松屋銀座が、新たなオムニチャネルプラットフォーム「マツヤギンザドットコム(matsuyaginza.com)」の運用を開始した。国内の百貨店で初めて免税購入機能を備えることで、既存顧客の利便性の向上と店頭混雑暖和による接客機会の増加を目指す。
松屋銀座は、2024年上期で過去最高の632億円を売り上げを記録。なかでもインバウンドの存在感は年々高まっており、同期の免税売り上げは昨年同期比で25%増と大きく拡大したものの、訪日外国人客数の増加で店頭での行列や混雑が常態化しており、日本人客への接客機会が失われているという課題があったという。
松屋は以前から、ECサイト「松屋オンラインストア」を展開していたが、デジタル強化のため2024年1月に会員制オンラインブティック「ミレポルテ(MILLEPORTE)」を展開するB4F社からEC事業を譲受。今回新たにEC事業運営会社としてマツヤギンザドットコムを設立して、本体の松屋と一体で運営を行う。
マツヤギンザドットコムでは、日本に居住する顧客はオンラインで注文した商品の受け取り方法を、自宅への配送か、松屋銀座4階の専用ピックアップカウンターでの受け取りかを選ぶことができる。訪日外国人は、注文した商品をピックアップカウンターで決済して受け取る際に、メールとパスポートを提示することで免税手続きが行え、別途免税カウンターに赴く必要がなくなる。さらに、従来は現金のみだった免税還付をキャッシュレスで行うことで利便性を高めている。
現在は、「プラダ(PRADA)」「ミュウミュウ(miu miu)」「ロジェ ヴィヴィエ(Roger Vivier)」など約50ブランドを展開しており、そのなかには「セルジオ ロッシ(Sergio Rossi)」や「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」など、松屋銀座で取り扱っていないブランドも販売している。ブランドの在庫とマツヤギンザドットコムの在庫を統合的に管理する独自の仕組みを採用しており、顧客は在庫状況に制限されることなく商品を注文することが可能になるという。
古屋毅彦 松屋代表取締役社長は今回の運用開始について、「オムニチャンネルという言葉が10年ぐらい前に騒がれたが、松屋はその波に上手く乗れなかった。2015年にベンチャー企業と組んでオンライン予約受け取りサービスを始めたものの、軌道に乗らず2年でギブアップした。当時はスマートフォンの普及率が50%くらいだったが、現在はほとんどの人がスマートフォンなどを通じてウェブと繋がる環境が整っており、訪日外国人の多くは旅行前から店舗の情報を収集している。我々は後発だからこそ、いい仕組みが作れたと思う」とコメントした。サービスを通じて新規顧客のIDを取得することで、富裕層の関係性を深耕するとともに、訪日外国人のリピーターの促進と、国内地方客および若年層の新規獲得を目指すという。マツヤギンザドットコムは、2025年度は50億円、2029年度は200億円の売り上げを目標としている。
マツヤギンザドットコムの開始を記念して、11月27日から12月3日まで店舗とオンラインでイベントを実施している。スマートフォンで店頭に掲示しているQRコードを読み込んで新規会員登録をすると、キーホルダーや「とらや」のようかんなどが当たるガチャができるほか、スマートフォンとウィンドウのディスプレイを連動させたキャンペーンや、オンラインゲームの提供も行っている。