投手歴3年ちょっとで大学日本代表候補 仙台大の1年生左腕は「これぞ天才」という超逸材

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2024年12月03日 07:30  webスポルティーバ

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 簡単に使ってはいけない言葉だが、「天才」とはこういう選手のことを指すのだろう。

 仙台大の1年生左腕・大城海翔の投球を見て、そして本人に話を聞いたうえでそう思わずにはいられなかった。

【1年生にしてリーグMVP獲得】

 大城は1年生ながら好投手揃いの仙台大で中心投手になり、今秋の仙台六大学リーグではMVPを受賞。11月30日から実施された大学日本代表候補強化合宿にも招集されている。

 空振りを奪えるキレ味抜群のストレートに、抜けのいいカーブとチェンジアップ。さらに両コーナーを正確に突くコントロールと、大学1年生とは思えない高度な技術を持っている。

 だが、本人に聞くと「ピッチャーを始めたのは高校1年生」だという。投手歴3年ちょっとで大学日本代表候補に選出されるとは、にわかには信じられなかった。

 強化合宿に招集された19人の投手のなかで、もっとも身長が低かったのが大城だった。身長168センチ、体重74キロ。マウンドに立てば、どこにでもいそうな左投手に見える。だが、柔らかい腕の振りから放たれたストレートは、スピードガンの数字以上に速く感じる。大城は自身のストレートについて、「空振りが取れるのは武器だと思います」と語る。

 強化合宿で実戦形式のシート打撃に登板した大城は、非凡な才能の片鱗を見せた。

 打者6人と対戦して被安打1、奪三振2、与四球1。ただし、後半の3打者は2ストライクと投手有利カウントからの投球ながら、前嶋藍(亜細亜大2年)に右前打を許した。登板後、大城は自身の投球について「あまりよくなかった」と振り返った。

「自分はコントロールのピッチャーなのに、今日は真っすぐのコースへの投げ分けができなくて、逆球が多かったです。ヒットを打たれた球もコースを狙いすぎて、少し抜けて甘く入ってしまいました」

 ただし、受けた捕手の渡部海(青山学院大2年)は目を丸くしてこう証言した。

「えぐいボールでした。低めから伸びてくるような真っすぐで、『こんな球見たことない』と思いました。コントロールもいいし、すごいピッチャーになりますね」

 常廣羽也斗(現・広島)ら数々の逸材投手のボールを受け続けてきた渡部だけに、その言葉は重い。

 課題が見えた一方で、大城はこんな収穫を口にしている。

「早稲田大の伊藤さん(樹/3年)からスプリットを教えてもらって、國學院大の當山さん(渚/3年)からはカットボールを教えてもらいました。速い系の変化球が苦手なので、よかったです。當山さんは同じ沖縄出身というつながりもあって......」

【仙台大を選んだ理由】

 大城は滋賀学園の出身だが、沖縄県で生まれ育っている。北谷ボーイズで外野手としてプレーした中学時代に「県外でプレーしたい」という希望を抱き、滋賀学園に進学した。沖縄出身の大城にとって、滋賀は想像以上に寒いという誤算はあったものの、野球選手としては着実にレベルアップした。前述のとおり高校から投手に転向し、最速139キロのエースに成長。3年夏は甲子園出場こそならなかったものの、滋賀大会準優勝を経験している。

 その後、誘いのあった大学のなかから仙台大に進学している。なぜ仙台大だったのか尋ねると、大城は答えた。

「左ピッチャーの育成に自信のある大学と聞いたので」

 仙台大には坪井俊樹コーチという、投手コーチがいる。自身も社高、筑波大、ロッテとプレーした左投手だった。坪井コーチに指導を受けたなかには、ソフトバンクで活躍中の大関友久がいる。高校時代は「投手指導を受けたことがない」という大城にとって、魅力的な環境だった。

 それにしても、大城は大学入学直後からリーグ戦の先発マウンドを任されるまでの存在になっている。仙台大にはどんな魔法があるのか。大城に聞いてみると、大城は困ったような顔をして答えた。

「普通にみんな球が速いので、いろいろ聞いてやっていたら、どんどん球が速くなっていきました」

 チームメイトが語る投球理論、トレーニング知識、そのすべてが大城にとっては発見だった。そして驚くべきは、話を聞いただけですぐに体現できてしまう大城の吸収力だろう。

 今秋は明治神宮大会への出場権を争う東北地区代表決定戦・富士大戦に先発。ドラフト指名選手6人を輩出した東北きっての強豪を相手に自己最速146キロを計測するなど、6回まで無失点と快投した。だが、終盤に逆転を許し、仙台大は神宮切符を逃している。この試合で大城は自身が抱える課題を認識したという。

「富士大戦は終盤にバテてしまったので、冬の課題はまず体力ですね。あと自分は筋力がほとんどないので、今の柔軟性に筋力がついてくれば体も強くなると考えています」

 3年後には、金丸夢斗(関西大→中日1位)クラスの投手になっても不思議ではない。そんな感想を本人に伝えると、大城は「ありがとうございます」と言いつつもピンときていない様子だった。念のため「金丸投手の存在は知っていますか?」と確認すると、大城は正直に白状した。

「名前は知っています」

 大城にとって野球は「やるもの」で、「見るもの」という感覚が希薄なようだ。バッテリーを組んだ渡部は、こんなエピソードも教えてくれた。

「大城くんから『どこの大学ですか?』と聞かれたので『青学だよ』と答えたら、『青森の大学ですか?』って返されました。ちょっと変わってますけど、面白い子ですよね」

 大学日本一チームも、大学ナンバーワン左腕もよく知らない。ここまで突き抜けていれば、かえって人から愛されるものだ。また、肩書や実績にとらわれない感性だからこそ、海千山千の難敵ひしめく大学球界で力を発揮できているのかもしれない。

 好投手が集まる今回の代表合宿は、大城にとって発見の宝庫だったはずだ。大城は「人としゃべるのは苦手なんですけど」と前置きしつつ、こう続けた。

「こっそり盗み聞きでもいいので、いろんな技術を吸収していきたいですね」

 大城海翔が残りの大学生活でどんな気づきを得るのか。それは3年後のドラフト戦線を大きく左右するはずだ。

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