世界初の新型コロナウイルス感染者の発症から5年。一見、収束したように見えますが、コロナ対策の陣頭指揮に立った尾身茂さんは、新たなパンデミックの可能性を指摘しています。
かつて飛び交った「3密」や「緊急事態宣言」中国武漢市。
集団感染が確認された、市中心部の海鮮市場は今も青い塀に覆われ、中をうかがうことができません。
5年前の12月8日、武漢で世界初となる新型コロナウイルスの感染者が発症したとされ、その後、コロナは世界と日本を大きく揺るがしました。
そしていま、師走を迎え、忘年会シーズンに入った夜の街からは、賑やかな声が聞こえます。
当時のコロナ禍を振り返ると…
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女性
「人の目が気になるっていうのはありましたよね。外に出ないようにするとか」
男性
「パーテーションとかあったじゃないすか。だから人と喋れなくて、お店には行かなくなってますね」
以前はソーシャルディスタンスを保つため、席数を減らし、テーブルにはアクリル板を設置されていました。
あの頃、巷には「マスク会食」という作法を紹介する動画も。
街からは人の姿が消え、若者は学校に行けず、「3密」「夜の街」「緊急事態宣言」といった様々な言葉が飛び交い、人々は不自由な生活を余儀なくされました。
インフルエンザ・マイコプラズマ肺炎の感染増加 薬不足の問題も社会のありようを大きく変えた新型コロナ。
今ではマスクをする人も減り、以前の通勤・通学風景や街の賑わいも戻っています。
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ところが、そうした中で気になるのが、インフルエンザなどの蔓延です。
女性
「風邪ひいたりしてる人が多いかな」
女性
「インフルエンザとか、かかってる人とかいたりします」
5年経った今の状況をどう見るのか。
コロナ対策の陣頭指揮に立った尾身茂さんに聞きました。
――ここに来てインフルエンザが増えたり、マイコプラズマが拡大してたりしますけど、どういう関係があるんでしょうか?
元新型コロナ政府分科会会長 尾身茂 結核予防会理事長
「みんなが気をつけたから、いろんな感染症にかかりにくかったから、免疫力が落ちてるってのはこれは事実だと思います」
実際、人々の免疫力低下を裏付けるように、この冬、新型コロナの感染者は増加傾向。
インフルエンザや、マイコプラズマ肺炎の感染も増加。
大きな問題となっているのが「薬不足」です。
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薬剤師 小林和正さん
「咳止めは、ひと月あたり大体100人から200人分ぐらいは足りないな、というような印象です」
この薬局では1ヶ月近く待っても入荷されない薬まであるといいます。
日本社会を揺るがした新型コロナは2023年春、季節性インフルエンザと同じ5類感染症に分類されました。
マスクも個人の判断に委ねるとされ、2024年4月には治療薬などの公費支援も終了、コロナは一見収束したかに見えます。
尾身茂 理事長
「収束というか、ウイルスがなくなったわけじゃないんですね。医学的にはまだ残ってるけど、医学でゼロにすることはできないから、一定程度の段階になったら、社会を動かすところに舵を切るということが、ゴールになったということだと思います。
社会を動かさないと社会が駄目になる。そろそろ、この病気(新型コロナ)を恐ろしい病気というふうに考えなくて、『普通の生活をするぞ』『戻そう』という、これは『社会の要請』があったと思います」
社会の要請に基づいて再び始まった普通の生活。
しかし尾身さんは、未だ予断は許さないと語ります。
尾身茂 理事長
「普通の病気になったかどうかを判断するには、今の『致死率』『伝播力』ともう一つ『医療への負荷』というトータルで考えないと、この病気が普通かどうか(分からない)。
今のコロナ、ずいぶん致死率が低くなってるけども、感染伝播力は半端じゃない。しかもウイルスが変化し続けているわけです」
そうした中、新たな感染症の脅威が報じられました。
アフリカ・コンゴ民主共和国。10月以降、原因不明の病気が広がり、若者を中心に79人が死亡。
インフルエンザに似た症状が出ているとされ、病原体の特定が急がれています。
その一方で、国内では新型コロナはもとより、インフルエンザやマイコプラズマの感染症が増加しています。
そうした状況に尾身さんは…
尾身茂 理事長
「今回の新型コロナも、まだ消えてるわけじゃないですけど、人間の間で伝播が続いてますよね。
それと同時に、今までの経験からすると、新しい疾患、新しいウイルス・細菌による新たなものが出てくる可能性はあるわけですよね」
特に森林の伐採や、家畜の増加などが更なるパンデミックを引き起こす可能性があるといいます。
実際、近年、流行したSARS、MERS、新型コロナはいずれも動物由来とされているのです。
尾身茂 理事長
「みんなこれ、動物から来ているんです。基本的に全ての麻疹・結核・エイズもそうです。家畜の数がいま、圧倒的に増えてるわけです。
なぜかというと、人々のニーズに応えるためですよね。そういうことがあって、パンデミックがまた来ることは想定していた方がいい」
いつ訪れるかわからない、新たなパンデミック。
私達の備えは十分と言えるのでしょうか?