【体験レポ】男の下心を利用する「ママ活詐欺」の罠 再潜入を通じてその手口を徹底解説

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2024年11月19日 12:30  おたくま経済新聞

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【体験レポ】男の下心を利用する「ママ活詐欺」の罠 再潜入を通じてその手口を徹底解説

 インターネット上にはさまざまな詐欺が存在していますが、中でも泣き寝入りが多いのが男性の下心を利用した「ママ活詐欺」です。


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


 おたくま経済新聞ではこれまで2度記事にして「ママ活詐欺」の手口を紹介しています。1度目は潜入して手口を細やかに紹介したところ、潜入した相手から「記事を消せ」「ただちにライターとの契約解除をしろ」などのメッセージが送られてきました。


 そして2度目の記事では、実際に被害にあった方の体験談および再潜入レポを紹介。


 「ママ活詐欺」については、記事を公開する度に被害者の方から声が寄せられます。被害にあったと言いづらい詐欺なだけに、編集部には比較的話しやすいのかもしれません。なお、これまで編集部で把握しているママ活詐欺の手口は、ほぼ同じです。


■ ママ活詐欺 基本の流れ

【これまで確認しているママ活詐欺の流れ】


(1)SNSのDMを通じて勧誘、もしくはSNSのアカウントプロフィールからLINEに直誘導
 ↓
(2)LINEに誘導され、ママを仲介する「担当者」と繋がる。
 ↓
(3)ママ活についての説明を受ける。その際、お相手候補を複数人提示され、好きな人を1人選べと言われる。
 ↓
(4)ママのLINEを紹介され1対1で会話する。ケースによっては別に担当者・ママがいるグループLINEに誘われることもある。
 ↓
(5)仲介料の代わりに指定サイト「5個分〜6個分」に会員登録するよう促される。月額2000円〜3000円の有料サイト含む。有料サイトはキャリア決済か、カード決済のみ。入会後、数日したらすぐ退会していいと言われる。また、初月の費用は後にママから支払われるなど説得がある。
 ↓
(6)5〜6サイト登録が終わっても、さらにサイト登録を促される。「担当者」に確認すると、最初から「〜個分」と説明しているとおり、1個分=1サイトではなく、1個分=セットだとへりくつを言われる。しかも1個分が何サイトか不明。つまり、延々登録させられることになるが、こちらが疑問などを投げかけると、担当者やママが突然ブチ切れて最終的には音信不通になる。


− − − − − − −


 ざっくりとした手口は上記のとおり。筆者が潜入した内容に加え、これまで寄せられた被害者複数の話をまじえて紹介していますが、結論は完全に共通しており「ママとは出会えなかった」ということ。


 ちなみに、これまで寄せられた体験談の中で、最も高い被害額は2万4000円。他の詐欺に比べ被害額が低いからか、警察や消費者センターに相談しても、暗にあきらめるよう促されるだけだったそうです。


 被害額があまり高額にならないというのも、このママ活詐欺の狡猾な部分。額が低ければ警察も本腰を入れないとふんでいるのではないでしょうか。被害者が個人で訴えるにしても、弁護士費用で足が出てしまいます。つまり、捕まる・訴えられるリスクが他の詐欺に比べて低めなのだと思います。とはいえ、今後どうなるかはわかりませんが。


 こうしてSNSのDMでの勧誘やプロフ欄からのLINE直誘導タイプは、結論まで確認済みです。そんな中、新たな「ママ活募集」の手口を発見。


 SNSに「綺麗な女性と遊んでお小遣いもゲットできるって最高」などの勧誘文言をポストして、プロフィール欄のリンクから「ママ活サイト」へと誘導していました。お金に困った男性が「ママ活」など検索した場合に、たどり着くよう仕掛けられているのでしょう。


 これまでいくつかの導入からママ活詐欺に潜入してきましたが、「ママ活サイト」を通じて応募するのはこれが初。「ママ活サイトへの応募」の場合は一体どうなってしまうのか?本当に出会えるのか?


