広島・川辺駿が語る日本代表の同年代〜守田英正、南野拓実、鎌田大地と比較して「自分にしかない特長はある」

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2024年11月25日 07:21  webスポルティーバ

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サンフレッチェ広島MF
川辺駿インタビュー(後編)

◆川辺駿・前編>>海外で学んだワンタッチでボールをさばく技術

 3シーズンにわたってスイスとベルギーでプレーした川辺駿は、今夏より古巣のサンフレッチェ広島に帰還し、中盤に欠かせぬピースとして存在感を示している。

 愛するクラブを優勝に導くため、川辺は海外で得た経験をチームに還元する。その先にあるのは、1年ほど遠ざかっている日本代表への復帰。同世代が活躍する森保ジャパンを、川辺はどんな思いで見ているのか。

 今季かぎりでの引退を表明した広島のレジェンド、青山敏弘への思いも訊いた。

   ※   ※   ※   ※   ※

── 広島からオファーがあったのは、意外でしたか、それとも想定内でした?

「自分の置かれた状況を知ってくれていましたし、広島も夏にボランチの野津田岳人選手(パトゥム・ユナイテッド/タイ)と川村拓夢選手(レッドブル・ザルツブルク/オーストリア)が移籍し、さらにポジションは違いますけど大橋祐紀選手(ブラックバーン・ローバーズ/イングランド)も抜けることになったので、補強が必要な状況でした。広島のタイミングと自分のタイミングが合ったというのも、今回の移籍のポイントだったと思います」

── 国内クラブからもいくつかオファーがあったなかで、広島に決めた一番の要因は、やはりクラブ愛になるのでしょうか。

「もちろん広島は好きなチームなので、理由のひとつであることは間違いありません。ただ、オファーをくれたほかのチームの話も聞いたうえで、今、どういうチーム状況にあるかをしっかりと確認しました。

 順位もそうだし、在籍している選手やスタッフも含め、総合的に見て一番優勝の可能性があるのが広島だった。だから好きな気持ちだけではなく、フラットな視点も持ち合わせたうえで選んだということです」

── 川辺選手の加入以降、広島はしばらく無敗を続けていました。

「僕がプレーする前にも3連勝していたので、自分が出たことで負けたら意味がないと思っていました。自分が結果を出すことよりも、チームの結果がすべて。シーズン途中から入るということは、そういうことだと思っていますから。僕が試合に出るようになってからもチームの勢いを保つことができたという意味では、自分のパフォーマンスも評価できるかなと思います」

【日本のほうが少し遅いという感覚】

── ミヒャエル・スキッベ監督のサッカーの印象は?

「アグレッシブにプレーする、というのがこのチームの特徴だと思います。常に前に向かって、ゴールに向かってプレーするのは、自分にとってもやりやすい。だからプレーしていても楽しいですし、観ている人たちにも魅力的に映っているんじゃないでしょうか」

── 海外に行く前と戻ってきた今、両者を比べてJリーグでプレーすることに感覚的な違いはありますか。

「ヨーロッパに行った時に苦労したプレースピードや選手の単純なスピードを体感して帰ってくると、やっぱり日本のほうが少し遅いという感覚はあります。その分、余裕というか、考える時間はありますけど、Jリーグにもまた違う特徴がある。どちらが上とか下とかではなくて、その特徴を踏まえながら、今はプレーしています」

── 広島には前がかりな選手が多いので、バランスを意識しながらプレーしている印象です。ヨーロッパで培った得点感覚というものを、なかなか発揮しづらい状況なのでは?

「今はポジションもボランチですし、チームに何が必要かをすごく考えながらプレーしています。みんなが積極的にプレーするのはすごく重要ですけど、そのなかで誰かがバランスを取らないといけない。

 僕自身も前に出ていくプレーはありますけど、状況に応じて正しいポジションにいるのが自分のよさだと思っているので、そこは意識していますね。そのプレーを監督も評価してくれているからこそ、ここまで毎試合、スタートからプレーできていると思っています」

── チームで好パフォーマンスを続けるなかで、1年ほど遠ざかる日本代表で再びプレーしたいという思いも湧いてきているのでしょうか。

「もちろん、また代表でプレーしたいですよ。今のチームは過去と比べてもいいメンバーが揃っていますし、結果を見ても相当レベルの高いチームになっていると思います。だから選ばれることは簡単ではないですけど、今でも目標であることに変わりはありません。

 そのためには所属チームで圧倒的なプレーをしないといけないですし、当然、結果も求められてくる。そういう観点で見れば、チームが優勝するのはすごく重要なことだと思うし、その優勝したチームで中心選手としてプレーできていれば、代表にも近づいていくはずです。

 やっぱり入りたいという気持ちがないと入れないと思うので、常にそういう目標を持ちながらチームで最高のパフォーマンスを続けていくだけ。日本に帰ってきたからこそ、余計にそう思っています」

