次に売れるクルマは何か? どん底の日産が復活するための道筋

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2024年12月07日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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今後、どのようなクルマが売れるのか

 案の定と言うべきか、EVの販売は世界中で伸び悩んでいる。EVはエネルギー効率に優れ、走行中は無公害という利点がアピールされ、先進国では補助金を投入して普及を促進してきた。だが、それでもEVを快適に利用できる環境のユーザーは限られており、誰もが想像通りの快適なEVライフを送れるとは言い難い状況だ。


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 急速充電の料金も上昇し、10年前と比べるとコスト面ではメリットを感じにくくなっている。そのため、積極的にEVに買い換えようというユーザーは減っている。


 欧州メーカーのもくろみは外れてしまった。それだけでなく、ユーザーはハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を求めており、現在EVに乗っているユーザーも、次回の購入時にもEVを選ぶという人はそれほど多くないようだ。あるアンケートによれば、それは4割程度であった。つまりEVオーナーが今後増えていくのは、なかなか難しい。


 EVの先駆者でありながら、日産の業績が大低迷していることも、これが影響している。EV市場が順調に拡大していれば、中国メーカーの攻勢があっても、他のメーカーもEVで収益を上げられるはずだからだ。


 乗用車の登録台数から日本国内での需要を考えると、残価設定クレジットの乱発で売れているアルファード/ヴェルファイア、営業用のコンパクトカーからSUVまでを含むヤリスやカローラなどを除けば、ミニバンやSUVの人気ぶりが見えてくる。


●ライトミニバンの根強い需要が目立つ


 プリウスはハイブリッドカーの祖であるだけでなく、現在はスポーティーな近未来のクルマというイメージを押し出している。開発陣の狙いは見事に的中したようで、今も存在感を示している。


 日産のセレナやトヨタのノア/ヴォクシーといったMサイズミニバンが最も使い勝手のいいクルマと感じているユーザーも多いようだ。ホンダがステップワゴンで健闘するが、その他のメーカーがこのカテゴリーで手薄なのは、もはや寡占状態にあると判断しているからだろうか。


 トヨタのアクアはヤリス・ハイブリッドと食い合っている部分はあるにせよ、ノア/ヴォクシーの方が2倍の売れ行きを示しているのは、やはり駐車場の大きさと居住空間のバランスを考えると、このあたりが便利で使い勝手もいいのだろう。


 それ以上に注目すべきは、トヨタのシエンタ、ホンダのフリードといったコンパクトなミニバンのかなりの人気ぶりだ。全長4.4メートル未満で全幅1.7メートル未満というサイズながら、最大で7人乗車を可能としており、5人乗車を選べば広い荷室が手に入る。都市部のユーザーには重宝するクルマなのだろう。


 ルーミーやライズも売れているが、シエンタは単月ではヤリスを上回ることもある人気ぶりだ。やはりすごい。


●SUVの販売傾向は二極化


 SUVの人気は高いが、車種バリエーションが多いこともあって台数が分散し、車種ごとのランキングでは上位に上がってこないようだ。ライズの次に売れているSUVが、最も高価なランドクルーザーというのも販売傾向の二極化を感じさせる。つまり残価設定ローンを利用したり、経済的に余裕があったりするユーザーはランクルを好んでいる。それは相変わらずクルマをステータスとし、ヒエラルキーを構築したいと考えているのかもしれない。


 一方、ヤリスクロスやカローラクロス、クラウンスポーツなどの正確な販売台数は不明だが、それなりの数が売れているのは確かだ。これらを含めると、50位中23台がSUVである。SUVライクなグレードのあるスバルのレヴォーグや、三菱のデリカD:5などSUVライクなミニバンも含めると半分はSUVと言ってもいい。


 ちなみに日産は50位まで広げてもエクストレイルとキックスが入っているだけで、わずか4車種しか人気のある車種がないことが分かる。


 日産は実質的にノートとセレナという2枚看板だけで勝負している状況であるため、この2台がランキングに入っているのは当然だが、トヨタとホンダ以外で20位以内に入っているのはこの日産2台とスズキのソリオだけといった状況なのだ。トヨタ以外は、ホンダしか善戦できていない状況であることがよく分かる。


 軽自動車の比率が増えている中、普通車だけで比べても分からない、という意見もありそうだが、軽自動車は独自のカテゴリーであり、普通車と比べることはそれこそ意味がない。


●日産の何が問題なのか。今後は?


