「核兵器も戦争もない世界を求め、共に頑張りましょう」。ノルウェーのオスロ市庁舎で10日開かれた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授賞式。厳かな雰囲気の中、代表委員の田中熙巳さん(92)が講演で訴えると、出席した被爆者らは喜びを胸に耳を傾けた。
午後1時(日本時間同9時)すぎ、ファンファーレが式典開始を告げ、ハラルド5世国王らが入場。ノーベル賞委員会のフリードネス委員長(40)は日本被団協の核廃絶への取り組みを「他に類を見ない」とたたえた。
田中さんと箕牧智之さん(82)、田中重光さん(84)の代表委員3人が登壇。フリードネス委員長からメダルと賞状を手渡され、会場は拍手に包まれた。
その後、田中さんは発言台に立って約20分間、大きなよく通る声で受賞講演を行った。「自分たちが体験した苦しみを、世界中誰にも味わわせてはいけない」と運動の意義を語った。
日本被団協が核廃絶とともに運動の柱としている原爆被害への国家補償の実現に話が及ぶと、「何十万人という死者に対する補償は一切ない。もう一度繰り返します。死者に対する償いは日本政府は全くしていない」と強調した。
「核と人類は共存できない。人類が核で自滅することのないよう、共に頑張りましょう」と力強く訴え、講演を終えた。響き渡るスタンディングオベーションが送られた田中さんは、感極まった様子で一礼した。
日本被団協の被爆者らも時に涙を拭いながら講演を聴いた。被爆2、3世や、日本から訪れた「高校生平和大使」ら若い世代も参列し、約1時間10分にわたる式典を見届けた。
ノーベル平和賞授賞式で講演する日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員=10日、オスロ(AFP時事)