高い成長が期待される米国のテクノロジー企業の中で、7年連続で増配を続ける企業を対象としたETF「グローバルX USテック・配当貴族 ETF」 <283A> が11月21日、東京証券取引所に新規上場した。ハイテク企業版の「配当貴族」の魅力について、グローバルXジャパンのマーケティング部長の長谷川誠氏とヴァイスプレジデントの宮本将圭氏に聞いた。
――連動をめざす「S&Pテクノロジー配当貴族指数 (TTM円建て、トータルリターン)」の指数構成銘柄の特徴は?
宮本 指数の銘柄選定プロセスは、まず、米国上場企業で過去6カ月間の売買代金の中央値が100万ドル以上の銘柄の中から、テクノロジー関連セクターにおいて7年以上連続で増配している企業をピックアップします。テクノロジー関連セクターは、GICSセクターの「情報技術」とGICS産業サブグループの「(コミュニケーション・サービス)インタラクティブ・ホームエンターテイメント」「(同)インタラクティブ・メディアおよびサービス」「(金融)取引・決済処理サービス」「(資本財・サービス)情報処理・外注サービス」に所属する銘柄群を指します。成長銘柄と目されるテクノロジー企業の中から、連続増配企業という安定的な収益を生み出している企業だけを絞り込んで投資するのが特徴です。
組み入れ銘柄は25銘柄以上としていて、現在の指数構成銘柄は35銘柄です。上記の条件で25銘柄に届かなかった場合は、連続増配の期間を6年、5年など条件を緩くして候補銘柄を選定します。25銘柄以上を均等加重によってウエイト付けしてポートフォリオを作ります。銘柄の入れ替えは年1回(1月)、比率調整は年4回(1月、4月、7月、10月)実施します。
――インデックスの値動きの特徴は?
長谷川 インデックスの算出は2014年1月31日にスタートし、既に10年を超えています。「S&P500」と「NASDAQ100」を比較してみると、リターンは「S&P500」より優れているものの「NASDAQ100」には及ばない。リスクは「S&P500」よりも大きいものの「NASDAQ100」よりも小さいという結果になっておりバランスの取れたリスク・リターン特性となっています。特に、2022年の下げ相場の際には、「S&P500」や「NASDAQ100」と比べて下落率がもっとも軽微でした。下落に強いという性格は、連続増配を続けるだけの安定した事業基盤と強固な財務体質があるためといえ、景気が悪い中にあっても一定水準の収益を確保できる企業への投資には安心感があるといえます。
このインデックスのコンセプトは10年前には成立しなかったのではないかと思います。テクノロジー企業は成長企業の代表格といえ、成長の初期では配当によって株主に還元するよりも研究開発や設備投資など成長のための事業投資を優先する傾向にあります。現在を代表する巨大ハイテク企業が誕生したのは1970年代以降で、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)が揃ったのは1990〜2000年代です。一方で彼らが配当を始めたのはそれからかなり後でたとえば、アップルが配当を開始したのは2011年からです。アルファベットもメタ・プラットフォームズもここ数年で配当を開始するステージになっています。そのためこれから、大型ハイテク株で連続増配が7年以上という基準に合致する企業が増えていくと考えられます。
このように10年前には成立しえなかったコンセプトが、今になってようやく形になったというのが、当ETFの大きな魅力だと思っています。成長株の要素を持ちながら、増配という安定的なインカム収益をも併せて享受できるのは、大きなメリットです。
多くの投資家の方々が「全世界株式(オール・カントリー)」や「S&P500」といった市場全体の動きをとらえる分散型のインデックスファンドに投資されています。これまでは、そこに+αの付加価値をつけようとすると、「NASDAQ100」や「FANG+」のようなハイテク株がメインのポートフォリオを追加することになり、価格変動率が大きくなる傾向がありました。今回の「USテック・配当貴族ETF」は、「NASDAQ100」ほどボラティリティが大きくなく、それでも成長株の魅力を兼ね備えた投資対象として利用していただけると思います。
――指数の過去のパフォーマンスは?
宮本 2014年1月31日から2024年10月31日まで10年余りの期間で、リターンは年率15.48%でした。これは、同期間の「NASDAQ100」の17.83%には劣りますが、「S&P500」の12.91%を上回っています。また、リターンの内訳に占める配当収益は、「S&Pテクノロジー配当貴族」指数が年率換算で2.23%になり、「S&P500」の1.98%、「NASDAQ100」の1.14%よりも高い収益になっています。
一方、リスクは当対象指数が年率19.96%ですから、「NASDAQ100」の21.05%よりも低く、「S&P500」の17.04%よりも大きくなっています。ただ、この期間の最大ドローダウンはマイナス33.07%で「S&P500」のマイナス33.79%、「NASDAQ100」のマイナス35.04%より小さく、下落に強いという性格が出ています。
――投資対象として「S&P500」との違いは?
長谷川 連続増配企業というと、成熟企業のように成長ポテンシャルに限度がある企業のように感じられるかもしれませんが、当ETFの構成銘柄であるハイテク株で連続増配企業は、依然として高い成長期待も持っています。
たとえば、アップルにしてもiPhoneなどの主力商品は毎年バージョンアップして新しい機能を追加しながら存在感を維持していますが、それと並行してApple Watchやサブスクリプションサービスなどを新たな収益源として育てています。マイクロソフトも「office」に代表されるソフトウエアの会社からクラウドやAIにおいて新しい成長機会を獲得しています。連続増配でイメージされる公益企業やインフラ企業とは異なる成長への強い意欲を有しているのです。
現在の組み入れ銘柄上位にある「オラクル」「シスコシステムズ」「モトローラ・ソリューションズ」「IBM」「マスターカード」「ビザ」などの企業は、「エヌビディア」のような派手な成長ではないのですが、それぞれ情報技術ビジネス領域において強固なビジネス基盤を持っています。「ビザ」や「マスターカード」は歴史のある企業ですが、近年急成長しているQRコード決済の裏側の決済インフラを提供することで収益機会を拡大しています。
これら企業が増配をしている理由の1つに、優秀な技術者を確保するためという理由もあります。多くの企業がストックオプションを使って自社株を付与していますが、その自社株から得られる配当が年々増額していけば、その会社に長くとどまっていようというインセンティブの1つにもなると考えられています。増配が株主還元の手段だけではなく、人材確保による成長戦略の一環にもなっているのです。
投資対象としての「グローバルX USテック・配当貴族ETF」は、運用管理費用(信託報酬)が年0.3025%(税込み)以内で、年4回(2,5,8,11月)決算を行います。1口=約1000円の少額投資ができます。配当収益によるインカム収入を積み重ねながら、企業成長による株高がもたらすキャピタルゲインも同時に追求できるため、長期で保有するほどに魅力的な商品になります。ぜひ長期の資産形成の手段としてご検討いただきたいと思います。