佐々木朗希のメジャー挑戦を受けて清水直行が提言 ポスティングやFAのシステムは「見直しが必要」

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2024年12月08日 07:30  webスポルティーバ

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清水直行インタビュー 後編

ポスティングシステムやFA制度の見直しについて

(前編:佐々木朗希がメジャーで活躍する可能性、結果を残すための課題は?>>)

 ロッテは佐々木朗希のポスティングシステムによるメジャー移籍を容認。しかし、25歳以下ではマイナー契約しか結べず、ロッテが手にする譲渡金はわずか。それを受け、システムの見直しに関する議論が起こっている。

 長らくロッテのエースとして活躍し、2018年、19年にはロッテの投手コーチも務めた清水直行氏に、ポスティングシステムに対する見解や今後の課題を聞いた。

【ロッテと佐々木だけの問題ではない】

――以前、清水さんは佐々木投手のポスティングシステムでのメジャー移籍に関して、「球団と佐々木の間で決めること。チームに貢献したからメジャーに挑戦していいとか、貢献していないから挑戦してはいけないとか、周りがとやかくいうことではない」と言われていました。その見解は変わりませんか?

清水直行(以下:清水) そうですね。基本的にそう考えていますし、今回も球団の判断と佐々木側の要望をすり合わせたうえで決着したんだなと。ただ、これだけ大きな騒動になってしまった以上は、もっと大きな視点、チームと契約するプロスポーツ選手の問題として、今後は議論していかなければいけないんじゃないかと思います。

――球団と佐々木投手だけの問題とするべきではないということですか?

清水 そうです。ポスティングシステムは1998年に調印された「日米間選手契約に関する協定」により創設されました。それまで日本のプロ野球選手は、海外フリーエージェント権(海外FA権/一軍登録日数が通算で9年)を行使することでしかMLB球団への移籍ができませんでしたが、野茂英雄さんや伊良部秀輝さんのメジャー移籍の経緯などをきっかけに、この制度が導入されることになったわけです。海外FA権を持たない日本のプロ野球選手でも、所属球団からの承認が得られればメジャーに移籍できるようになった。

 時代に合わせてそういう制度ができた歴史があるわけですし、今回も球団と佐々木だけじゃない部分にもっと目を向けなければいけないんじゃないのかなと。野球だけではなく、あらゆるスポーツにおける契約の根幹と言ってもいいような部分ですから。

【考えられる改善案は?】

――ポスティングシステムの見直しが必要な部分とは?

清水 現状では実績は関係なく、所属球団が認めさえすればポスティングは可能ですよね。認めるうえでの明確な基準がないので、「佐々木だから認められたのか?」「今後、ほかの選手も同じことができるのか?」という問題が出てきてもおかしくないです。

一方でメジャーの25歳ルール(メジャーの球団が25歳未満もしくはプロ6年目未満の海外の選手を獲得する場合、契約金や年俸の総額が制限され、入団時にマイナー契約しか結べない)があるため、選手が移籍を希望しても移籍金が抑えられてしまう問題もありますよね。それと、海外FA権を獲得するまでの期間(一軍の出場選手登録日数145日を1年と換算し、通算で9年)が長すぎると思っています。

――近年、プロ野球選手会はFA取得年数を国内、海外、大学・社会人出身、高校出身などの条件を問わず、一律で6年に短縮することを要望したりもしています。

清水 そうですね。振り返ってみれば、1993年オフにFAが初めて導入されて以来、選手会はこれまで長い時間をかけて選手の権利を主張し続け、FA権取得までの年数を少しずつ短縮してきました。約30年にわたってさまざまな改革がなされてきたわけですが、再び見直すタイミングがきているんじゃないのかなと感じます。この際、ポスティングシステムとFA権取得までの年数を併せて見直してみてもいいのかもしれません。

――NPB側は、FA権取得までの年数を短縮するのであれば、1年当たりの一軍の出場選手登録日数を現在の145日から165日に伸ばす、などの条件を提示し協議を重ねていますが難航していますね。

清水 現行のFA制度は出場選手登録日数をベースとしていますが、僕は登録日数ではなく、たとえば出場試合数をベースにしてもいいんじゃないかと。先発投手の場合はローテーションで投げた日数の合算だったり、野手と投手で計算方法が変わってもいいと思います。いずれにせよ、ある程度一軍で活躍した選手については、早い段階でFA権
を取得できるような仕組みにすることもひとつのアイディアだと思います。

 選手会が要望しているようなFA権取得年数を6年に短縮する案だったり、先ほどお話したポスティングシステムの見直しだったり、問題の改善へ向けて議論が活発化していけばいいなと思います。

【プロフィール】
清水直行(しみず・なおゆき)

1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝府中から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの中核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。

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