組織運営には必ずルールが存在する。しかし、そのルールが適切でないと組織の空気は緩くなり、社員のやる気も失われていく。
会議でもそうだ。ルールが曖昧だと非常に生産性が悪くなる。多くの上司は「ルールは守るもの」と考えがちだが、会議をより効果的にするための「仕組み」として機能させなければならない。
今回は会議を悪くするルール、そして良くするルールについて詳しく解説する。特に経営者やマネジャーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
●イライラする会議ルール、3つの特徴
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まず、会議の生産性を悪くするルールには、次の3つの特徴がある。
1. 数が多すぎて覚えられない
2. 形骸化している
3. 罰則の実効性がない
最も問題なのは「数が多すぎる」ことだ。メンバーが覚えきれないほどのルールがあると、どれが重要でどれが重要でないのか分からなくなる。特に上層部が新しいルールを次々と追加していくと、現場は混乱する。
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会議の事前準備、始まりの時間、終わりの時間をルールとして決めるぐらいならいいが、
・「議題は当日10時で締め切り」
・「会議資料はA4サイズで縦型、会議5分前に配り終えておく」
・「資料作成者による読み合せ時間は5分以内」
・「発言する時間は2分以内」
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・「質問は30秒以内」
・「意見を求めるときは2人まで」
・「議事録は当日の17時までに完成させ、課長と部長に承認を得る」
……といった細かいルール、決め事があると、とても窮屈な感じがする。会議中に問題を解決するための対策を考えたくても、ルールを守ることばかりに焦点を合わせることになって、大事なことがおろそかになるのだ。
次に「ルールの形骸化」だ。
●ルールが形骸化すると、真面目な人がばかを見る
ルールは守られなければならないものだ。しかし守られていないのに野放しにされると、他のルールも守る必要がないと思われてしまう。
「5分前集合」というルールがあるにもかかわらず、守らない人がいたり、遅刻する人もいたりすると、そのルールを守っている人がばかを見ることになる。
特に守られにくいのが、準備する資料やシステムの入力の徹底度だ。分かりづらい資料を作ったり、入力すべき項目に入力されていなかったりすると、その確認だけで会議の時間が長引く。
「この資料は結局、何が言いたいの?」
「システムに入力してないんだけど、会議が終わったらすぐにやって」
このようなことをイチイチ会議で確認、指示していると、マジメにやっている人が報われない。
最後に「罰則の実効性」だ。ルール違反に対して何のペナルティーもないと、ルールは単なる「お願い事」になってしまう。
交通ルールと交通マナーの違いを考えてみよう。ルールには違反に対する制裁が設けられているが、マナーにはそれがない。組織においても、ルールとマナーを明確に区別しなければならない。
●会議の生産性を上げる3つのルール
反対に、生産性の高い会議にするルールには次の3つのポイントがある。一つ一つ解説していこう。
1. ルールを3つ以内に抑える
2. チェック機能をシンプルにする
3. 例外なく罰則を適用する
多くのルールは覚えにくい。だから絶対に守るべきルールは3つ以内に抑える。そうすれば社員全員が意識しやすくなり、守られやすい。例えば「資料の準備」「時間厳守」「発言義務」などだ。
・「ルールに則った資料を事前準備して前日までにAさんへ送ること」
・「会議は5分前集合」
・「会議中、必ず一回は発言すること」
これぐらいがちょうどよい。
チェック機能も複雑にしてはいけない。もし情報システムで管理しているのであれば、入力すべき内容はシステムで制御できる。誰が見ても「守れているか、守れていないか」が分かるものにすべきだ。
例えば営業管理シートで「顧客視点の理由」を書かせるのではなく、「Yes/No」で答えられる項目にするなど、パッと見て分かる資料を作ることも大事だ。
「罰則の適用」も重要だ。たとえ社長であっても、役員であっても、ルール違反は許されないという姿勢を見せることで、組織全体の規律が高まっていく。罰則に一貫性がないと、ルールの尊重は失われてしまう。
明確なペナルティーはなくてもいいが、
「会議資料は事前に目を通すことがルールになっているだろう。今度、ルールを守らなかったら会議に出てこなくていい」
これぐらいの厳しいフィードバックを、会議の主催者はすべきだろう。
●実効性のあるルール設定、4つのコツ
最後に、そもそも組織におけるルールとはどういうものか? おそらくルール設定のキホンを教えられたマネジャーは少ないだろうから、ここで4つのコツを紹介していきたい。
組織運営のためのルールだが、会議で進捗をチェックするときに使える。
1. 成果のルール
2. 期限のルール
3. 役割分担のルール
4. 状態のルール
最初の「成果のルール」は、KPIなど具体的な数字で評価できるものだ。このルールは2種類に分けられる。
・超えたらOK(超えなければルール違反)
・超えなければOK(超えたらルール違反)
超えたらOKのルールは、例えば「営業の訪問件数」だ。1カ月30件以上の訪問をすることがルールであれば、30件を超えたらOKだ。反対に29件以下ならルール違反である。
超えなければOKのルールは、例えば「時間外労働」である。1カ月20時間以内の時間外労働がルールなら、20時間以内ならOK。しかし20時間を超えたらルール違反である。
2つ目は「期限のルール」だ。これは分かりやすい。
資料提出や業務の完了には必ず期限を設け、それを守ることをルール化する。期限のルールは簡単にチェックでき守りやすい一方で、提出物の質も保証されなければならない。期限は守ったけれど、質の低い成果物ではルール違反だ。
従ってなかなか成果物の質が上がらない人は、期限前にフィードバックを受けることもルール化する。そうすることで修正する時間的余裕を持たせられるからだ。
●「役割分担のルール」とは
3つ目は「役割分担のルール」だ。
例えば営業は営業活動に集中し、それ以外の業務はアシスタントに任せるなど、明確な線引きをしたい場合がある。そのようなときに、こういったルールは便利だ。厳格に運用することは難しいが、明らかに役割分担が甘いと、
「その業務はアシスタントに任せるルールだったはず。ルールを守らないなら、評価を下げるぞ」
このように指導できる。もしもルールが守られなければ、定性評価として盛り込むのが現実的か。
4つ目は「状態のルール」だ。これは一見分かりづらいかもしれない。
・「元気よくあいさつする」
・「しっかり報連相をする」
・「積極的に問題提起する」
・「部下の言葉を傾聴する」
こういった心掛けをルールとして設定する組織がある。しかしルール化して管理していいかどうか、なかなか判断が難しい。判断する人の主観によって、ルール違反かどうか分かりづらいからだ。
このように、規則、ルール、慣例、心掛け……といったものを使い分けるのは難しい。ただ、共通しているのは「前提」ということだ。会議をしている最中に、これらの前提が浸透していることで、
「事前に資料を確認し、おかしいところがあれば積極的に問題提起するのは常識だろう」
「どうして会議の時間を使ってそんなことを報告するんだ。そういうことは前もって報告するように、いつも言ってるじゃないか」
このような苦言を呈す必要がなくなる。細かいルールを作ってイチイチ管理する手間が省けるのだ。
生産性の悪い会議をし続けると、組織全体の生産性も悪くなる。会議のルールを正しく設定することで、部下も健全に成長するだろう。上司も部下も同じ方向を向いて仕事をするためには、適切なルール設定が必要なのだ。
●著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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