【武器は3列目から飛び出していくプレー】

── 日本に戻ると代表から遠ざかってしまう、という危機感はありませんでしたか。

「それはもちろん考えました。今の代表はヨーロッパでプレーしている選手がほとんどですから。日本のチームに帰ってきたことで、より厳しい道のりになるとは思っています。

 ただ、ヨーロッパにいても所属チームで活躍しなければ、呼ばれることはないですし、それは日本にいても同じこと。代表を目標にしつつ、今いるところで結果を出し続けるっていうのが、すごく重要かなと思います」

── 川辺選手と同年代の選手が、今の代表の主軸になっています。守田英正選手(スポルティング/ポルトガル)や南野拓実選手(モナコ/フランス)、鎌田大地選手(クリスタル・パレス/イングランド)といった、ポジションも年齢も近い選手たちの存在はどういったものですか。

「それぞれすばらしい選手たちですし、リスペクトもしています。ただ、そういう選手たちが持っていて、自分にはないものは当然あるけれど、逆に自分にしかない特長もある。そこに関しては自信を持っているので、その特長をうまく発揮していきたい。

 もちろん彼らはポジションを争わなければいけない存在ですけど、負けたくないっていうよりも、また一緒にプレーしたいっていう気持ちのほうが大きいです。いい選手とプレーすると、自分のプレーをどんどん引き出してもらえますから。高いレベルの選手たちと、また一緒にプレーしたいですね」

── 自信を持っているという、具体的な特長とは?

「3列目から飛び出していくプレーや攻守両面に関われるプレーは、自分にしかないものがあると思っています。そこをどんどん出していくことが重要ですし、逆に課題に向き合うことも含め、もっともっと成長していきたいと思っています」

── 今シーズンのJリーグも最終盤に入りました。広島は優勝を狙える位置につけていますが、川辺選手は2013年の優勝を経験していますよね。

「2013年はユースに所属していましたけど、トップチームにも帯同して、何度か試合に出させてもらいました。ただ、優勝に貢献したという感覚はまったくありません。2015年の時はジュビロ磐田にレンタルで出ていたので、優勝を経験していません。

 だから今回はシーズン途中からですけど、最後まで優勝争いに絡めているのはうれしいです。ただ、一方で難しさも感じています。Jリーグは戦力の差があまりないので、最後の最後まで何が起きるかわからないですから。

 8月や9月に連勝した時の戦いを最後まで続けることができれば、十分に優勝を成し遂げられると思っています。今年は広島に新スタジアムができて、長年チームを引っ張ってきたアオくん(青山敏弘)の最後のシーズンでもある。いろんな要素がありますけど、そういう時だからこそ大きな力を発揮できると思うので、最後まで冷静に、熱く、賢くプレーしたいなと思います」

【青山敏弘の背中を追いかけてきた】

── 川辺選手の背番号66は、6番を背負う青山選手をリスペクトして選んだ番号なんですよね。同じポジションでもある青山選手が引退することをどう受け止めていますか。

「アオくんのキャリアを見ても、主力として3回優勝して、MVPを獲って、ワールドカップにも出た。しかも同じチームでずっとプレーしてきたわけなので、広島にとっては本当に唯一無二の存在で、これから先に現われることがないような選手だと思っています。

 自分は若い頃からずっとお手本にしてきましたし、紅白戦でスタメン組とサブ組で試合する時にマッチアップすることも多かった。そういう選手が引退するのは、やっぱりすごく寂しいですよ。

 一方で、これだけクラブに貢献してきた選手がいなくなるっていうのは、ひとつの時代が終わって、また新しいフェーズに入るタイミングだとも思っています。クラブの転換期に立ち会えるのは、今いる選手しかできないことなので、それを含めても、やっぱり帰ってきてよかったなと思っています。

 一緒にプレーできる時間は残り少ないですけど、ずっとアオくんの背中を追いかけてきました。最後の最後まで、その姿から学びたいなと思っています」

── これからの広島を引っ張っていくという覚悟もあるのでしょうか。

「もちろん、そこを踏まえたうえで帰ってきました。ただ、そういう覚悟を持ってプレーしたいとは思っていますけど、口だけではなく、結果を出さなくては認められない。だから先のことは考えず、まずは優勝という目標に向かってプレーするだけです。それを成し遂げた時に、(周囲からの信頼は)ついてくるものだと思っています」

<了>


【profile】
川辺駿(かわべ・はやお)
1995年9月8日生まれ、広島県広島市出身。サンフレッチェ広島ジュニアユース→ユースを経て2014年にトップチームに昇格。2015年から2017年まで期限付き移籍先のジュビロ磐田で主力となり、広島復帰後も欠かせぬMFとなる。2021年にグラスホッパー(スイス)に移籍し、翌年ウルバーハンプトン(イングランド)と契約。2023年からスタンダール・リエージュ(ベルギー)でプレーしたのち、2024年8月に広島へ復帰した。2021年3月の韓国戦で日本代表デビュー。国際Aマッチ6試合1得点。ポジション=MF。身長178cm、70kg。

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