有給が残ってるけど、職場の空気として取りにくいんだよなーという人はよくいるだろう。しかし、会社の中にはアグレッシブに「有給は冠婚葬祭のときしか認めない」と言ってくるケースもあるようだ。法律的にはそれでOKなの? 難しい労働問題の法律をわかりやすく解説する林たかまさ弁護士に、重要なポイントを噛み砕いて教えてもらった。
会社から回ってきた通達に、こんな記載がありました。社員たちはキョーガク!です。
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・有給は原則として冠婚葬祭のときだけ認める
・それ以外のケースは欠勤として処理
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――裁判所さん、このルールはどうですか?
裁判所「有給とるのを妨害されてるね」
裁判所「慰謝料・・・50万円!」
(出水商事(年休等)事件:東京地裁 H27.2.18)
以下、わかりやすく解説します。
登場人物
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▼ 会社(ワインなどの輸入販売をする会社です)
▼ 従業員のX1さん(勤続14年でしたが、退職済)
▼ 従業員のX2さん (勤続10年でしたが、退職済)
有休妨害事件
―― Xさんたちは会社から、どんな仕打ちを受けたんですか?
Xさんたち「有給をとっていないのに給与明細に【残りの有給日数:ゼロ】と書かれました。この仕打ちが1年ほど続きました」
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――ひどいですね…。あとは?
Xさんたち「その仕打ちから時を経て、会社からこんな通知がありました」
==== 通知 ====
・有給休暇は年に6日とする
・原則として冠婚葬祭を理由としたときだけ認める
・それ以外のケースは欠勤として処理する
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ブチギレたXさんたちは、会社に損害賠償請求をしました。
裁判所のジャッジ
裁判所「この妨害行為は違法です。Xさんたちに50万円ずつ支払いなさい」
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会社「ちょっと待ってくださいよ。私どもの言い分を聞いてください。以下の通知ですが…」
==== 通知 ====
・有給休暇は年に6日とする
・原則として冠婚葬祭を理由としたときだけ認める
・それ以外のケースは欠勤として処理する
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会社「これは社員としての心構えを示したにすぎません。有給取得を妨害するつもりはありませんでした」
裁判所「シャラップ!」
裁判所「たしかに、私用で有給休暇をとる社員もいたし、実際にX2さんも私用で有給を2日とれてますわな」
裁判所「しかし!会社の通達という形式で文書を作成して従業員に回覧させてますよね。これをしといて、なになに?『有給取得を妨害するつもりはありませんでした』は通用しませんよ」
裁判所「あと、その通達を出したあと、X2さんが有給を申請したけど、オタク認めてないじゃん。しかも事故欠勤にして2ヶ月分の皆勤手当をカットしてるじゃん。X1さんは通院を理由とする有給しかとっておらず、5年間くらいは年2日しか有給をとれてないよね」
裁判所「ってことは、通達のせいでXさんたちが有給申請を躊躇していたことは明らかだね。なので違法な妨害と認定しました」
法律マメ知識
2つマメ知識を。
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1. 有給とるのに理由はいらない
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上司「有給とって何するんだ?」
林「はぁ?テメェに関係ねーだろ!」「モルディブに行くんだよ!」
これでOKです。有給をとる理由を説明する必要はありません。最高裁がそう言ってるからです。
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年次有給休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由(全林野白石営林署事件:最高裁 S48.3.2)
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なので「冠婚葬祭や病気のときだけ有給取得を認める!」は違法なザレゴトなんです。
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2. 会社の承諾も、いらない
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上司「有給とりたい?」「どうしよっかなぁ〜。キミの頑張りを見てから決めるよ」
林「はぁ?オメェより頑張ってるから!」
有給って、労働基準法39条の条件を満たしていれば「とりますね」でOKです。会社の承諾なんか、いりません。これもさっきの最高裁が言ってます。
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会社の承認の観念を容れる余地はない
(by 最高裁)
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■ 例外
1つ例外があります。会社が「その時期はちょっと…」と考えた時には「その日は無理だからこう言う時期にしてくれないかな?」とお願いしてくることはあります(時季変更権〈労働基準法39(5)〉)。まぁ「その日は無理」の立証レベルは相当なものが要求されますが。
もし会社から「その日は無理」と言われたら、こう切り返してみましょう。
あなた「私が有給をとることで【事業の正常な運営を妨げる】のでしょうか?(労働基準法39(5))。その日の私の労働が業務の運営にとって不可欠であり、かつ、代替要員を確保するのが困難であることについて詳細な説明をお願いします」
会社は「ウッッゼ!」と思うでしょうが、有給をとりたければ実践してみてください。
今回は以上です。これからも職場トラブルに対処するための知恵をお届けします。