において定年制が採用されています。60歳定年制は「119社(76.3%)」であり、65歳定年制を採用しているのは「33社(21.2%)」となっています。
定年後の働き方はどうなるの?
同調査では、定年後の働き方についての調査結果も報告されています。定年制が採用されている156社のうち、継続雇用制度を採用しているのは149社(95.5%)です。ほとんどの企業が採用する継続雇用制度とは、たとえば、60歳定年だった人が、その後65歳まで、1年ごと有期雇用を更新していく「再雇用」制度のことをいいます。
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●継続雇用制度を採用している148社の再雇用時の雇用・就業形態
・嘱託社員:80社(54.0%)
・契約社員:43社(29.1%)
・正社員:7社(4.7%)
・パート・アルバイト:6社(4.1%)
・子会社・関連会社の従業員等:6社(4.1%)
・その他:6社(4.1%)
継続雇用制度の場合、働く時間は、再雇用時の就業形態によって異なるため、今までと同じ場合もあれば、少なくなる場合もあります。時給単価については、多くの場合、現役時よりも50〜80%減る可能性が高いです。
退職金を受け取ったら、相当の税金がかかるの?
大企業の場合、受け取る退職金はかなり高額です。とはいえ、退職金の受け取り方は、「一括で受け取る」「分割して受け取る」「両方を組み合わせて受け取る」などいろいろです。中でも、一括で退職金を受け取った場合、税金が相当かかるのでは?と心配になる人もいるのではないでしょうか。実際、退職金にも税金はかかりますが、税制優遇されているため税負担が重くなりすぎることはありません。ざっくり、課税される退職所得がどのくらいになるのか確認してみましょう。
【?退職所得控除額の計算式】
勤続年数によって計算式が異なります。
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・勤続20年超:退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数−20年)
【?課税退職所得金額の算出方法】
課税退職所得金額=(退職金額−?退職所得控除額)×1/2
?で算出した課税退職所得金額に税率をかけ、さらに控除額を差し引かれて所得税額が算出されます。
たとえば、大学を卒業して大企業に勤務し、定年まで勤続38年、退職金を2500万円受け取る場合であれば、
・800万円+70万円×(38年−20年)=2060万円(退職所得控除額)
・2500万円−2060万円=440万円×1/2=220万円(退職所得の金額)
このように退職金には「退職金所得控除」などがあるおかげで、課税対象となる退職所得額は大きく抑えられる仕組みになっています。
遅くとも定年が見えてくる55歳ぐらいになったら、ご自身の勤務している企業の「就業規則・賃金規定・退職金規定」などで、定年年齢、定年後の働き方、退職金額などを確認しておきましょう。
文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー)
3匹の保護猫と暮らすファイナンシャルプランナー。会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方、心豊かに暮らすための情報を発信しています。
(文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー))