国際航空運送協会(IATA)は、2025年の航空業界の利益率が3.6%に改善するとの見通しを示した。スイス・ジュネーブで開催中のIATAグローバル・メディア・デー(IATAGMD)で明らかにした。
2025年の総収入は1兆700億米ドルに伸長し、1兆米ドルを超えて過去最高となる見通し。営業利益は675億米ドル、純利益は366億米ドルを見込んでいる。旅客数は52億人となり、2024年比6.7%増と過去最高の50億人台と予測する。運航便数は4,000万回(前年比4.6%増)に達する。
総収入は世界経済のほぼ1%を占めるものの、約9,400億米ドルの税金や利息の支払いにより、1人あたりの利益は7米ドルと薄利は続く。原油価格下落の恩恵を受けるものの、サプライチェーンの効率化やパフォーマンスの改善が必要となる。コロナ禍の繰越欠損金を使い果たし、税率の上昇による利益圧迫も予測する。
旅客収入は7,050億米ドルで、付帯収入として1,450億米ドルを予想する。イールドは3.4%低下し、平均運賃は380米ドルを見込む。物価調整済みの実質ベースでは、2014年比44%の低下となる。旅客需要は8%増、供給量は7.1%増で、平均座席利用率は83.4%を見込む。IATAの世論調査では、調査対象の41%が旅行回数を増やす、53%が維持すると回答した。さらに47%が旅行に費やす費用を増やす、46%が維持すると答えた。
貨物収入は1,570億米ドルで、需要は6%増加し、収益はコロナ前の水準を大きく上回る。地政学の不確実性による船舶から航空輸送への転換や、アジア発のeコマース需要増加が後押しする。
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コストは9,400億米ドルに前年比4%増加する見通しで、人件費の上昇やストライキ関連費用、機体のメンテナンスコストといった燃油以外の増加が顕著になる。このうち人件費は前年比7.6%増の2,530億米ドルに達するものの、生産性も向上する。労働力は4%増の330万人を予測する。
ジェット燃料の価格は、ロシア・ウクライナ戦争の開始以来初めて、9月に1バレルあたり70米ドルにまで下落した。2025年には前年比12米ドル減の1バレルあたり平均87米ドルを見込む。カーボンクレジットの購入に伴うコストも増加する。
リスクとして、ヨーロッパと中東での紛争拡大、トランプ政権による関税や貿易戦争のほか、金利引き上げやインフレ再燃、原油価格の変動を挙げた。(取材協力:IATA)