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政府は能登半島地震などを踏まえ、災害時の避難所環境の抜本的な改善に取り組む方針を決めた。石破茂首相が掲げる防災対応強化策の一環で、指定避難所の1人当たりの面積やトイレ環境に国際基準を反映させる。避難所運営に関する自治体向けのガイドラインを年内にも改定し、基準となる数値を明示する方針。
石破首相は11月29日の所信表明演説で「避難所での生活環境を改善し災害関連死を防ぐためにも、スフィア基準を発災後早急に全ての避難所で満たすことができるよう事前防災を進める」と述べていた。
「スフィア基準」とは、国際赤十字などが災害・紛争時の避難所の面積や、トイレ、入浴施設数などの最低限の基準やプライバシー保護の理念を定めたもの。これまで国のガイドラインでは「参考にすべき国際基準」として紹介するにとどまっていた。
国内の災害時に被災者が体育館で身を寄せ合って雑魚寝する光景は、国内外の専門家から「難民キャンプより劣悪」と批判され、心身への影響が問題視されていた。
内閣府によると、今回の改定では、避難所の開設直後からスフィア基準を満たすよう数値を具体的に示す。スフィア基準では、確保すべきトイレの数を発災直後は「50人に1基」、災害発生中期は「20人に1基」とし、女性用は男性用の3倍とするよう求めている。避難所の1人当たりの最低専有面積は、2畳程度の3・5平方メートルと定めている他、入浴施設は「50人につき1カ所」としている。いずれも同じ基準をガイドラインに反映させるという。
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政府は自治体がこれらの基準を満たせるよう、トイレカーや入浴設備、簡易ベッドなどの備蓄品を導入する費用を補助する方針。2024年度補正予算案に約1000億円の地方創生交付金を計上しており、その一部を充てる。
ただ、避難所の拡充が早期に進むかは不透明だ。多くの自治体ではスペースの確保が課題になっており、災害時には想定以上の人数を収容する避難所も多い。石川県輪島市では、能登半島地震前に想定していた1人当たりの面積は1畳分ほどの1・65平方メートルだった。
1人分の面積を確保することで、避難所の収容人数が少なくなることも想定される。内閣府の担当者は「学校では、体育館以外に視聴覚室などの空き教室を使ってもらうことも考えられる」と説明。基準を満たせるよう、自治体向けの説明会も開くという。
政府はまた、災害ボランティアの支援にも乗り出す。被災地でボランティア活動する交通費を補助するため、補正予算案に約2億7500万円を盛り込んだ。NPOやサークルなどグループ単位での申請を想定しており、1団体あたり数十万円になる見込み。
交通費の補助はこれまでも要望が多かったが「ボランティアは自発的にするもので公費はそぐわない」などとして見送られてきた経緯がある。しかし、相次ぐ災害を経て専門性のある災害ボランティアも育ってきたことなどを背景に「ボランティアが自治体の代わりに公助の部分も担っている」(内閣府幹部)として補助する方針を決めたという。【木原真希】
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