「チェーン店の方が居心地がいい説」は本当?玉袋筋太郎が語る町中華にしかない“旨み成分”

0

2024年12月10日 16:00  女子SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

女子SPA!

玉袋筋太郎さん
 お笑いコンビ・浅草キッドの玉袋筋太郎さんがレギュラー出演する、趣ある町中華をめぐる番組『町中華で飲ろうぜ』(BS-TBS 毎週月曜よる10時)。玉袋さんは昭和文化をこよなく愛し、生粋の町中華好きとしても知られています。

“新たな人生の居場所”を探しに町中華にひとりで入ってみたくても、なんとなく躊躇してしまう人は数多くいるのではないでしょうか。

「もしかしたら頑固な店主が営んでいるかも」「町中華ならではの注文の仕方・所作があるのかも」などなど、不安を抱き、結局扉を開けない。一歩を踏み出せば、その先に素晴らしい世界が待っているのにーー。

 そこで玉袋さんに話を聞き、躊躇している人の背中を押してもらうべく改めて町中華の魅力を語っていただきました。

◆町中華の魅力は“ストーリー”

――「女子SPA!」の読者は主に30〜40代女性が多く、その世代は人生を豊かにするための“新たな居場所”を探している方も多くいると思います。

玉袋筋太郎さん(以下、玉袋):これさ、思ったんだけど、俺がガキの頃なんかは、女子は牛丼屋にはなかなかひとりでは入れなかったわけよ。だって親父の世界だから。でもそういう境界線みたいなものがなくなったのって随分前の話だよね。回転寿司屋もひとりで入っていく女の子がいたら、ひと昔前だったら“大丈夫か?”って感じだったけれども、今はもう自由。俺は町中華も同じだと思っていたんだけど、まだ“ハードルが高い”なんてあるのかな? ちょっと不思議な気持ちなんだよね。

――町中華に通う女性は増えていると思いますが、その一方でやはり躊躇している人もいるのかと。そんな人の背中を押していただけたらと思っています。

玉袋:でもさ、極論、腹減ったら行けばいいだけなんだよ。“チェーン店のほうが居心地が良い”って話もあるのかもしれないけど、チェーン店はすごいと認めた上で、チェーン店の店員は異動があるからね。で、町中華の店員には異動がねぇじゃん。てめえの暖簾で人生かけて営業してっから。

――ある意味、終の住処というか。

玉袋:そういうこと。その楽しさが全然違うんだよね。町中華はストーリーが自分の中に勝手にできあがっていくんだよ。「私とお店」っていう物語がどんどん更新されていくわけ。そういうのを欲している人なんかには、町中華はもってこいなんじゃないかと思うけどね。

◆店の佇まい、味、店主…すべて町中華の「旨み成分」

――「味のファン」から「店のファン」になっていくんですね。

玉袋:その通りだよ。店のファンになるのって面白くてさ、町中華の佇まいとか、面白いじゃん。なんでショーケースの中に入っているモンチッチがこんなに日焼けしてんのよ、とか。よくわからない沖縄土産も置いてあったりするのよ。日に焼けた食品サンプルの近くにアンパンマンの人形が置いてあったりもする。そうするとそこからプロファイリングが始まるわけ。「創業40年の老夫婦がやっているお店だからきっと孫がいるんだな」とかさ。そうやって逆算して店を見られる楽しみがあるよ。

――なるほど。

玉袋:店の佇まい、味、ご主人のファンになることだってあるしさ。そのひとつ先に進むと、必ず店にいる常連のオヤジに出会うよね。ああいう人たちをずっと見てたりするのも面白いじゃん。40歳くらいの夫婦がやっている店だと、そこには息子・娘がうろうろしていたりもする。通うことでその成長を一緒に見守れるっていうね。そういうのがすべて町中華の「旨み成分」になっているのよ。

――物語が更新されていくのをリアルタイムで見届けられるってことですね。

玉袋:そうそう。それは楽しいよ。

◆通いながら自分も一緒に成長していく

――番組ではお客さんや店員さんとの触れ合いが魅力的に描かれています。そういったことが全国の町中華で起きていると。

玉袋:もちろん味が一番だと思うんだけど、俺はどうしてもそうじゃないところから入っちゃうんだよ。でもそれって面白いわけ。俺のばあちゃんなんかもそんな性格だから、どこの店に行っても、思い出になるように、箸袋を持って帰ってきていたんだよ。なんてことはないんだけど、そういうのが積み重なるだけで、その道のコレクターになれるわけじゃん。なんかそういう人生もいいじゃない。

