月曜から木曜まで不機嫌な人を描き、金曜に機嫌がよくなる様子を描いたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』第10週「人それぞれでよか」が終わりました。今週は、ナベさん(緒形直人)の機嫌がよくなりましたよ、よかったね。
おにぎりをラップに包むときは粗熱を取ってからじゃないと水分がこもって雑菌が繁殖しやすくなるそうですし、けんちん汁にサバが入っているようですがアレルギーを持っている人に対する注意喚起がありませんでした。綿密な取材でお馴染みの『おむすび』ですが、今日はまずそこらへんが大丈夫なのかなと疑問に思った次第です。
第50回、振り返りましょう。もう50回か。
■やりたいことは痛いほどわかる
防災訓練の「炊き出し隊長」としてある程度の準備をしてきた様子の米田結(橋本環奈)、事前会合に出席して、市役所職員や実行委員のみなさんの前で炊き出しの段取りを説明することになりました。
説明会の冒頭、結は炊き出し要員が不足しているので、商店街側から人員を提供してほしいと申し出ます。「みんな手一杯」「ナベさんが空いてるやろ」「ナベはあかん」みたいなやりとりがあって、結が「人それぞれでよか」という今週のテーマに「野菜もそれぞれだから」という例え話をこじつけて丸く収めるわけですが、それはちょっと置いといて。
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説明会の直前、結がこの会への参加を拒もうとする描写があります。バタバタとリビングにやってきた結パパ(北村有起哉)が「これから防災訓練の打ち合わせに一緒に行くぞ」と告げると、結は「えっ? うちも? もうヘトヘトなのに〜」と困り顔。ママ(麻生久美子)に「がんばって、隊長さん」と促され、ようやく重い腰を上げたのでした。
この人、説明会がなかったら、いつ人員不足についてのお願いをするつもりだったんでしょう。人が足りないまま当日を迎えるつもりだったのかな。実際には人員が不足していることは問題ではなく、ナベさんの話につなげるためのエクスキューズなわけですが、じゃあなんで説明会への参加を躊躇するシーンが必要なのか。
たぶんね、必要ないんですよね。炊き出しのメニューを考え始める際にもサッチンに「献立考えて」と言われて、結が「え、うちが?」と応じるシーンがありましたが、これ値打ちこいてるだけなんだ。主人公が物語を進めることは当たり前なんですが、結という人が物語の進行に貢献することそのものに、必要以上に価値を生もうとしている。
ナベさんがおむすび食うシーンも、筋の通りならナベがみんなのところにやってきて、パン屋がおむすびを渡すほうが自然なんです。これはパン屋とナベのいざこざにおける解決なわけですから。
今回のラストにアユ(仲里依紗)のセリフとして「結は名前の通り人と人とを結ぶね」みたいなことを言わせていますが、このニュアンスにつながってくる物語の思想の部分の話です。『おむすび』は基本的に米田結という人を「ありがたい人」として描こうとしている。そこらへんの思想が合うか合わないかが、これだけの賛否を呼んでいる原因なのかなと感じたりしました。
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で、野菜のエピソードのこじつけに話を戻します。結は「野菜の成長速度は野菜それぞれだから、人の心の復興も人それぞれでいい」と話し、これに心を打たれたパン屋が涙を流すというシーンです。
その意図は痛いほどわかる。思いついちゃったんだよな、野菜の成長速度に例えたいと思っちゃったんだろうな。
こういう例え話をする人っていますよね、よくいえば物事を網羅的にとらえて関連性を見出そうとする人、悪くいえば「うまいこと言い」です。これをやる人とやらない人の間には、実感として、大きな断絶があって、やらない人が急にやることはまずないでしょう。
これまで結という人が、そういうことをやる人だという印象は一切ありません。だから「脚本家がしゃべりだした」という感触を与えてしまうんです。性格の描写として、まず唐突。しかもその根拠が、神戸編で場当たり的に付け足された「結は野菜に詳しい」という後出し設定なので、二重の唐突感が発生してしまっている。シンプルに、脚本ヘタかよと感じます。
■「へんかきゅう……?、
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あと、スランプだった翔也(佐野勇斗)が、指に変な感じでボールが引っかかったらしく、急にシュート回転がかかってしまったところで「へんかきゅう……?」とか言ってましたね。変化球を知らないのか。このへんは物語の思想とは関係なく、ああ……と思いました。
(文=どらまっ子AKIちゃん)