 今回も潜入して、詳しく調査してみることにしました。なお、潜入する際に最初のきっかけとなったアカウントは、何か問題があったのか既に閉鎖されています。



■ 「ママ活サイト」にアクセスしてみる

 では「綺麗な女性と遊んでお小遣いもゲットできるって最高」とポストしていたアカウントのプロフィール欄にあるURLからアクセス。


 サイトは「ペライチ」など、一時的に簡単なサイト制作をするサービスを利用しているようで、特に固定のドメインが取得されているようではないようです。


 おそらくいつでも「閉鎖」できるような体制を整えているものと思われます。そして、ここからは「LINE」を使って担当者と話していくようです。


■ 担当者とやりとりをする

 「LINE追加はこちら」というボタンをタップして、担当者を追加。会話をすすめていきます。


 追加したアカウントは「グレーの公式バッジ」がついていました。これはLINEが審査していない、未認証公式アカウントの証。


 LINEが提供しているビジネス向け「公式アカウント」のサービスには、認証を受けた認証済みアカウント(バッジの色は青や緑色などがある)と、未認証アカウント(バッジの色はグレー)が存在しています。


 公式アカウントサービスへの加入自体は比較的簡単に行え、さらに無料でも使用可能。こうした手軽さは個人店や小規模サービスなどにとってはありがたいものである一方、ネット詐欺によく使われてしまっている現状があります。その多くは勿論「未認証」。


 ちなみにこの事態はLINEも把握済。現在はさまざまな対策が講じられ、未認証公式の場合には画面に注意喚起が表示される場合もあります。


 さて、今回繋がった最初のアカウント名は「みか」。これからママ活相手を仲介してくれる「担当者」になります。


 担当者のアカウントを登録するとすぐに、「お住まいの地域」「名前(ニックネーム可)」「年齢」を回答するようメッセージが送られてきました。これはSNSのDM勧誘からのママ活と同じ流れ。


 どうやら入り口は違っても、流れはこれまでと同一のよう。「ママ活詐欺」の手口はフォーマットが1つなのかもしれません。


 とりあえずここでは、適当な居住地を入れておきます。ただ本物だった場合に備えて、実際に会える地域を回答しておきました。


■ ママを紹介される

 しばらくすると、「ママ」の候補が送られてきます。わかる、わかるぞ……この後の流れも!と思いつつ従います。


 指定された6人の中から、好みの方を選びます。今までの経験上、会うことはできないので、適当に選びます。


 すると、条件が提示されます。手当(報酬)は1回のデートで6万円から。これまでのパターンですと、1回3万や5万が多かったので6万はわりと破格。


 本当にもらえるのであればまさしく「女神」ではありますが、実際はそんなことはないでしょう。


 その後、「ママ」のLINEを紹介されるので、とりあえず追加。この流れも今までと全く同じ。ちなみにママのアカウントは、公式アカウントではなく一般アカウントでした。


■ ママと他愛もない会話をする

 「ママ」をLINE追加したら、「好きな食べ物はなに?」と聞かれました。これも毎度恒例。少しは変化があって良いと思うんですけどね。


 その後待ち合わせ場所を決めて、話をサクッと終了させておきます。



■ 有料サイトの登録をさせられる

 「ママ」との待ち合わせの話が済むと、仲介役の「担当者」が本題に入ります。


 でたー!有料サイトの登録です。「ママ」と会うためには、指定される有料サイトへの登録が必要になると説明されました。


 指定されたサイトはアダルトサイト等ではなく普通の壁紙配布などを行う、一見クリーンなサイト。以前はアダルトサイトを指定してくるパターンもあったのですが、よほど逃げられることが多かったのでしょう。最近は、こうした一見無難なサイトがよく指定されます。なお、筆者がこのサイトを見るのは実は2度目です。


 そして費用は月額3000円が必要。無料でもありそうな素材サイトが、3000円もかかるのです。担当者は、登録には「現金は1円もかからない」と説明していますが、“現金は”その時使わないものの、実際には初月分が翌月クレジットから引き落とされます。なにこのへりくつ。そしてもし退会し忘れたら、毎月引き落とされることに……。


 また、仲介条件の有料サイト登録数は「5〜6個分」との説明。これまたでたー!「個分」トラップ!


 つづけて「かかる費用【11,000-】」と説明されましたが、そもそも「11,000-」と円表示でないのが気になるところ。これもトラップの1つな気がします。


 ちなみに経験上「1個分」は5サイト程度登録させられます(8サイトの時もある)。5×5個分だとして25サイトの登録が最低でも必要なはず。そうすると1サイト3000円×25サイト=75,000円も支払わされることに……。


