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SNS上に被害者の名前が残り続けていることについて、ある事件で子どもを殺害された遺族がプライバシー権の侵害などとして投稿の削除を求めた裁判の控訴審で、東京高裁が11月7日、1審に続いて訴えを退けていたことがわかった。代理人によると上告はしないという。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
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訴訟のきっかけとなった殺人事件は数年前に発生した。当時、新聞などが報じた記事では、殺害された被害者の名前や年齢のほか、事件現場がラブホテルであったことなどが記載されていたという。
現在それらの元の記事はすでに削除されて読めなくなっているが、報道機関が報じた当時のニュースをもとにして誰かが作成した記事がまとめサイトに掲載され、その記事の概要を紹介する文章がX(旧・ツイッター)に投稿されたまま今も残っている。
こうした状況について、被害者に対する敬愛追慕の情や被害者家族のプライバシー権が侵害されているとして、遺族がXに投稿の削除を求めて提訴した。
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1審の東京地裁は2024年3月、「現在では閲読される可能性は著しく低減しており、現実的には今後、本件各記事が新たに人々の目に触れる可能性は限りなく低いと考えられる」などとして訴えを棄却。これに対して遺族が控訴していた。
控訴審の判決で東京高裁の谷口園恵裁判長は、該当の記事の内容が「控訴人自身のプライバシーに属する情報には当たらない」こと、また「記事の投稿の目的、内容等に照らすと、各記事が閲覧可能な状態に置かれることにより控訴人の被害者に対する敬愛追慕の情が受忍限度を超えるほどに侵害されているとはいえない」ことなどを指摘して訴えを退けた。
前科に関する情報などがインターネット上に残り続ける状態は「デジタルタトゥー」と呼ばれ、社会復帰や平穏な生活を送ることへの悪影響が懸念されつつある。
これまでは事件の被疑者が過去のニュースで報じられたネット上の実名などの情報削除を求めることは珍しくなかったが、今回の裁判では事件の被害者遺族にとってもデジタルタトゥーが問題となっている状況が明らかになった。
今回の裁判を起こした被害者の家族は、弁護士ドットコムニュースの取材に代理人弁護士を通じて次のように述べた。
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「実名でプライバシーがネット上に晒され続けていることに遺族としての心の苦しみを理解していただけず、とても残念です。事件ニュースは一時的ですが、それを元にした投稿記事は放置状態。強制的に行われる実名公開は報道後の現状に無配慮です。今の状況に合った体制に変わっていくことを願います」
また、高裁判決を受けて、遺族代理人の船越雄一弁護士は以下のように話した。
「今回の裁判所の考え方からすると、報道記事の単純な転載記事(誹謗中傷などの表現が付加されていない転載記事)について、被害者遺族からの削除請求は一切認められないことになります。逮捕等された方からの削除請求の場合は、単純な転載記事についても削除が認められうることと比較すると、大切な家族を亡くされた遺族に対してあまりに酷な考え方であり、非常に残念な判決です。他方、判決はあくまで一つの法的判断にすぎませんので、コンテンツプロバイダ側には、判決とは関係なく、望まない実名報道に関する記事について記事の削除を望む被害者遺族の思いを受け止め、削除や匿名化等の運用方針を検討していただきたいと考えております」
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