シロカの「おうちいろり」1カ月で完売 アイデアは“社長の自宅”で浮かんだ、なぜ?

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2024年11月18日 08:01  ITmedia ビジネスオンライン

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シロカの「おうちいろり」が人気

 ホームパーティーや日々の食事で「食卓を囲む時間を楽しめる」と、反響を呼んでいる商品がある。シロカ(東京都千代田区)が2023年12月に発売した卓上調理家電「おうちいろり」(希望小売価格:土鍋なし2万9700円、土鍋あり3万9600円)だ。


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 コロナ禍に考案し、約3年かけて開発。昔ながらの「囲炉裏(いろり)」をモチーフにしており、企画時に出た案はすべて妥協することなく盛り込むなど、こだわりを持って開発したという。


 初回生産分は1カ月で完売するなど売れ行きは好調のようだが、そもそもなぜ、このような商品を開発しようと思ったのか。きっかけや特にこわだったポイントを同社ブランドマーケティンググループのマネージャー・?野拓人(ひばりのたくと)氏に聞いた。


●卓上調理家電「おうちいろり」とは?


 おうちいろりの特徴は、付属のプレートを使い分けることでさまざまな料理を楽しめるようにしたこと。焼き鳥などの串料理や炙り焼きが楽しめる焼き網、炒め料理や煮込み料理にも使える深皿、たこ焼きなどがつくれるボールプレート、高い蓄熱性と保温効果を備えた土鍋などがある。


 高火力のヒーターですばやくプレートをあたため、安定した温度による調理を可能とした。深皿を使用した際、200度に到達するまでの時間は約6分。鋳物のプレートは蓄熱性が高く食材を乗せても表面温度が下がりにくいため、食材をムラなく仕上げられる。温度は料理に合わせて、5段階で設定可能だ。


 焼き網を使用した際には、油受けに水を張ることで煙を抑える「減煙構造」を採用。深皿使用時は、マイコンで温度を一定に保つことで煙を抑えられるようにした。


●「食」と「会話」を楽しむ時間を創出する製品を考案


 おうちいろりは、商品名の通り、囲炉裏(いろり)をモチーフにした商品となる。おいしいものを卓上で味わえるのはもちろん、料理の過程や会話を楽しみながら日々使えることを意識してつくられている。


 開発のきっかけとして、?野氏はこのように語った。「コロナ禍で外食ができなかった際、社長の家で食事をしながらコミュニケーションを取る機会があった。そうして『誰かと過ごす時間』や『みんなで食卓を囲む』の大切さを再認識したことで、コロナが明けたタイミングでソーシャルディスタンスを気にせずに食と会話を楽しむ時間を創出する商品をつくりたいと考えた」


 キッチン家電などを手掛ける同社は、商品開発の過程で顧客にヒアリングを行い、その内容を反映していくこともある。一方で、おうちいろりについては「食とコミュニケーションを楽しめるものをつくりたい」といった強い思いがあり、当初決めた要件に対して妥協することなく、長い時間と労力を費やした商品だという。


 体験から得られるリアルな価値の解像度を上げるべく、ろばた焼きの店舗に訪れたことも。「企画担当者だけでなくデザイナーも同行することで、会話の隔たりになるような大きな形状は避けるなど、体験学習の成果を商品開発に生かした」


●卓上に出てくる回数を増やせるように


 調理家電はどうしても「お手入れが大変」「収納場所に困る」といった理由で使用頻度が下がる印象もあるが、おうちいろりについては「いかに日常使いしてもらえるか」にもこだわっている。減煙構造のほか、清掃のしやすさ、一般的なホットプレートと比較してかさばらないような収納性も意識した。


 また複数のプレートや土鍋など、それぞれ熱伝導率が異なる中でどれを使ってもおいしく仕上がるよう使い勝手も含めて工夫した。例えば、焼き網は、焦げ付きにくい線径1.6ミリの極太網を使用して、焼きやすくした。深皿は、蓄熱性が高い厚手のプレートで、肉厚なステーキも焼きムラを抑えて焼き上がるようにした。


 ボールプレートは厚手にすることで熱が均一に伝わり、外はカリッとした仕上がりに。穴のふちを5ミリほどまっすぐ立ち上げることで、たこ焼きを返しやすく、きれいな丸型に成形しやすくなっている。


 一度の食事で複数のプレートを使い分けたい人向けに、プレートをスムーズに載せ替えられる取っ手も付属している。


●初回生産分は1カ月で完売


 2023年12月に発売したおうちいろりは、初回生産分が1カ月で完売。その後も順調に出荷を進めている。台数は非公開とのことだが「おおむね目標通りに推移している」とのことだ。


 「便利調理家電のような課題解決型の商品ではなく、付加価値を提供するタイプの商品となるため、その魅力をどう伝えていくかは当初から工夫していた。実際に使用した人の感想や利用中の画像をプロモーションにも反映していくことで、より具体的に商品の魅力を伝えていくようにしている」


 ラインアップは土鍋・蒸し皿ありの「SQ-D151D」と、土鍋・蒸し皿なしの「SQ-D151」の2種類がある。発売当初は土鍋ありのモデルが好調だったが、現在は差分なく出荷しているという。


 「おうちいろりを購入する顧客は、調理できるバリエーションの多さに魅力を感じてもらっている。そういう意味で、当初は土鍋付きのほうが売れる傾向にあったのでは」と?野氏は見ている。


 一方、社内からは「『何台売るか』だけを重視してはいけない」といった声もある。おうちいろりのテーマは「会話を楽しむ時間を創出する」。このことを忘れずに、商品を提案していくそうだ。


 調理道具としての便利さだけでなく、「誰かと過ごす時間の価値」や「みんなで食卓を囲むことの大切さ」を再認識し、“食と会話を楽しむ時間”を創出する製品を提供したいといった思いで開発されたおうちいろり。今後の展開にも注目したい。


(熊谷ショウコ)



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