同人誌、富士フイルムは高額機種アピール 高いクオリティのニーズ高まるも印刷会社が対応できない場合も?

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2024年11月25日 08:00  リアルサウンド

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やさかはちる氏が主宰者となり制作した合同誌。市販されている雑誌のようである。

■同人誌、印刷会社に与える影響


  あと1ヶ月弱で、冬のコミックマーケットが開催される。コミケに向けて同人誌の原稿執筆を、急ピッチで行い始めている人も多いのではないだろうか。近年、コミケを取り巻く環境も急激に変化しつつある。一部では「コミケの高齢化」が叫ばれるようになり、若者の同人誌離れも指摘されるようになった。


(参考:【写真】やさかはちる氏らが制作した『キラッとプリ☆チャン』の“虹ノ咲だいあ”のぬいぐるみ、通称“だいあぱん”や合同誌の画像など


  同人誌も、それまでは紙が主体だったが、電子書籍として頒布・販売する人も目立つ。そのため、同人誌の委託販売を行う専門店もじわじわと姿を消しつつあり、一般的な書店と同じような、“書店危機”の状況が起こっている。一時は同人誌がかなり主力だったアニメ専門店も、公式のグッズ販売の割合が増えつつある。


  そんななかで危機感を募らせているのが、同人誌を印刷する印刷会社だ。2020年から始まったコロナ禍で、同人誌即売会などのイベントの多くが中止になり、印刷会社は大きなダメージを受けた。翌年にはイベントが再開されはじめたものの、一般的な単行本同様、二次創作の同人誌も電子化が進み始めている。


  一方で富士フイルムは5000万円程するという高額なオンデマンド印刷機をコミティアに出展。質の高い印刷ができることをアピールしていることがSNS上では話題となっていた。


コミティアの会場に、富士フイルムが5000万円近くするオンデマンド印刷機を持ち込んで、質の高い同人誌印刷できる事をアピールしていた。
キヤノンとコニカミノルタも以前から同人誌即売会会場で同様の宣伝を重ねてるし、オフィス需要が先細りな複合機メーカー各社がこっち方面に力入れてきてるなあ。 pic.twitter.com/wRqo0dMI0b


— 乙城蒼无(Otusiro, Aomu)@12/30(月)C105東プ-56a (@aomu) November 17, 2024
■同人誌を扱う印刷会社はこれからどうなる?


  同人誌印刷は一般的に薄利多売と言われ、決して利益率が高いビジネスとはいえない。しかし、大規模な同人誌即売会が決まったスケジュールで開催されるため安定した収益が見込めることや、紙媒体が衰退する中でも紙中心の文化が続いていたことから、地方都市の印刷会社からも参入する例が相次いでいた。


  同人誌の印刷会社は、地方に本社を置く例が多い。参入の理由は様々のようだが、ある地方の印刷会社はかつて年賀状のプリントや企業の広報誌の印刷などを担っており、そうしたビジネスが苦境に陥る中、活路を見出したのが同人誌の印刷だった。なにより社長が同人誌が好きだったことがあったという。


  そんな同人誌印刷会社も2020年代は経営難に陥る企業が相次ぐのではないか、という指摘がある。ある同人誌大手サークルの作家は「20年前のコミケ全盛期と比べると、同人誌の売り上げが5分の1くらいに落ちた。超大手といわれるシャッター前のサークルも、全盛期ほどの活気はない」と語る。こうした同人誌離れが、印刷業界に与える影響は少なくないはずだ。


  2020年には、コミックマーケットのカタログや同人誌の印刷を手がけていた共信印刷が解散し、古参の同人誌ファンの間に衝撃が走った。コミケが現在ほどの規模になる前からカタログの印刷を担い、同人誌の印刷も手掛けてきた老舗中の老舗であった。その後、ひっそりと同人誌印刷から撤退する企業が増えているといわれる。


前出の同人作家は「長年、同じ担当者に印刷を任せてきたし、印刷会社によってもクオリティは異なるもの。質の高いものをそう簡単にはできないので、印刷会社がなくなると困る。何とか同人誌を作り続けて、支えていきたいと思っています」と話す。同人誌印刷会社も、アクリルスタンドのプリントやグッズの制作に参入したりと、試行錯誤が続く。紙から電子へ、さらに異業種からの印刷業界への参入など、既存の印刷会社が大きな転換期をどう乗り越えていくのか注目される。


(文=元城健)



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