 日産の何がいけなかったのかというと、技術力や開発リソースを一部の車種に絞り込みすぎたことも大きな要因として挙げられる。EVや独自の電動パワートレイン「e-POWER」を幅広い車種に展開せず、マーチやエルグランドなどをほったらかしにしてしまったツケが回ってきている。


 キューブキュービックなどのライトミニバン的なモデルを廃止して、セレナに集中してしまったのも問題だ。軽自動車EVのサクラとノート、セレナしか売るクルマがなく、同じくe-POWERのエクストレイルとキックスがSUVとして何とか台数を稼いでいる。


 トヨタ、ホンダに対抗できないので車種を絞り込んだのであれば、販売規模も絞り込まなくてはならない。売れ筋モデルが少ないのに工場の生産能力や販売目標を以前のまま維持しようとしてきたことが、収益の悪化を招いた原因の一つだろう。


 もっとも、日本の自動車メーカーのほとんどは、国内販売で収益を稼いでいない状況だ。北米や新興国、欧州市場でほとんどの利益を上げている。日産の業績が悪化したのも北米を中心に稼いできた市場で販売不振に陥ったからだが、これも市場のニーズを読み切れていないからに過ぎない。


 売れないクルマを多数ラインアップするのは損失を増やすだけだ。しかし日産は、企業規模に比してラインアップが乏しく、特定ユーザーにしか響かないクルマをつくり続けてきた。ここから挽回するには、相当なリストラが必要だ。人員整理ではなく、販売車種の再構築こそ、日産が再生するために必要なことだろう。


 自動車産業は100年に1度の変革を迎えているといわれるが、それだけでなく、変革のスピードも段違いに速い。各メーカーが全固体電池や自動運転など、競争分野での開発ぶりをアピールしているのも、先進性を印象付けたいからだ。日産に足りないのは判断力とスピード感ではないだろうか。


●ハイブリッドは経済性ではなく“安心”を買うもの


 HEVやPHEVは注目されているが、プリウスやノートのようなハイブリット専用車以外では、燃費の良さは車両価格の差を埋めるほどの節約にはつながらない場合が多い。


 ユーザーもそんなことは承知、というかそこまで考えていないことが多い。ユーザーがHEVを選ぶ理由は、それほど深刻ではないのだ。EVの不自由さを知っている人も知らない人も選べるのがHEVという選択肢であり、燃料価格の変動で不安になりたくない人が選ぶケースが多い。よってハイブリッド人気は、しばらく続くであろう。


 そういった意味では、現在の乗用車登録台数ランキングは大きく変動することはなさそうだ。今後、全固体電池のEVが登場しても、リセール性と充電インフラの問題が解決しなければ、一時的な人気に終わるであろう。


 今後、残念なことに日本国内の自動車市場は縮小し続ける可能性が非常に高い。それは少子高齢化、車齢(新車登録してからの年数)の延長、外国人労働者の増加という3要素により、新車がますます売れなくなっていくからだ。免許返納を迫られる高齢ドライバーに、新車を売りつけるようなアコギなまねはできない。人口減少で新車販売は縮小していく。


 それに対して外国人労働者は増えているが、待遇は非正規労働者レベルであり、新車を買うような余裕はなかなかない。そもそも日本車の品質は最高と刷り込まれているお国柄の影響もあって、多くの外国人は中古車を購入して賢く利用していくだろう。よって、新車を購入するようなユーザーは減る一方なのだ。


 そうなってくると、新たな需要はないかと模索することになるのだが、希望の光は高齢ドライバーが免許を返納しなくても運転可能なモビリティをつくることしかない。


 それは既存の自動車メーカーが担わなくてもいいビジネスだ。国内生産の減少や電動化へのシフトにより受注が減っている部品メーカーや、ベンチャーがマイクロEVを手掛けるのが正しい方向性といえるだろう。


 バスなどの公共交通機関に対し、補助金を積み増すことも大事だが、日本の機械産業を支えて新たな需要を生み出すことも、これからの日本経済を考えれば重要なことではないだろうか。


(高根英幸)



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