三笘薫が所属するブライトンは一時、チャンピオンズリーグ圏内の4位まで順位を上げていた。しかし、第14節でフラムに敗れて後退した。
迎えた第15節。相手は下位のレスター。アウェー戦ながら格下である。負けられない戦いになった。フラム戦からは中2日。フラム戦でフルタイム出場を果たしていた三笘の先発出場が案じられた。アタッカーならベンチスタートが常識的だ。
だが、背番号22の姿はピッチにあった。4−2−3−1の左ウイングとして、今季14試合目のスタメン出場を飾った。
ただし、布陣は変わっていた。ブライトンは、前週のフラム戦において、純然たる4−2−3−1ではなく、3−4−2−1にも見える3バックを敷いた。森保ジャパンの3−4−2−1が左右対称であるのに対し、ファビアン・ハーツラー監督の3バックは左右非対称型。5バックになりにくい3バックと言えた。
3−4−2−1だとすれば、三笘のポジションは2シャドーの左が常識的になる。森保ジャパンではウイングバックとしてプレーするが、ブライトンでは左SBのペルビス・エストゥピニャン(エクアドル代表)が、その役を果たしていた。しかし、その位置は右ウイングバックのサイモン・アディングラ(コートジボワール代表)と比較すると低めなので、2シャドーの三笘が左ウイングに近いポジションを取り、エストゥピニャンと縦関係を築くことになれば、バランスは整う仕組みになっていた。
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それを受けてのレスター戦だった。ハーツラー監督が採用した布陣はオーソドックスな4−2−3−1だとは先述したとおりだが、結論を言ってしまえば、最終盤になって布陣をいじり、失敗した。
89分、三笘をベンチに下げ、ブラジル人CBイゴール・ジュリオを投入。正真正銘の5バックに転じた作戦がアダとなり、2−1から2−2に追いつかれることとなった。守備固めに出たにもかかわらず、守備は固まらず、失点を許した。
【定まらないブライトンの布陣】
この手の采配ミスは、監督のカリスマ性を低下させる。前戦はこの逆のパターンで敗れていた。左右非対称の3−4−2−1を4−2−3−1に変えるや、1−1から1−2とされる決勝弾、さらには1−3とされるダメ押し弾を浴びていた。采配ミスを2週続けている。前任のロベルト・デ・ゼルビ監督にはなかった問題である。
ブライトンは3バックか4バックかで揺れている。ハーツラー監督は昨季まで采配を振ったザンクトパウリ(当時ブンデスリーガ2部)では、3−4−3に近い3−4−2−1で戦っている。4−2−3−1を使うようになったのは、ブライトンに来てからだ。前任者のデ・ゼルビが4−2−3−1で戦っていたので、それに合わせようとしたのだとすれば、日本代表に就任した頃の森保一監督と境遇が似ている。
西野ジャパンまで、日本代表は10年以上、4バックをメインに戦ってきた。森保監督もそれに従ったのだが、結局3−4−2−1に原点回帰。三笘をウイングではなくウイングバックで起用している。
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ハーツラー監督は先述のように、前戦のフラム戦では3−4−2−1を変型させ、三笘を2シャドーの一角というより、ウイングに近いポジションに据えた。一方、このレスター戦では三笘を下げたあと、左右対称の5バックになりやすい3−4−2−1に変更した。今後、採用する布陣はどうなっていくのか。三笘はその影響を受ける可能性はあるのか。
三笘の話をすれば、ここ数試合、自慢の縦抜けを決めることができていない。なにより1対1の状況で仕掛ける頻度が減っている。レスター戦では、対峙する右SBジェームス・ジャスティン(イングランド代表)に1度、挑んだのみ。しかもフェイントで逆を取ることができず、ボールを奪わるハメに陥った。
フラム戦も三笘の縦抜けはゼロだった。対峙する右SBティモシー・カスターニュ(ベルギー代表)に仕掛けはしたが、抜きにかからず、右足のアウトで中央に差し込むようなパスを送っている。その数、実に3回。右足のアウトで折り返す頻度は増している。
だが、相手のディフェンス陣にとって恐いのはゴールライン際からの折り返しだ。右足のアウトがせいぜい真横からであるのに対し、こちらはマイナスだ。決定機の質で上回るのはマイナスのパス。シュートに持ち込む難易度もマイナスのほうが何倍も低い。
フラム戦の三笘は、純然たるウインガーとして臨んだわけではない。シャドーの役割を2割程度求められる、複雑な役を演じている。だがそれでもフルタイム出場を果たした。過去15戦中、スタメンから漏れたのは1度きりだ。
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レスター戦でも4人のアタッカーのなかで三笘の活躍度はけっして高いわけではなかったが、それでも後半44分までピッチに立っている。アタッカーにありがちな"俺様系"ではない。楽天家でもない。強引さに欠けるが、ミスは少ない。計算できる選手なのだ。監督がデ・ゼルビからハーツラーに代わっても、その解釈に変化はない。
だが、ドリブル&フェイントはトライすればするほど上達する。翻って、トライしなくなるほどへたになる、抜けなくなると言われる。ウイングより平均20メートル近く低い位置で構えるウイングバックとして出場する森保ジャパンでも、対峙する相手の右SBに仕掛ける機会は少ない。
注目すべきは、次戦のクリスタルパレス戦の布陣だ。三笘はどこに収まるのか。