秋を迎え、多くの企業は来年度入社予定の学生たちの内定式を実施。大学生なら卒業論文などはあってもあとは卒業を待つのみで、時期的に仲のいい友達と卒業旅行を計画している人もいるだろう。
だが、卒業旅行をめぐるトラブルは大変多く、1人で勝手に行き先やプラン内容を決める者やその逆で完全に人任せの者、行くと言っておきながら旅行代金の支払い直前になってドタキャンするといった話は毎年のように耳にする。
また、これらの話と並んでよくあるのが、誰かを仲間外れにして旅行の計画を進めるケースだ。今春、都内の私大を卒業した会社員の今野美月さん(仮名・23歳)もその被害に遭ったひとり。
大学内では同じ学部の女友達3人と卒業旅行をする予定になっていたが、秋に入っても具体的な進展は何ひとつなかった。
◆除け者にされ、知らないところで卒業旅行の計画が進んでいた
「私は幸いにも単位を1つも落としていなかったため、4年次に大学に行っていたのはゼミの日だけ。でも、彼女たちとはゼミが違うため、月に1〜2回みんなで食事やカラオケに行く時しか顔を合わせていませんでした。
でも、LINEでは頻繁にやりとりしていて、最初は卒業旅行の話をいろいろとしていたのに秋以降は話題に出ることもなくなった。そんな時、あの子たちの1人と仲がいいゼミ仲間から私以外の3人で卒業旅行を計画していることを聞いたんです。その場では私も知っている風に装って話を合わせましたが、まさかの裏切りに家に帰って1人で泣きました」
その後、別の共通の友人からも卒業旅行の話を聞き、中心になって計画を進めているのは、グループの中心人物だったA子だと発覚。もともと気分屋で自己主張が強いところがあり、自分の考えをはっきりと述べる美月さんとは意見が食い違うこともしばしばあった。
「A子が私の文句を言っていることもこの時知りました。ただ、仲間外れにされているのに自分から歩み寄るのもどうかなって。ほかの2人にしてもA子に同調したわけじゃないですか。3人からは相変わらずご飯やカラオケには時々誘われましたが適当な口実を作って断り、LINEも最低限の返信にして距離を置くようにしました」
◆卒業旅行は1人だったが、旅先で新たな友人たちとの出会いが
ちなみに3人の卒業旅行先はシンガポール。自分だけどこにも行かないのは癪に障ったので急きょ1人での卒業旅行を計画し、タイとカンボジアの2か国を周遊する。
「大きなリュックを背負い、バンコクから陸路でアンコールワットのあるシェムリアップを目指しました。宿は出発前に予約しましたが、いずれもゲストハウスのドミトリーと呼ばれる大部屋。
最初は不安でしたけど、同じように1人旅をする女性も多く、国籍や年齢を問わずいろんな方と仲良くなることができました。帰国後もSNSで連絡を取り合っており、仲良くなった日本人の旅仲間の中には同じ首都圏在住の方が何人かいたため、たまに会って一緒に飲んだりしています」
なお、A子さんをはじめとする3人組とは、大学の卒業式で久々に再会。その場ではお互い親しげに会話し、一緒に記念撮影もしたが「彼女たちに会うのはこれが最後だろうな」と思ったそうだ。
「卒業旅行のことを追及して事を荒立てるつもりはなかったです。当時はまだ就職前とはいえ、一応大人でしたから。この頃には相手への怒りの感情はなくて、本心からどうでもよかった。よく好きの反対は嫌いではなく無関心と言いますが、まさにそんな心境でした」
◆卒業旅行で除け者にしたのに、なかったことにして接してくる友人
ただし、卒業後もA子さんからは時々LINEが届くそうで、食事やお酒に誘われても仕事を口実に毎回断るのがお決まりに。
すると、今年の夏に届いたメッセージには《忙しいのかもしれないけど、なんか付き合い悪くない?》とあったので《卒業旅行のこと、忘れてないから》と返信。以降、A子さんからは一切連絡がないという。
「もう会うつもりはありません。いい加減、私も距離を置いていることを察してほしくて最後に少しだけ毒を吐きました(笑)。大学も学部も同じで友達として付き合っている以上、1人を除け者にしてもバレるのは当たり前。そのことをなかったことにして接してこられても困りますから」
今回のケースのように卒業旅行をめぐるトラブルは、やられた側にとっては学生生活の思い出自体を変えてしまいかねない。そう考えると、ただの友人同士の旅行とは比べ物にならないほどハードルは高いとも言えるようだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。