第2次トランプ政権で高まる中東リスク 日本企業に求められる安全対策とは

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2024年11月30日 07:40  まいどなニュース

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トランプ氏/americanspirit(c)123RF.COM

第2次トランプ政権の発足を受け、親イスラエル・反イランの外交姿勢が再び顕著になる可能性があります。トランプ大統領は1期目にエルサレムをイスラエルの首都として認定し、イラン核合意から一方的に離脱するなど強硬な外交姿勢を貫きました。2期目もその姿勢を示すことが予想され、中東地域の緊張が続く中、日本企業にとっても無視できないリスクが浮上しています。

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第2次トランプ政権の外交方針

トランプ大統領は共和党の大勝を受けて再任され、国務長官には対イラン強硬派で知られるマルコ・ルビオ氏、安全保障担当の大統領補佐官には特殊部隊出身のマイク・ウォルツ氏が起用される見込みです。

トランプ氏は1期目でイスラエルとの関係を強化し、エルサレムを首都と認定して大使館を移転。また、イラン核合意から離脱するなど、反イラン路線を貫きました。この方針は2期目でも継続されると見られています。こうした中、イスラエルとイランの緊張がさらに高まる可能性も排除できず、日本企業の間でも懸念の声が上がっています。

日本企業の懸念

中東に進出している日本企業や取引関係を持つ企業の間では、第2次トランプ政権下でのリスクに対する懸念が広がっています。

現地進出企業の課題として、例えば、中東の「シリコンバレー」とも呼ばれるイスラエルへの進出を計画している先端技術企業は、「今年4月と10月にイランがイスラエルに向けて大量のミサイルやドローンを発射したが、第2次トランプ政権の任期中にイスラエルとイランの間でもっと激しい衝突に発生する潜在的リスクがある」との懸念を深めており、現地に配置する駐在員の数を想定より少なくするか、もしくは進出計画自体を見直すことなどを検討しています。

また、湾岸諸国に駐在員を置いている製造業もリスクに敏感です。イスラエルとイランの衝突となれば、UAEやバーレーンなど湾岸諸国にある米軍基地が軍事的被害を被る可能性も排除できず、そうなれば現地から退避することが難しくなることから、多くのメディアで情勢が悪化していると報じた場合にはその時点で日本へ退避させる、駐在員の家族は極力帯同させない、シェルター付きの住居を選定することなどを検討しています。

トランプ政権1期目の2020年1月、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が米軍の攻撃で死亡した際、中東情勢は極度に緊張が走りました。この際、日本企業は現地駐在員の安全確保に奔走しましたが、最悪の事態は回避されました。それでも派遣社員の一時帰国や事業計画の中断を余儀なくされたケースもあり、こうした教訓が再び生かされるべき局面に来ています。

企業が取るべき対策は

現時点で中東から撤退する必要性はないものの、企業としては以下のようなリスク回避策を検討しておくことが重要です。まず、駐在員の安全確保のため、紛争やテロのリスクに備え、駐在員の数をビジネスに影響が出ない範囲で極力最低限に努め、緊急時には即応できる体制を構築しておくことです。

今年4月と10月にイランがイスラエルに向けて大量のミサイルやドローンを発射した際、イスラエルに在住する外国人は自宅や周辺にあるシェルターに避難し、企業の間では駐在員の安否を確認する、同国からの退避を進める動きが見られました。そして、紛争当事国ではないヨルダンでは、イスラエルの防空システム、アイアンドームによって撃墜されたイランのミサイルやドローンの破片が首都アンマンなど各地に落下する事態が生じ、ヨルダンに滞在する駐在員に対しては自宅待機が本社から命じられました。アンマンなどはイスラエルと距離がそれほど離れていません。

さらに、イスラエルとイランの間で緊張が高まった際、カタール航空やエミレーツ航空など日本と中東を結び航空会社は、ドーハやドバイからイラン、イスラエル、ヨルダンなどを結ぶフライトを毎回のように停止にしています。今後も同様のリスクがあることから、駐在員の最少化、緊急時における即応体制の構築は平時からやっておくべきでしょう。 

また、そのために政情や市場動向を把握し、迅速に対応できるよう情報収集を日頃から徹底しておくことが重要です。基本的には日本外務省の海外安全情報をチェックするでしょうが、それは常に最新情報を網羅しているわけではありません。SNSで英語やアラビア語で「イラン、イスラエル、アラート」などと検索することで最新の情報が瞬時にアップされていることも多く、情報源の多様化が極めて重要です。

   ◇   ◇

第2次トランプ政権下の中東情勢は不透明さを増していますが、日本企業が直面するリスクは決して軽視できません。軍事的衝突や地域不安定化の可能性を踏まえ、企業ごとに実情に即したリスク管理を進めることが求められます。冷静な状況分析と柔軟な対応が、これからの中東ビジネス成功の鍵となるでしょう。

◆和田大樹(わだ・だいじゅ)外交・安全保障研究者 株式会社 Strategic Intelligence 代表取締役 CEO、一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事、清和大学講師などを兼務。研究分野としては、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者である一方、実務家として海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。

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このニュースに関するつぶやき

  • アホだな。イランが米国与党が民主か共和かで匙加減なんかするもんかね。どうもトランプ政権をキナ臭く印象づけたい人が多いね。
    • イイネ!6
    • コメント 1件

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