生活水準は東京都心と同レベル? 専門家に聞く、タイとシンガポールの移住事情 〜後編:気になる生活費とおすすめの投資〜

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2024年12月09日 11:11  マイナビニュース

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日本と距離が近く、時差の少ない移住先として注目が集まっているのが、シンガポールとタイ。富裕層・高所得層の移住の多くは節税目的だというが、シンガポール・タイ移住のメリットやハードルは? 東南アジアの移住事情に詳しい、シンガポール在住公認会計士・税理士の相川聡志氏に聞いた。



後編では、「実際にどんな地域に日本人移住者が住んでいるのか? その家賃は?」「2ヵ国の海外不動産としての可能性は?」という点についてインタビュー。気になる東南アジアの生活費と、現役の会計士がおすすめする投資方法もご紹介。


■シンガポール生活は家賃と学費だけで年間2,300万円!?



――シンガポールに移住した日本人はどこに住んでいる人が多いのでしょうか?



シンガポールを代表するショッピングエリアである、オーチャードロードからリバーバレーにかけてのエリアに住んでいる方が多いです。ただ、近年はオーチャードロード周辺の家賃が急激に上がっているので、日本人駐在者は減っており、富裕層や高所得層が残っています。



日本人は少数ですが、セントーサ島にも富裕層が多いですね。



――シンガポールに住んだ場合、生活費は日本と比べてどう変わるのでしょうか?



最大の支出は家賃と教育費です。中心部で子どもを2人抱えて暮らすとなると、150平米ほどの物件で家賃が月110万円程度かかります。150平米というと「広い」と感じるかもしれませんが、一部屋が日本よりも大きいので、子ども2人と暮らせる部屋数を確保しようとすると、必然的にそのくらいの広さになってくるのです。



また、インターナショナルスクールの学費が年間500万円ほどなので、家賃と子ども2人分の学費だけで年間約2,300万円かかる計算になります。学費だけでなく、バス代や習い事の費用なども高いので、シンガポール生活は教育にはとにかくお金がかかりますね。



外食費も日本よりは高く、居酒屋のようなカジュアルなお店でも1人2万円は下りません。だいたい日本の1.5〜2倍くらいのイメージでしょうか。和食の場合は日本の3倍くらいかかることもあります。



車を持つのも非常にお金がかかります。車の台数を制限しているので、車を持つ権利を得るにも700万円ほどの費用がかかり、車を保有するための全部の費用を合わせると日本の5倍〜7倍します。



――特に家賃や教育関連のコストが高いようですが、それでも税金を考えるとシンガポールに住んだほうが良い暮らしができるということでしょうか?



そうですね。税金を考慮すると日本よりもプラスになるのでシンガポールに住んでいるという方が多いです。

■家賃が安く、生活の質も高いタイ



――タイの場合、シンガポールよりも生活費が抑えられるのでしょうか?



バンコク中心部で150平米の物件を借りた場合、月の家賃は30万円程度なので、家賃はシンガポールよりも圧倒的に安いです。

ただ、インターナショナルスクールはシンガポールの80%程度で年間約400万円が相場です。日本のハイクラスなインターナショナルスクールと同じくらいでしょうか。



とはいえ、日本のインターナショナルスクールは教室も校庭も狭く、施設の質があまり高くない、日本人が多いので英語力が伸びにくいといった難点があります。タイのインターナショナルスクールは文字通り多国籍なので、インターナショナルスクールの質は日本よりもタイのほうが高いといえるでしょう。



その他の支出はライフスタイル次第ですが、外食をする場合、和食なら日本と同じくらい。ローカルフードはもちろん安く、屋台なら一食150円前後です。


――タイで日本人が住んでいるエリアはどこですか?



バンコクが圧倒的に多く、バンコクでも日本人を含む外国人の富裕層は、スクンビッドエリアに集中して住んでいることが多いです。



特にファミリーは、アソーク・プロンポンからトンロー間のサミティベート病院近辺に住んでいる方が多いですね。スクンビット道路は北側が奇数、南側が偶数で、日本人学校のバスが周回する都合上、駐在ファミリーは奇数側に集中しています。インターナショナルスクールに通わせているご家庭の場合は特にこだわりはないと思います。



バンコクなら東京都心と大きく変わらない生活ができます。朝ゴルフに行って午後にはバンコクで仕事ができるので、ゴルフは東京よりもしやすく、そういった意味では日本より豊かな生活ができるのではないでしょうか。旅行の際も、LCCを含めた多数の航空会社のハブになっているバンコクを起点にさまざまな場所に気軽に行くことができます。



バンコク以外では、最近はビーチリゾートとして知られるパタヤやプーケットに住む人も増えています。個人的には、日本人学校があって、和食の店やゴルフ場も多く、バンコクにもパタヤにも近いシラチャーも移住先としておすすめです。

■シンガポール・タイの不動産投資の将来性は?



――移住を検討する人の中には現地の不動産への投資を考える方もいると思います。シンガポールやタイの不動産投資に将来性はあるのでしょうか?



シンガポールは物件価格があまりにも高いので、1〜2%程度の利回りしか期待できないでしょう。コロナ前後のように短期間で大幅な家賃上昇が起きることもありますが、すでに家賃相場が諸外国と比較しても高いので、今後の値上がりを見越してシンガポールの不動産に投資するのはおすすめできません。



タイに関してもディベロッパーによって建て方が異なりますし、管理がしっかりしていない物件も多いので、購入よりも賃貸が無難です。



その国の事情をよほどよく知らないと特定の物件に投資するのはリスクが高いので、不動産に投資したいならREITを購入したほうが良いのではないでしょうか。特定の物件が気に入って住むために買うなら別ですが「投資」という観点からすると、個人的にはシンガポールやタイの不動産に投資をするよりも、長期で見た場合の利回り実績も良いS&P500連動型のETFなどに投資したほうが、即座に現金化できる点からも不動産投資より優れていると思います。



――シンガポール・タイ移住のトレンドは今後どうなっていくでしょうか?



石破政権でも富裕層に対する増税路線は変わらないでしょうから、海外移住トレンドは今後も続くと考えます。



移住先として人気が高いのは、やはり日本との時差が少ない国です。その中でも、長期滞在ビザの取得がしやすく、政治的リスクが低い国は限られてきます。シンガポールとタイはこれらの条件にあてはまるので、今後も両国の優位性は継続するのではないでしょうか。(春奈)

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