WBSCプレミア12、第3回大会が終わりました。
まずはチャイニーズ・タイペイの選手、球団関係者、そしてファンのみなさま、優勝おめでとうございます。
私は中継内のキャスターとして携わった同大会でしたが、決勝の日は担当ではなかったため、試合中は東京ドームを訪れたファンの方を中心にお話を聞いて回っていました。そのなかで、台湾から応援に来たというあるファンの言葉が強く印象に残っています。
「"台湾"の旗を振れてよかったです。日本のみなさんに感謝しています」
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決勝戦で3安打を放ち、見事MVPに輝いたキャプテンのチェン・ジェシェン選手が、5回にホームランを放ってダイヤモンドを駆ける際、胸元を手で囲むポーズを見せたことが話題になりました。日本代表ユニフォームの胸元には「JAPAN」とあるけれど、彼らの胸元に「TAIWAN」の文字はありません。
東京ドームに掲げられたのも、優勝の瞬間にビジョンに映し出されたのも、あのトリコロールの「青天白日旗」ではありませんでした。けれど応援席で自由に旗を振り、それが当たり前のように受け入れられていたあの空間は、ファンの方にとってかけがえのないものだったそう。
ファンの熱気や、優勝後の選手たちの涙を目の当たりにして、"台湾"として"台湾"を誇れる瞬間を渇望していたのだと感じるとともに、祝福の思いが強くなるばかりでした。本当におめでとうございます。
そんな台湾に惜しくも決勝戦で敗れ、悔しさのなかで幕を閉じた今大会の日本代表。宮崎でのキャンプに始まった今回のメンバーは、代表初選出の選手が多くいたり、若手が中心だったりと、始めはどこか控えめな雰囲気でしたが、日を追うごとにチームに一体感が生まれていくのを感じていました。最後は敗れてしまったけれど、本当に強かったですよね。
初選出だったロッテの佐藤都志也選手は、「日本代表の重圧を感じる」としながらも、「そこを打破できた感覚が自身にとって大きな財産だ」と話していました。ピンチの連続のなかで、こういう時にキャッチャーはどうしたらいいのだろう、ピッチャーにどんな声をかけたらいいのだろう、試合に出なくても何か力になれることはないかと、ずっと考えていたのだとか。
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そんな佐藤選手とキューバ戦でバッテリーを組んだ楽天の早川隆久投手は、佐藤選手の1学年下にあたるわけですが、「試合内外で佐藤選手がコミュニケーションもリードしてくれた」と話していました。シーズン中はライバルでも、多くのことを共有していくなかで、同じく優勝を目指すチームメイトとして結束力を強めていく。言葉にするのは簡単だけれど、試合を追うごとにそれを体現していくのを感じていました。
先述のとおり、今回は番組キャスターとして関わることができ、私の人生においても大きな財産となる貴重な経験ができました。取材を重ねるごとに思い入れが強くなっていっただけに、このチームの解散に寂しさを感じます。
来シーズンも活躍を追っていきたい選手がぐっと増えたわけですが、スワローズ以外の選手にここまで深く入れ込んで見るのは初めてかも。これもまた、国際大会のよさでもありますね。
何より、長いシーズンを終えたあとにこの時期まで戦い抜いた選手のみなさんには、尊敬の念が尽きません。本当にお疲れさまでした。熱戦をありがとうございました。
さて、このプレミア12という大会。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催しており、出場チームは同団体が定める世界ランキングをもとに決まっています。MLBの40人枠に入っている選手は出場することができないため、マイナーリーグの制度を除き、必然的に「国内リーグ最強決定戦」のような位置づけになっていると思うのですが、それゆえ各国の若手有望株が見られることも魅力であり、この大会の価値だと感じています。
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今大会でも、決勝戦で登板したリン・ユーミン投手や、オーストラリア代表でMLBドラフト全体1位指名を受けたバザーナ選手、アメリカ代表のショー選手など、数年後にはMLBの舞台で羽ばたいていそうな選手のプレーが見られたことも嬉しいですよね。
第4回大会は2027年に予定されており、出場チームも16ヶ国に拡大されることになっています。「プレミア16」は世界の野球を底上げするという意味でも、大きな役割を担っていくのではないでしょうか。
熱い戦いを期待しつつ、侍ジャパンが再びトロフィーを掲げる瞬間を夢見ながら、今日は筆をおきたいと思います。それではまた!
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作