100回目の伝統校対決で、新時代の1年生SOが火花を散らす。ラグビー関東大学対抗戦の「早明戦」が12月1日、東京・国立競技場で行われる。
29日、両校がメンバーを発表。6連勝中で6年ぶり優勝を目指す早大は先発に服部亮太(1年=佐賀工)を起用し、東京・上井草で連係を確かめた。第1回の定期戦は1923年(大12)で、通算55勝42敗2分け。17年ぶりの全勝優勝で、節目に花を添える。5勝1敗の明大は東京・八幡山で練習し、萩井耀司(1年=桐蔭学園)を先発に抜てきした。優勝の可能性を残す2校のルーキーが新たな歴史を刻む。
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練習場に貼られた「緊張」「明治」の文字を横目に、早大の服部が2日前練習を終えた。5試合連続先発となり「初めての早明戦。個人的にも万全、チームもまとまってきた。あまり気負わず、舞台を楽しめたらいいと思います」とほほ笑んだ。対面は佐賀工3年時の高校日本代表候補合宿で、同部屋となった明大SO萩井。メンバー発表を見て「まさかの耀司」と驚き「スタメンやん」とLINEを入れた。気心知れた仲で「僕が得意なのはキック。対策してくると思うので、もっと考えながらパスやキックをする」と見据えた。
1年生SOは全勝街道の原動力だ。大田尾竜彦監督、15年W杯日本代表の五郎丸歩氏と同じ高校から早大の門をたたいた。観衆がどよめく長距離キックだけでなく、ランでトライを取り切る力もある。日本代表の主力に定着したFB矢崎ら豪華BKを操る立場で、楽しむ気持ちを持ちながら「軽いプレーを絶対にしてはいけない」と誓ってきた。
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初めての早明戦は、7点差以内の敗戦でも自力での対抗戦制覇が決まる。17年前の07年、最後の全勝優勝は主将の権丈太郎氏、副将の五郎丸氏や1年生SO山中亮平(神戸)らが躍動した。「雪の早明戦」など数々の名勝負を生んだ伝統の一戦を、服部が攻守の中心として動かす立場になる。
「明治も、優勝するか2位か3位か、というところで死に物狂いで来る。気を抜かずに前半の最初から、後半の最後まで戦いたい」
全勝優勝も、ライバルからの勝利も譲れない、第100回になる。【松本航】
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のびのび、を貫く。「100回目」の重みを問われた萩井は即答した。「ヤバいっす。本当にヤバいっす」。9月の開幕青学大戦以来の司令塔での先発。緊張感を漂わせつつ、自然体を強調した。「考えすぎたら縮こまっちゃう。試合の時は何も考えず、自分のやりたいことだけ考えて。大きい舞台でも、いつも通りできるんじゃないかな」。19歳らしく初々しく笑った。
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今年1月、まだ18歳の高校3年生だった。桐蔭学園の10番として全国高校選手権を制覇。花園での歓喜から1年たたずして、国立に立つ。それも1年目にして節目の歴史的一番。かつてテレビで見ていた舞台を前に「あまり気にしないようにしている。考えすぎちゃうタイプなので。楽に受け取って」と平常心を保つ。
起用される決め手となった転機は24日の関東大学ジュニア選手権決勝。帝京大戦にSOで先発、勝利に導いた。神鳥裕之監督(50)から「圧巻のパフォーマンス。いいキックを蹴れる」と高評価を受けた。長短のパスで相手を動かし続け、監督に「直近の試合で活躍した選手をピックアップしたい。チームにエナジーを取り込みたい」と決断させた。先発を知らされたのは3日前の朝。「本当に僕でいいんですか?」と戸惑いも「選ばれたからにはやるしかない」と切り替えた。
くしくも、相手の同ポジションに1年生が待ち構える。「服部亮太のロングキックとスピードに乗ったアタックは警戒」と言いこそしたが「自分も自信がある」と目をギラつかせた。ルーキー対決を制し、第100回の早明戦勝利校に「明治」を刻む。【飯岡大暉】
○…大外でも1年生対決が実現する。早大の右WTB田中健は3日の帝京大戦で5トライの大暴れ。明大のロックとして大学日本一に輝いたプロレスラー鈴木健三さんが「健想」の名の由来で「ビッグマッチの方が楽しい」と動じない。神奈川・桐蔭学園の同学年で、ともに前年度の全国高校大会優勝に輝いた選手が対面の白井。大学でCTBからWTBに転向しており「体を当て足りなくて、その分ボールをもらいたくなる」と持ち味を生かしている。
○…両監督も火花を散らした。明大は3トライ差、26点差以上で勝てば自力優勝の可能性。神鳥監督は「優勝狙いでいく」とした上で「まずは早稲田に勝つ」と宣言した。選手には「何十年後に酒を飲む時『100回目の早明戦に勝ったな』と言えるように」と語りかけた。早大の大田尾監督は「フルスロットル」とテーマに掲げ「誰が見ても『早稲田らしさを体現してくれたよね』と言われるような試合をしたい」と誓った。
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◆早明戦 1923年(大12)12月24日に第1回が開催され、今回で100回目を迎える伝統の対抗戦。毎年12月の第1日曜日に行われる。82年に有料入場券発行枚数6万6999枚を記録する人気カードとなった。87年「雪の早明戦」など名勝負も多数。通算成績は早大55勝、明大42勝、2分け。73年から13年まで旧国立で開催され、改修のため14〜21年は秩父宮ラグビー場を使用。22年から新国立。直近は明大の2連勝。
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