人生は一度きり。せっかく生まれたのだから「怒り」や「悲しみ」といった負の感情は極力減らして楽しく暮らしていきたいと筆者は考えている。しかし、中々一筋縄ではいかないのが世の常だ。おっとりとした雰囲気の吉川愛香さん(仮名・31歳)は去年人生で初めて人に裏切られたと語り出す。
◆意地悪だった同級生、ハイスペサラリーマンに変貌
吉川さんは社会人になってから、大学時代のサークルメンバーと飲む機会があったそうだ。
「飲み会で久々に再会した同級生の一人が素敵な男性になっていました。当時の彼はサークルで200人くらいのメンバーをまとめるリーダーでした。オレ様タイプで『化粧が下手だね、眉毛が変だよ』とよく意地悪を言ってくる嫌なやつで、『顔はいいのに性格は最悪〜!』と思っていたんです。学生の時は向こうには彼女がいたし、私も他に出会いが色々あったので何もありませんでしたね」
と当時を懐かしむ。
「でも久々に再会してみると、意地悪だった彼は角が取れて昔より遥かに優しくなっていたんです。大手不動産の営業マンとしてバリバリ働いていて、20代にして年収は1,000万円以上。いわゆるハイスペと呼ばれる側の人になっていました。パリッとしたスーツが似合っていて、なんだかかっこよく見えました」
◆何の曇りもない幸せな2年間
飲み会で話が盛り上がった二人。淡い期待をしながら彼からの連絡を待っていると、「今度飲みにいかない?」と向こうから連絡が来たそうだ。
「『やったー!』という感じでした。LINEの会話もすごく弾み、水族館に行ったりデートを数回重ねてトントン拍子で付き合うことになりました。いざ付き合ってみるとストレートに褒めてくれるし尋常じゃないくらい丁重に接してくれて、完全に姫扱いな毎日。連絡もまめで自己肯定感をあげてくれる存在でした。デートも旅行もいろんなところに行ったし、記念日には高級ディナーをご馳走してくれました。至れり尽くせりで本当に幸せ。自分のことを大切にしてくれるし仕事も安定している。悪いところが何一つ見当たらない彼と結婚できたらいいなと思っていたんです」
吉川さんはどんな時も味方でいてくれる彼氏に安心感を抱いていたそうだ。交際期間は2年近くに渡ったという。
◆酔っ払って帰宅した彼のカバンから出てきたものは
付き合っているうちに半同棲状態になったそうだ。
「彼の玉に瑕な部分はお酒を飲むと絵に描いたようにベロンベロンに酔っ払うところ。毎日500mlのレモンサワーを3本、4本も飲むんです。タバコも吸っていたので体が心配でした。不動産の営業はかなり体育会系という話を聞いていましたし、大きな案件を担当していてストレスを感じていたようです」
ある日、職場の飲み会で彼は夜遅くに家に帰ってきたそうだ。
「背広を脱ぐと彼は『携帯がない〜』と言いながらむにゃむにゃと寝てしまったんです。寝てしまった彼の代わりに私は彼の仕事鞄の中を探しました。すると、一枚のメッセージカードが出てきました。そこには『またシようね♡』という文字が。まさに青天の霹靂の出来事で声がでなかったです……」
衝撃を受けましたと苦笑いをする吉川さん。
「『ど、どういうこと?』と思って裏側を見てみると、スタンプが2つ押されていました。それはどうやらそういうお店のスタンプカードでした。今までどんな時も誰よりも優しかった彼が一体なぜ。こんなものをビジネスバッグに忍ばせているなんて。気持ちが悪いと生理的に感じました」
◆スマホの中には物的証拠がたんまりと…
誰かに対して、ここまで嫌悪感を覚えたのは初めてだったと吉川さんは語る。
「もともと浮気しそうな人ならまだしも、安心感のある彼だったからこそ実態を知った時のショックがすごくて……。いきなり崖から突き落とされた気分でした。『ねぇ、これ……』と聞くと彼は『何勝手に見てるんだぁ!』としどろもどろになりながらも逆ギレモードに。とはいえ向こうは泥酔状態だったので、無視して再び鞄を漁るとすぐにスマホが見つかりました。つい衝動的に開いてしまったのですが、出るわ出るわ……。グループラインで『今日合コンあるけど行ける人いる?』という募集に対し『はい! 俺行きたいです!』と手を挙げたり、『きみに紹介したい女性がいるんだけど…』『ぜひ!いつにします?』と女性を紹介してもらい、その後女性に個別LINEを送っているメッセージまでありました。その女性からは相手にされてなかったのが残念ですけど(笑)。人のスマホを見てしまったのは私が悪いですが、その時は善悪を考える余裕がありませんでしたね」
欠点が見当たらないイケメンハイスペ彼氏、いざ蓋を開けてみると誠実さは微塵もなかったようだ。その翌朝、完全に無理になった吉川さんは無言で彼を家から追い出したという。
◆謝罪上手な彼氏に対する切り返しとは
彼からたびたび謝罪はあったものの、吉川さんは受け入れられずに別れることにしたそうだ。
「話し合いの時、彼は『彼女がいると知られるといじられるから職場の人に言えなかった』とか『合コンも仕事のつもりだったから伝える必要がないと思ってた』などと、いろんな言い訳をしてきました。『本当にごめんね。自分はこういうつもりだったけど、ここが悪かった。次からはこうしようと思う。もう悲しい思いはさせないよ』などとまるで始末書の綺麗なテンプレートのように要領よく言い訳をし、事なきを得ようとしてきました。だから、言ってやりました。『なるほど。わかりました。本当にそう思うなら、それを次の恋愛に活かしてみたらどうですか?』と」
吉川さんのピシャリとした発言に彼氏も泡を食ったに違いない。
「恐らくですが、彼は『自分ならうまくできる』と自分を過信していたのだと思います。自信家な彼が肩を震わせて悲しんで帰っていくのを見ると、なんだかこちらが悪いことをしている気分になりました。でも許してまた付き合うほど彼のことを好きではなかったんです」
その2ヶ月後には別の人と付き合っていましたねとケロリと話す吉川さん。
「裏切られたこと自体が初めてで、発覚直後は火山が噴火したように憤慨していましたが、今となっては『二年間よくしてくれてありがとう』という気持ちです。それくらいいつもよくしてくれたんです。今はその後の恋愛も終わって完全にフリーですが、結局独身が一番自由で気楽ですねぇ!」とケタケタ笑う吉川さん。
愛情もあれば裏切りの可能性もあるのが恋人という関係性。女性は勘が鋭い生き物なので、男性諸君は詰めの甘さには気をつけた方が良さそうだ。
<TEXT/おせりさん>
【おせりさん】
下北沢に住む32歳。趣味はポーカーとサウナ、ホラー映画鑑賞。広告代理店・制作会社を経てフリーランスのブロガー兼ライターに。婚活ブログ『アラサー女の婚活談義』と生きることをテーマにした『IKIRU.』を運営中。体験談の執筆を得意としている。X(旧Twitter):@IKIRUwithfun