 手口は十分わかりきっていますが、ここで契約しない限りママとは会えません。


 その先で本当に会えるのかどうか、念のため確かめたいので、指定されたサイトで会員登録を進めます。すると出てきたのがクレジットの決済画面。


 ここでは一般公開されている「テスト番号」や見本などにも使われている、特殊な番号を入力してみます。だが、番号はもちろん通らず、エラー。残念。


■ 番号を晒すように言われる

 結局カードが通らないので、その状況を担当に伝えると思わぬ提案をされました。


 「動画を撮って送っていただけますか」


 は?なんと、カード番号を「動画で」送ってくれと言うのです。


 動画だと入力した番号は晒されてしまうので危なくないか、その点を聞くと、米印になるので大丈夫とのこと。いや、なってませんが……。


 筆者が今回使用した番号は、広く公開されている特殊な番号なので、もし見られたとしても何ら問題はありません。相手の指示に従うためとりあえずは一旦静止画で送ってみました。


 すると、「見えてますね!」と、軽い返事。


 そりゃ見えるだろう……ということで、改めて動画で送っても同じ結果。


 恐ろしいのが、これが相手の「狙い」だとしたら、とんでもないことです。てっきりサイト登録で仲介料を搾取するだけかと思いきや、カード番号まで晒される羽目に。本物のカード番号ならば、おそらく情報を盗み取られてしまうことでしょう。



■ クライマックス「担当者がブチ切れる」の前に色々聞いてみる

 今回潜入した「ママ活サイト」も、流れは「SNSのDM勧誘タイプ」とほぼ同じでした。


 この後の流れを予想すると、話が進まないと分かると担当者がブチ切れブロックされる、もしくはサイト登録を再度促してくる→その後結局はなんだかんだブチ切れて連絡が途絶える(多分ブロックされている)。


 結論は「ブチ切れてブロックされる」の一択ですが、今回はどうでしょうか?


 担当者がブチ切れる前に改めて、ママと「本当に会えるのかどうか」確認してみます。すると……


 「絶対に会えるかどうかは、担当者はママではないのでママに聞いてくれ」


 なるほど、担当者は担当者、ママはママそれぞれ役割がある。なので、実際に「ママ」とマッチするかどうかは「ママ」の確認が必要になる。あくまで担当者は「仲介」をするだけであり、その後のやりとりは、二人に任せるということのようです。


 そんな会えるか会えないかが確定していない状態で、仲介料代わりに有料サイトへの登録を促すというのもおかしな話です。それに「有料サイト」へ登録させるのではなく結婚相談所のごとく「仲介料」なり「制約料」として請求する方がずっと楽なはず。


 おそらくそれができないから、ワンクッション置いて「有料サイト」へ誘導させ、課金させているのでしょう。そもそも、誘導先の「有料サイト」も仲間である可能性も考えられます。


 いずれにせよ、会えるかどうか不明なまま、お金を払うのは怖すぎるのと、返金も受け付けないようなので……「詐欺ではないか」と思い切って質問。ついでに過去にママ活に潜入した際の記事を見せてみたところ……。


 「サイト登録は詐欺みたいなイメージだが、それは違う」「仲介者も詐欺も手法は同じ」など、かなり苦しい反論。



■ お決まりの「担当者ブチ切れ」

 最後にもう一度「会えるのかどうか」聞いてみると、担当者は「同じことを聞くのをやめていただけますか」とキレだしました。この手の質問は日常茶飯事のようで、担当者も本気でうんざりしているようすです。


 ただ、有料サイトの登録をせっつかれるので、こちらも同じように


 「同じことを聞くのをやめていただけますか」(ひ○ゆき風)


 と、おうむ返しをしたところ「もういいです」とさらにキレて、ブロックをするといいだしました。でた!


 最後に、このやりとりをネットの記事にして良いか質問。すると……


 「勝手にしていただいて構いませんが、会社としてやっているので被害が出た場合はそれ相応の対応をする」とのことでした。


 なるほど、しかし我々は「被害」どころか、「被害を食い止める」ために取材をしているので、遠慮なくこのやりとりを紹介します。


 実際、これまでの記事には「被害を未然に防げた」「途中で立ち止まれた」「被害にあったことを確認できた」という声が多く寄せられており、公開した価値は十分あったと考えています。


 そもそも論、「楽して稼げる安全な仕事」は世の中にそうあるもんじゃありません。基本は「資格」や「スキル」が前提条件。仮にあったとしても、それは「闇バイト」の可能性がこのご時世は濃厚。もしくは「詐欺」か。


 どちらにせよ良い結末は待っていません。「ママ活募集」はじめ、ウマイ話の誘いには絶対にご注意を。


(たまちゃん/宮崎美和子)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By たまちゃん | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024111904.html

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