好きな子を思ってしてしまう恥ずかしい行動が青春には付きもの。そんな瞬間を切り取って、湿度を感じるタッチで表現した漫画が『陰キャ高校生のキモい片想いの話』。Xでポストされ、7.6万のいいねを集めた人気作だ。
作者は御座井masさん(@masmas_nemui)。もともとイラストレーターとして活動していたが、この物語を不意に閃いて形にしたのだという。屈折しているけど、なぜか共感も感じてしまう本作はどのように生まれたのか。(小池直也)
――7.6万のいいねが付いていますが、反響などはいかがですか?
御座井mas(以下、御座井):引用リポストやリプライでの反応をみていると色々な方がいて、「キモくないし、むしろ甘酸っぱくて可愛い」という人もいれば、「キモすぎる」とドン引きしている人もいたり。「自分を見ているみたいで辛い」と共感によるダメージを受けている人もいました。
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最初に描いた時は「全員にドン引きされるのではないか」と不安だったのですが、思ったより肯定的な色々な反応があって、見ていて面白かったです。
――本作の着想や制作のきっかけについて教えてください。
御座井:以前はどこか影のある陰湿で偏屈な雰囲気の眼鏡をかけた男性キャラ、または女性キャラが好きで、そんなイラストを描いていました。そこである時、「好きな子とお揃いの歯磨き粉を勝手に使う」というエピソードが頭に浮かんだんです。
この気持ち悪さは絶対に自分の描いているタイプのキャラに合う、と思い立って漫画を描いたのが、第1話の歯磨き粉の話。それからは自分自身が本作の登場人物である和泉さんと嶋田にどハマりしてしまい、シリーズ化していきました。
――そのふたりの中心人物にモデルはいますか?
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御座井:モデルはいません。和泉さんはクラスの中で目立たないけど実は可愛い、ということに自分だけが気づいている女の子をイメージして描いています。嶋田は好きな子にアプローチできず、コソコソと眺めてばかりで、かつじっとりした雰囲気の冴えないどこにでも居そうな男子学生をイメージしました。
名前は完全にフィーリングですね。キャラのイメージに合いそうな名前を苗字一覧から選び抜きました。下の名前は未だに悩んでおり未定です。
――独特な絵柄とカラー作画も印象的でした。
御座井:ありがとうございます。こだわりとしては、湿度や温度を感じられる作画を心がけています。鉛筆のようなタッチのブラシを使っていて、ジャカジャカした線のタッチや鉛筆ブラシの荒さを残すことで有機的な絵になればいいなと。あとはキャラクターの汗を細々と描くことが好きで、そういう描写から湿度が伝われば嬉しいです。
――ちなみにペンネームの由来は?
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御座井:もともと「mas」という名前で活動していたのですが、ネット上で同じユーザーネームの人が多いので差別化するために苗字を付けたんです。
特に深い意味はなく、masにあう苗字として適当に考えていたら、安直な駄洒落ネーミングの「御座井mas」になりました(笑)。
――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか?
御座井:嶋田のようなキャラクター像が生まれたのは、確実に小説家の森見登美彦先生の影響が大きいです。中学生の頃から先生の作品を拝読しており、もはや私自身の人格形成にまで影響を受けているほどには大好きです。
また特に好きな森見先生の作品である『四畳半神話大系』のアニメのキャラクター原案をされている中村佑介さんのイラストにも強く影響を受けました。漫画の作画に関しては、つげ義春先生、小骨トモ先生、灰田高鴻先生、大横山飴先生のような湿度の感じられる漫画表現に影響を受けていると思います。
――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。
御座井:等身大のキャラクターで、日常の中で経験しては忘れていくような、名前のない些細な感情にクローズアップした作品を描いていきたいです。
また眼鏡をかけた素朴なキャラクターは、モブキャラクターや「実は美少女、美少年だった」というビフォーアフター話のビフォーとして描れがちですが、その魅力を押し出していけたら。
正直、まだまだ漫画の制作経験が浅く未熟だと感じますが、今回多くの方に漫画を読んでいただいて、様々な感想をいただけて嬉しかったです。また漫画を執筆していきますので、今後もまた読んで応援していただけますと幸いです。
(小池直也)
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