例えばさ、『孤独のグルメ』の井之頭五郎も店に入ったら勝手に物語を感じ取ったりする。そんなふうに視点を変えれば、いくらでも女性読者の皆さんもストーリーを楽しめるわけ。別に俺にレクチャーされることなんて何もないと思うけど、そういう部分がやっぱり面白いんだよね。

――なるほど。

玉袋:自分も通っている内に歳を重ねていくからね。いつの日か、“そんなに食えなくなっちゃったなー”なんて思う日が来る。町中華では餃子がだいたい6個出てくるんだけど、若い頃は簡単に食えるよ。でも今の俺は「旨そー!」なんて言うけど、同時に“食べられないわ!”って心の中で思うわけ。女性読者の皆さんは「シワやシミができるのが嫌だ」なんて言うんだろうけど、俺はシミができて、シワが増えていくほうが良いなって思うよ。そんなふうに自分も一緒に成長していったほうが面白いじゃん。

◆“町中華の所作”なんて、特にない

――いわゆる“味”を楽しむってことですね。

玉袋:そうだよ。自分の味も楽しめるようになると良いよね。

――番組が始まるまで“町中華にひとりで行ったことがなかった”という意味では、初代女子メンバーの高田秋さん、坂ノ上茜さんも同じで、玉袋さんから町中華の所作を学んでいったと思います。

玉袋:所作なんて特にないと思うよ。これは種明かしになっちゃうんだけど、町中華のメニューって限られているわけじゃん。だから広がりを持たすために俺なんかは(番組内で一杯目のビールを流し込む際のルーティンとして)「気道確保」とか「洗浄」なんてやっているわけだよ。普通に食えばいいよ。

でもさ、初めて入った店でもやし麺にいきなりお酢をぶっかけちゃう奴っているじゃん。それもまた良しなんだけど、これは常連だけが許されることなんだよ。初めて行った店の料理にいきなり酢をぶっかけるのは、ダメだろうね。まずナマで食えってね。そういうのは恥ずかしいかもね。

ただ、俺から積極的に「町中華に行け、行け」とは言いたくないのよ。だって面白いものは自然と広がっていくし、興味持つ人がいるじゃん。みうらじゅんさんの趣味の話もまさにそうで、わかる人が共感してそこから広がっていく。それでいいのよ。

◆ボトルが並んでる町中華は“強えー”と思う

――町中華とチェーン店との違いはどんなところにあると感じていますか?

玉袋:味のレベルもチェーン店は安定してると思うよ。通えばチェーン店にだって馴染みの店員ができるだろうしね。でも町中華には“何かここが良いな”っていう独特の部分がある。チェーン店は個性を出せないじゃない。富士そばは店舗ごとに個性があるから俺は好きなんだけどさ。それで自分に合わなかったら、やっぱり行かなきゃいいんだよ。スナックもそうでさ、ママさんと馬が合えば、常連になればいいんだよ。

――そうですね。言い方はドライですけど、あくまでも選択権はこちらにあるというか。

玉袋:そうだよ。ただ町中華はスナックや居酒屋と違ってボトルキープがあんまりできないじゃない。でもこの番組でロケに行ったりすると、たまにボトルが並んでる店があったりするわけ。そういうとき「ここは強えーな」って思う。常連たくさん抱えてるんだろうなって。

――面白い視点ですね。そこで顧客の熱量も感じ取れるというか。

玉袋:うん。そういうところからもストーリーを勝手に展開しちゃえばいいんだよ。近所の会社の人たちがここで飯食って、楽しくなって帰ってるんだなとかさ。そんなところもお客を大事にしている証拠だしね。

物事を真正面だけじゃなく、いろんな角度から見て、自分の中で展開する楽しみっていうのは、町中華や居酒屋にあるんだよ。でもそれは俺の趣味の話ってだけで、どこの店でもあるのかもしれないね。そうやって物事を見ることで、自分の中の引き出しも増える気がするよ。

<取材・文/中山洋平 撮影/市村円香>

【中山洋平】
1983年生まれ。群馬県前橋市出身、埼玉県川越市育ち。主にエンタメ分野のニュース・インタビュー記事を執筆。サウナ、ビジネスホテル、ファッション、Mリーグ、ボウリング、The Beatles、サザンオールスターズ、坂道シリーズ、お酒を好む。X:@yhinakayama

    ニュース設定