「完全栄養食」BASE BREADは、第二のカロリーメイトになれるのか 成長鈍化の打開策を聞く

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2024年12月10日 06:20  ITmedia ビジネスオンライン

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「完全栄養食」の今後を聞いた(出所:ベースフード公式Webサイト)

 多くのコンビニで「完全栄養食」をうたう商品「BASE BREAD」を見かけるようになった。食品における炭水化物、たんぱく質、脂質などの表記は一般的だが、BASE BREADは亜鉛やマグネシウム、ビタミンB12といったように、栄養素の含有量を細かく表記している。


【画像】こういうのが20〜40代に受けている! BASE BREADの商品群、同じコンセプトのパスタ、総菜パンのシリーズ(計4枚)


 同製品のヒットによって、販売しているベースフード社の業績は急成長を遂げた。一方で、今期(2025年2月期)は成長が鈍化しており、コンビニ以外への販路開拓もあまり進んでいない。今後はどのように市場を開拓していくのだろうか。同社のマーケティングや小売店向けの販促担当者に方針を聞いた。


●ファブレス企業として、クラウドファンディングから始まった


 ベースフードはDeNA出身の橋本舜氏が2016年に設立した企業である。「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」をミッションとしており、売り上げの9割を占めるBASE BREADが主な商品だ。


 BASE BREADは、パッケージにパンの見た目を印刷しており、小売店ではパンやプロテインバーなどと一緒に陳列されることが多い。チャネル別では自社ECでの定期購入が大きなウェイトを占め、主な購入層は健康に気を使う20〜40代の若年層だ。


 同社は工場を持たない「ファブレス企業」として、もともとは「完全栄養パスタ」をうたう「BASE PASTA」のクラウドファンディングから始まり、2017年に「Amazon」及び自社ECでの販売も開始した。


●全国のコンビニのうち、8割で販売


 同社が注目されるきっかけとなったのは、2019年に発売したBASE BREADである。実店舗では2020年に薬局での販売を開始し、翌年からは都内のジム及び全国のコンビニでの販売も始まるなど、一般消費者の目にとまる機会が増えていった。


 「ECではまとめ買いが基本ですが『1袋だけ試したい』というニーズもあり、そこを開拓する目的でコンビニへの卸売を始めました。中でもオフィス街の方がBASE BREADのニーズに合致していると考え『ファミマ!!』で販売したのが最初です」(ベースフード担当者)


 ファミマ!!は、路面店や郊外を基本とする通常のファミリーマートと異なり、オフィス街に出店する業態だ。オフィスワーカーを主なターゲットとしており、広々としたレイアウトや開放感のあるデザインが特徴的である。ファミマ!!でBASE BREADを販売したところ反響が良く、その後はファミマの通常店、さらにセブン-イレブンやローソンへの卸売も開始した。現在では全国のコンビニの8割以上に商品を供給している。


●購入者の7割が20〜40代


 現在は「BASE BREAD」「BASE PASTA」「BASE Cookies」の3種類を提供しているが、BASE BREADが販売比率の9割を占める。年齢別では20・30・40代がそれぞれ2割以上を占め、20〜40代の合計が全体の7割弱となっている。


 主力がパンということもあり、時間帯別では朝や昼、間食のニーズが多い。シチュエーション別では、健康を意識した目的で買う消費者が多いという。


 「最も多いのはダイエット・健康目的の購入者で、44.5%を占めます。その他、食生活の改善を目的とする層が35.6%で、タイパ・時短を目的とした消費者もいらっしゃいます。『パンはカロリーが高いので控えていたが、BASE BREADなら安心して食べられる』という意見もよくお聞きしています」(担当者)


●コンビニ以外の開拓に伸び悩み中


 コンビニへの展開とともに認知度が高まり、業績は急成長。2021年2月期から2024年2月期までの業績は次の通りである。この間、実店舗への展開店舗数は数十から5万超にまで拡大した。


売上高:15.2億円→55.4億円→98.5億円→148.7億円


営業利益:▲1.5億円→▲4.5億円→▲9.7億円→▲9.0億円


チャネル別売上高(自社EC):11.9億円→38.3億円→63.0億円→90.8億円


チャネル別売上高(卸):4600万円→6.8億円→22.5億円→45.9億円


 昨今の「完全栄養食ブーム」もけん引役となっていそうだ。一方、2025年2月期は第2四半期時点で売上高が75.8億円と、成長が鈍化している。


 2024年2月期末時点と比較すると、業態別の配荷率はコンビニが8割でとどまっており、ドラッグストアは18.5%→19.2%、スーパーは2.4%→4.1%の成長にとどまる。それに伴い、ECの成長も鈍化しているようだ。コンビニ以外でなぜ苦戦しているのだろうか。


 「食品スーパーやドラッグストアは、大手3社のシェアが大きいコンビニほど寡占化が進んでいないため、開拓に時間がかかります。スーパーの場合は1社当たり、多くても数十から数百店舗で、当社の営業チームは“少数精鋭”で活動している点も影響しています」(担当者)


 有価証券報告書によると2024年2月期末時点の従業員数は128人。年々増えてはいるが、確かに大手食品メーカーのような営業活動は人数的に難しいと思われる。


●第二のカロリーメイトになれるか


 とはいえ伸びしろの大きいドラッグストアとスーパーを今後も開拓する方針だ。特に地域を限定せず、全国で営業活動を行っていく。


 「販促物を付けるほか、当社のイメージカラーである黄色のプライスカードを使ってもらうことで、店内での視認性を高める施策を行っています。また、複数種類の商品を並べることで目立つようにもしています」(担当者)


 地方ではコンビニよりもドラッグストアの方が存在感が大きく、開拓できれば認知度が高まり、主な収入源である自社ECの売り上げも伸びていくことだろう。広告宣伝では、継続してテレビCMを打ちながら、デジタル広告も強化していく方針だ。商品構成の幅も広げる。


 「ベースフードは『主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。』をミッションにしています。新商品を発売するとECの解約率が低下する効果もあり、現在はパンが主力ですが、ミッションに従って今後はカップ麺などのジャンルも開拓したいですね」(同)


 これまでは投資のため赤字が続いてきたが、今期は黒字化を目標に掲げ、来期以降も黒字を維持しつつ売り上げを伸ばす考えだ。とはいえ、完全栄養食に関する話題は以前ほど聞かれなくなり、追い風は収まったとみられる。


 栄養成分は異なるが、1983年に大塚製薬が「栄養調整食品」として発売したカロリーメイトは今や、コンビニやスーパー、ドラッグストアなどさまざまな小売店で必ずといっていいほど見かける。ベースフードも第ニのカロリーメイトのような存在になるのだろうか、今後の成長に注目が集まる。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。



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