実は駅舎での使用が増えている明朝体。市川紗椰のお気に入りは「みなとみらい線のもの」

91

2024年12月06日 10:50  週プレNEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週プレNEWS

明朝体とゴシック体で“ダブル表示”されている

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、駅舎で使われるフォントについて語る。

 * * *

高輪ゲートウェイ駅(JR)が開業してからもうすぐ5年。いまだに駅の周辺が絶賛建設中なのはさておき、賛否(主に否)を呼んだ"キラキラ駅名"もだいぶ世間に受け入れられたように感じます。開業当時は駅名に加えて、駅舎の表示に使われていた文字のフォントも物議を醸しました。

公共の看板や標識サインは、パッと見たときの視認性が高いとされている「ゴシック体」が使われることが一般的ですが、高輪ゲートウェイ駅の表示は「明朝体」。縦と横の線の太さが均一なゴシック体に対して、文字のとめやはね、はらいの動きを縦横の線の強弱などで表現した明朝体は、遠くからは読みにくいとされています。毛筆で書いたようなディテールが施されている高輪ゲートウェイの表示には、「見づらい」「ダサい」などの意見が集まってました。しかし、かなりバッシングされた明朝体、実はほかの駅でも増えています。

代表的な例は、JR原宿駅の新駅舎。都内最古の木造駅舎として親しまれた旧原宿駅は、2020年に解体。新しく建設されたガラス張りの2階建ての駅舎は以前に比べて広くて快適だけど、おおむね無個性。よくある感じの都会の駅なのに、東口の「原宿駅」の文字は明朝体。下のサイネージにはゴシック体も採用されており、「さまざまな制約や要望の中で誕生したのかな?」と想像します。

機能性のゴシック体と雰囲気の明朝体を両方使っているからなのか、原宿駅の明朝体は好印象に受け止める声が多いようです。高輪ゲートウェイではあんなに「古い」「ダサい」と批判されたのに......無念。若い利用者が多い原宿では、明朝体が逆に新鮮に見えるのかもしれませんね。「ゲートウェイ」のカタカナ明朝体のインパクトもあるかも。ちなみにJR渋谷駅のハチ公口にも、知らない間に明朝体が採用されていますが、良くも悪くも話題になっておりません。

個人的に好きな鉄道明朝体は、みなとみらい線のもの。東急東横線と相互直通運転をしているみなとみらい線は、横浜駅から元町・中華街駅の6駅が正式な区間。その6駅のうち、4つの駅の表示板は一般的なゴシック体で書かれていて、馬車道駅と元町・中華街駅の2駅だけ明朝体。どっちも落ち着いた、高級感のある街です。優雅で大人な印象を与えるために明朝体が採用されているのかと思いますが、さりげなくてすてき。こだわりを感じます。

ちなみに「明朝体」というネーミングは、文字どおり「明王朝の書体」に由来しているものの、実は日本独自の言い方だそう。「ゴシック体」も英語ではサンセリフ体で、ゴシックとはまったく違うイメージです(英語のGothicは、ゴシックファッションやゴシック建築のような"装飾がたくさんついているもの"を表すので、もはや真逆の印象)。日本語フォントを代表するふたつの書体が、「どっちも日本語っぽくないネーミングなのに、日本独自の呼び方なんだ」とどうでもいいことに感心した市川でした。

来年の3月、高輪ゲートウェイ駅の新たな改札や複合施設「TAKANAWA GATEWAY CITY」などが完成する予定です。また明朝体が増えるのか、注目です。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。イタリア料理チェーン店「カプリチョーザ」の殴り書きみたいなカタカナフォントが好き。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

このニュースに関するつぶやき

  • 創英角ポップ体最高!←
    • イイネ!4
    • コメント 3件

つぶやき一覧へ(57件)

前日のランキングへ

ニュース設定