半導体で独り勝ち「エヌビディア」の勢いはいつまで?【Bizスクエア】

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2024年11月27日 06:08  TBS NEWS DIG

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アメリカ半導体大手のエヌビディアが2024年8月から10月期の四半期決算を発表し、売上高純利益ともに過去最高となった。

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米半導体「エヌビディア」売上高・利益が過去最高

東京・銀座にある投資家バー。エヌビディアの好決算を受け、投資家たちのお酒が進む。

「もっとエヌビディアに頑張ってほしい。もっと株価全体を押し上げて半導体セクターを、どんどん全体を押し上げてほしい」「私ポートフォリオの大半がエヌビディア。4年以上持っている。5年かな。言えないくらい儲かっている。もうジェンスン・フアンCEO様々」

エヌビディアの今年8月から10月期の売上高は、日本円で約5兆4000億円で前年同時期の1.9倍。純利益は約3兆円で2.1倍、ともに過去最高を更新した。

それにもかかわらず、一部の市場関係者から「期待にやや届かなかった」と受け止められ、株価は11月20日の時間外取引では一時5%程度下落。翌日の通常取引時間では、前日の終値より少し値を上げた。半導体産業の分析が専門の南川明氏は、エヌビディアの好調ぶりについて…

オムディア シニアディレクター 南川 明氏:
エヌビディアのGPU(画像処理装置)がないと、学習ができない。できないというよりは非効率的だと。奪い合いの状態になっている。エヌビディアは非常に今キャッシュリッチな会社で人をどんどん集めて、研究開発もスピードもどんどん速めている。他社がなかなか追いつけないことをやり始めている。今年、来年ぐらいは世界的に生成AIの学習をするためのデータセンター投資というのが継続される。(AI半導体メーカーの)エヌビディアにとっては非常に好調な年になっていくのではないか。

エヌビディアの2024年1月の時価総額は約183兆円で世界6位だったが、今では約552兆円でアップルやマイクロソフトを抜いて、堂々の世界首位。11月8日にはダウ工業株30種平均の構成銘柄に採用され、名実ともにアメリカ株式市場の牽引役となった。アメリカだけでなく、世界から注目されているエヌビディア。

大崎真孝日本代表は今年5月、Bizスクエアのインタビューで、「エヌビディアはどういう役割をこれから果たしていくと思われているのか」という質問に対して「プラットフォームを作るということだと思う。開発の競争がものすごく激しいところで先頭に立つことがものすごく重要。それに開発者の皆さんを巻き込んでいく、そういったエコシステムを作れた企業が強くなっていく」と答えた。

11月13日には、ジェンスン・フアンCEOが来日。日本の製造業に対する期待について語った。

エヌビディア ジェンスン・フアンCEO:
私達は日本の産業と連携してAIを日本に根付かせたい。日本ほどロボット・AI革命をリードするのに優れた国はない。

「エヌビディア」の次世代半導体「ブラックウェル」の性能とは!?

こうしたなか注目されているのが、第4四半期に販売が開始される予定の次世代半導体「ブラックウェル」。南川氏は「今までと同じことをより速く、より低消費電力でできるのが『ブラックウェル』。今の(GPUの)H100と比べるとパフォーマンスは20倍や30倍と言われている。同時に消費電力も10分の1にできる。かなり先端的な技術を盛り込んだ新しい世代のチップになる。軽自動車がスポーツカーになるというぐらいの大きな差にはなる」という。

次世代半導体「ブラックウェル」については出荷が遅れるのではとの懸念が広がっているが、11月20日の決算発表でフアンCEOは「ブラックウェルの生産はフル回転で進んでいる。今四半期のブラックウェルの出荷は事前の見込みを上回る予定だ」

エヌビディアの勢いはまだまだ続きそうだ。

独り勝ちの「エヌビディア」次世代半導体を生産・出荷へ

エヌビディアが発表した8月〜10月期の決算は、売上高が前年同時期の1.9倍となる、350億8200万ドル、日本円で5兆4026億円だった。純利益は2.1倍の193億900万ドル、約3兆円で、売上高・純利益ともに過去最高を更新した。

――売上利益ともに1年前と比べて「倍ゲーム」になっている。この1年前は既にもう「倍々ゲーム」に入っていて、普通は1年たてば前年同月比は落ちるが未だに続いている。しかもすごいところは、普通の企業の決算だと売上高と利益は左右でスケールが違うがエヌビディアは同じ。売上高の半分が利益。こんなことがあっていいのか。

早稲田大学ビジネススクール 教授 入山章栄氏:
3か月で3兆円の利益。とんでもないが、そのぐらい今、世界はエヌビディアのチップが欲しい。だからどんなに価格がつり上がっても買う。グーグルもテスラもみんなエヌビディアのチップを買っているという状態。エヌビディアにしかできない。なぜかというとエヌビディアというよりも「生成AI」の時代に転換したというのが大きい。

