「103万円の壁」見直しで正規雇用からパートへの転向組が激増中!?

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2024年11月27日 07:40  週プレNEWS

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「103万円の壁」の見直しを政策に掲げ、先の衆院選で議席を4倍に伸ばした国民民主党の玉木代表


11月22日、物価高などへの総合経済対策を決める政府の臨時閣議で、「103万円の壁」について「来年度の税制改正の中で議論し引き上げる」と明記された。所得税が課税されるボーダーラインの「103万円」を押し上げることで、アルバイト学生らの「働き控え」がなくなるほか、会社員も控除が増えて手取りが多くなる。

【写真】育児と仕事を両立する女性

「103万の壁」を巡り、SNSでは2ちゃんねる創設者のひろゆき氏と立憲民主党の米山隆一議員が"場外乱闘"を繰り広げるなど連日話題に事欠かない。一方、日々仕事に家事・育児と追い立てられる正社員のママたちからは、「103万以下の収入だとさすがに少ないけど、上限を上げてくれるなら、もうフルタイムで働かずにパートタイムがいい...」との声も上がる。近年はスキマバイトアプリ「タイミー」などの浸透もあり、「103万円の壁」の見直しがパートタイムでの働きを後押しするかもしれない。

■改革かポピュリズムか

衆院選で7議席から28議席に躍進した国民民主党。その代表である玉木雄一郎氏が連日メディアに出演し、話題をさらっているのが「103万円の壁」の見直しだ。

「103万円の壁」とは、年収が基礎控除の48万円と給与所得控除の55万円の合計103万円を超えると、超えた分に所得税が課税されることから、パートタイムで働く人たちが年末近くになって「働きたくても働けない」状態となり、雇用側も年末の繁忙期に人手不足で頭を悩ませる事態に陥ることだ。

そもそもボーダーラインとなっているこの「103万円」という額は1995年から変わっておらず、玉木代表はそこに目を付けて衆院選で訴え、さらに4倍に議席を増やしたことを追い風に、「当時に比べて最低賃金が1.73倍になっているのに30年近く『103万円』のままなのはおかしい。『103万円』も1.73倍にして『178万円』に押し上げるべきだ」と自公政権に迫っている。

一方で、批判もある。立憲民主党の米山隆一議員は、国民民主党のこうした政策について11月3日のXで、減税分を国債で調達すれば「インフレ・円安・金利高で国民は減税以上に苦しむ事になります。ポピュリズムの極みです」と投稿している。

■非正規雇用の増加につながる可能性も

「103万以下で働くとなると月8万円程度になって、住宅ローンの支払いなどを考えるとさすがに収入が少ない。しかし、この103万円の上限を上げてくれるなら、フルタイムではなく時間に余裕を持てるパートタイムがいい...」

こう話すのは、横浜市在住の坂東玲子さん(仮名)。正社員として働く42歳、2児のママだ。都内の商材メーカーに片道1時間かけて毎日通う。家族は、小学5年生と2年生の男児2人に、銀行員の夫の共働き世帯。長男は中学受験を控えており、週3回の塾の月謝は約6万円。ペアローンで購入した5000万円の新築マンションの坂東さん負担分は2000万円で、月10万円程度の支払いがある。


「毎朝5時半に起きて、朝ごはんや子どもたちを学校へ行かせる準備をして、7時半には電車に飛び乗っています。17時半の定時に退社できても、家に着くのは19時過ぎ。そこから夕飯の準備、下の子の勉強のチェック、食器洗い、洗濯など息つく間もなく就寝となり、また朝を迎える。お金ではなく時間に全く余裕がない状況で、何のために働いているか分からなくなります」(坂東さん)

銀行員の夫の年収は約1000万円。家事にも協力的だが帰りは遅く、家事・育児はどうしても坂東さんに負担がかかる。

「塾代や今後の学費、住宅ローンを考えると夫の給料だけでは厳しいので、自分も正社員として頑張ってきました。でも、日々の時間に余裕がなく、40歳を過ぎてからは体調不良の時も増えてきました。

そのため、自宅近くでパートタイムがいいとずっと思っていましたが、やはり『103万円』がネックで...。なので、『103万円の壁』を破ってくれたら正社員を辞めて、パートで月12〜13万円ぐらい稼げたらいいと思っています」(坂東さん)

■日雇いアプリも後押し

一方、一足先に正社員を辞め、パートタイムに軸足を移したのが、川崎市在住で39歳の平地佐紀さん(仮名)だ。小学1年の女児と会社員の夫と3人暮らしの共稼ぎ世帯だったが、坂東さんと同様、時間的なゆとりがないフルタイムでの働き方に限界を感じ、いまは駅ビルにあるスーパーで週3日は固定、それ以外はスポットワーク仲介アプリの「タイミー」を使って働いている。

「最近はどこも時給が高くなって、103万円のボーダーラインには結構すぐに到達しちゃいます。そこで、固定のパート先での勤務時間をある程度抑えて、あとはタイミーを使って自分にとって都合のいい日時、場所、時給を自由に選び、103万円になるかならないかの調整をしています。上限を上げてくれるのはもちろん歓迎です。そしたら、タイミーでのアルバイトをもっと増やそうかなって思っています」(平地さん)

世間一般で共働き世帯は増えているようなイメージだが、厚生労働白書(2024年版)によると、1985年から2021年で妻がフルタイム労働者(週35時間以上就業)の世帯数は400万〜500万世帯と横ばいだ。増えているのは、妻がパートタイム労働者(週35時間未満就業)の世帯数で、約200万世帯から約700万世帯の3.5倍になっている。

「103万円の壁」の見直しは、こうしたパートタイム労働者をさらに増やし、正規雇用の拡大を目指すこれまでの政策に逆行する可能性もある。しかしそれは同時に、働き方の多様化の促進と捉えることもできそうだ。

文/山本優希 写真/ 玉木雄一郎氏Xアカウント photo-ac.com

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