自治体の要請を受けてヒグマを駆除した際、周辺の建物に銃弾が当たる恐れがあったとして、猟友会の男性の猟銃所持許可を取り消した北海道の処分を適法と認めた札幌高裁判決が波紋を広げている。道猟友会は11月、会員の懸念の高まりを受け、発砲する際の責任の所在などを明確化するため、事前に自治体や警察と協議するよう全ての支部に通知することを決めた。不安が払拭されない場合は、支部ごとの判断で要請に応じないことも可能としている。
訴訟は、道猟友会砂川支部長の男性(75)が原告となって提起。札幌地裁は道の処分を違法と判断したものの、札幌高裁は「現場は跳弾が起きやすい環境で、周辺にある5軒の建物に到達する危険性があった」として、男性の逆転敗訴を言い渡した。男性は「ハンター全体に影響を与える不当な判決」として上告した。
道猟友会には約5400人の会員が所属。高裁判決の影響は大きく、同会には多くの支部から「処分されるならやってられない」「処分が怖くて町中で駆除できない」など懸念の声が相次いで寄せられたという。
同会幹部によると、ハンターは自治体や警察からの要請を受け、自主的に協力する立場で駆除に参加。発砲する場所やタイミングは現場の警察官が許可を出す権限を持つが、ハンターに判断が委ねられる場合が多く、個人の責任が大きいという。そのため、同会は駆除要請が少ない冬季に、各支部と自治体、道警の3者で事前に発砲の条件や態勢について話し合うよう、全71支部に通知を出すことを決めた。
道猟友会側の懸念の高まりを受け、鈴木直道・道知事も、同会会長と共に環境省を訪れ、ハンターの不安払拭に向けた取り組みを要望。道のヒグマ対策室によると、道や市町村、猟友会などの関係者が集まる地域連絡協議会でも意見交換するなど、連携して取り組む方針という。
ヒグマの生息数が多い道東の自治体担当者は、高裁判決について「ハンターが不安に思うのは当然」と理解を示した上で、「今後もクマが出没するシーズン始めと終わりの顔合わせや振り返りなどを継続し、猟友会と良好な関係を築いていきたい」と話した。