今までは比較的グーグルやアップルなどプラットフォーマーの時代だったが、今、主役がAIになってきた。特に2023年から出てきたChatGPTなど「生成AI」によってこれは世の中を変えるという点でもAIの需要が高まっている。ただこの生成AIは非常に複雑で様々な学習をさせないといけない。

エヌビディアのGPUの特徴は「並列処理」ができる。それがすごく強いのでとにかく今、エヌビディアの半導体を使わざるを得ないという状態になっている。来期の売上高(見通し)も375億ドルで、市場予想を上回る売り上げ予想を出した。その目玉になっているのが「ブラックウェル」。

次世代半導体「ブラックウェル」は生成AIに特化した半導体で、前世代と比べて最大30倍のパフォーマンスがあるだけではなく、消費電力は最大25分の1に削減されるとしている。価格は500万円から600万円で、第4四半期に出荷開始する予定だ。

今年、株価はどんどん上がって、2年間で10倍にもなっており、エヌビディアの時価総額が今年ついに世界首位に立った。2024年1月時点のエヌビディアの時価総額は世界6位だったが、現在はアップルやマイクロソフトを抜いて世界1位の約3兆6000億ドル、日本円にして、550兆円ほどとなっている。

――わずか11か月。1年にも満たないのに、企業の価値が3倍以上になった。世界の時価総額というとアップル・マイクロソフトだったが、時代の主役がエヌビディアに変わったということを意味してるのか。

早稲田大学ビジネススクール 教授 入山章栄氏:
もちろんアップルもマイクロソフトもこれからも強いとは思うが、ポイントは「生成AI」。アップルもマイクロソフトもAIはやっていてビッグチャンスだが、AIは半導体がないと動かない。今のAIがものすごく高度になっているからこそ、それに対応できる半導体を作れるのがエヌビディアしかないという状態。結果「エヌビディア一強」になっている。

――1つの転換点を迎えるということなのか。

早稲田大学ビジネススクール 教授 入山章栄氏:
「これから第2次デジタル競争の時代だ」という話をよくする。今まで第1次というのは日本企業も負けた。ただそんなに大したところで負けていない。スマートフォンという新しいデバイスが出てきた。その中が、すっからかんのホワイトスペースだったので、「プラットフォーマー」が、ネットワーク効果で「ワーッ」と取って代わった。しかしこの時代も飽和状態でだんだん終わりに近づいている。

例えばフェイスブックは厳しくなってきたので「メタバース」に行っている。なので、この時代が終了しだすと、次は何の時代かというと、IoTの時代。「Internet of Things」といって、ありとあらゆる物にデジタルがつく、例えば着ているこのジャケットに付くかもしれないし、機械に付くかもしれない。一番分かりやすいのが自動車の自動走行。そういうものにデジタルがつく。スマホの数は1人1個だとすると80億しかないが、ものは何千億とある。そこにデジタルとネットが付く時代なので、実は「もの作り」が強くないと勝てない。なので、日本の製造業もチャンスがあるかもしれないし、ものに半導体が入っていく時代。そうすると「世界中のものにエヌビディアのチップが入っていくだろう」と考える。

日本に「勝機」はあるのか? 米半導体「エヌビディア」 日本企業との連携は!?

――フアンCEOが、いくつか示唆に富むことを言っている。実は日本にはそういう世界トップクラスの技術があり、しかもロボティックスの領域が得意だからAIの国になれると。
GAFAの時代、日本は負け組になったが、今度AIと融合したIoTやロボティクスの時代が来ると日本にチャンスがあるのか。

早稲田大学ビジネススクール 教授 入山章栄氏:
実は大いにある。フアン氏はお世辞で言っていないと思う。今まではバーチャル空間の中、スマホの中だけでいろんなビジネスが行われてきたが、これからは「リアル」と「デジタル」の融合だ。それが今までなかなかできなかったが、生成AIが出てきたことで「リアル」と「デジタル」の融合ができるようになった。

日本は「リアル」の製造業が強い。なので日本の製造業がうまく「デジタル」と組み合わせることができれば、世界に飛躍してまた天下を取るぐらいにまでいける可能性がないわけではない。実際、勝ち出している会社だと、コマツの「スマートコンストラクション」(建設現場のデータをICT・情報通信技術でつなぎ、現場の状況を「見える化」するソリューション)はまさにデジタルと製造業の融合だ。あと工作機械で「DMG森精機」という会社があるが、「リアル」と「デジタル」を融合して、もう世界で勝ち出している。だから日本のチャンスは大いにあると思う。

――フアン氏も言っているが、間違っても日本はITソフトウェアの世界で戦おうとは考えない方がいい、GAFAには今更勝てないから、新しい勝ち口をどうやって見つけていくのかということか。

早稲田大学ビジネススクール 教授 入山章栄氏:
それが「リアル」と「デジタル」の融合にあるので、リアルの製造業に強い日本の経営が頑張れば、また世界を取れるチャンスが出てきているということだと思う。

(BS-TBS『Bizスクエア』 11月23日放送より)

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