ヤクルト・丸山和郁が青木宣親から授かったアドバイス 苦悩と試行錯誤の先に希望が見えた

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2024年12月11日 07:31  webスポルティーバ

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 ヤクルト・丸山和郁のプロ3年目は喜怒哀楽に満ちていた。2月は試行錯誤の繰り返しに思案顔となり、春は「自分がやってきたことに初めて信じることができています」と打撃好調に笑顔がはずみ、夏は「何がなんだかわかりません」と失意の表情を浮かべていた。

 秋のフェニックスリーグ(宮崎)では、凡打にバットを叩きつけてしまったことに「情けないです」とイライラを募らせたが、秋季キャンプ(愛媛・松山)の打ち上げ前日に「原点ができたかもしれません」と、目を輝かせてオフシーズンに入った。

【シーズン序盤は打率3割超えの快進撃】

 今シーズン、丸山の前半戦の活躍はチームに新鮮さをもたらした。自然体のフォームから面白いようにヒットを重ね、5月12日の時点では打率.347をマークした。

「一番はタイミングが取れたことで、ピッチャーの真っすぐを速く感じなくなり、思ったところにバットが出て、イメージしたところにヒットが出ていました。でも、本当の意味での好調ではなかったですね。春先に『これだ!』と思ったのですが、結局は土台のない急造のフォームでした。それがいいほうにハマり、2、3カ月続いただけで......たまたまの要素が大きかったのかなと」

 5月半ばを過ぎると、ヒットは出るがマルチ安打がなくなっていく。その後、頭部への死球、打球を追ってフェンスに激突し脳震盪で登録抹消されるアクシデントもあった。7月16日の中日戦(神宮)で約2カ月ぶりのマルチ安打が出た時には、打率は.267まで落ちていた。

「これだけ長いイニング出ることは、自分にとって未知の世界でしたし、試合終盤になると疲れも出てきてしまって......脳震盪の影響はないです。死球を頭にもらって、ちょっとビビってしまったくらいのものです(笑)。前半戦にスタメンで出させてもらって、年間を通して戦える体力というものについて経験できたのは大きな収穫でした」

 ところが8月に入ると、好調時のフォームは見る影もなく、三振と引っかけたゴロアウトがほとんどで、26日に登録抹消されるまでの成績は22打数1安打。

「あの時期は頭の中がパニックでした。野球が早く終われと思うほどきつかったです」

 ただその間も、早出練習を欠かすことはなかった。

「朝の早出でもずっと打っていたんですけど、確認するポイントが違っていたのかなと。こういう打球が出ているからOKだという意識でやっていたのですが、たとえば股関節にしっかり体重が乗っているか、打ちにいく時に体がスウェーしていないか、重心がどこにかかっているかなど、そういうポイントを意識してやればよかったですね。結局、土台として完全じゃなかったので、状態が落ちた時に脆かったというか......戻る場所が見つからずに、迷子になってしまいました」

【青木宣親から授かった金言】

 この春、丸山は青木宣親から「まずは0から1をつくることが大事だよ」という金言を授かった。1がないと2や3に進めない。そう理解して、土台づくりに励んだ。

「0から始めて8くらいまでつくれたかと思ったのですが、違いましたね。また0に戻りました(笑)。その時の感覚だけでやってしまって、中途半端でした。そこからノリさん(青木)にアドバイスをもらい、また土台づくりを始めることになりました」

 二軍降格後は78打数27安打(打率.346)、3本塁打。20試合でノーヒットはわずか1試合と結果を残し、9月25日に再び一軍昇格となった。どうしてもその場所にいたいと語っていた「青木の引退試合」にも間に合った。最終的には96試合(先発起用は66試合)に出場し、打率.241、61安打、出塁率.312、4盗塁を記録。多くの部門でキャリアハイを更新した。

「自分ではキャリアハイという感じはないです。前半、あれだけよかったこともあり、もっと数字を残せると思っていたので。そんなに甘くないと言われたらそうなんですけど、レギュラーも、バッティングも、つかめそうなところまでいったけどつかみきれなかった。プロ入りしてから今年が一番悔しいかもしれないですね」

 大松尚逸チーフ打撃コーチは、今年の丸山のバッティングについて次のように話した。

「去年は一軍のピッチャーの速球に対しての対応に苦戦していましたが、今年はかなり改善が見られました。特に前半はタイミングの取り方がよくなって、スウェーすることが減ったことで成長を感じました。ただ一軍で結果が伴ってくると、苦手な球種やコースを徹底的に攻められるのは当然で、中盤以降はその対応に苦しんだということです」

 そして丸山のバッティングに対する姿勢については、「よく言えばしっかり考えているけど、悪く言えば悩みが自分本位すぎですよね」と苦笑いした。

「理想を高くするのはいいことですけど、もう少し柔軟に、(体勢を)崩されても拾って打ったり、詰まらされても押し込んだり、そういう幅を持つことができたらもっと伸びると思います」

【原点ができたかもしれない】

 10月にはフェニックスリーグに参加。個別練習では1時間以上もバットを振り続け、「結局、何も得られませんでした」と自虐的に笑う日もあった。また大松コーチからは、「おまえは何をしに宮崎に行ってるんだ」と電話で諭されたこともあったという。丸山が振り返る。

「何もできない自分に、最後までイライラしていました。でも大松さんから『おまえは自分と戦いすぎだし、練習で考えることは大事だけど、まずは対ピッチャーなんだから』と。ほんとそうだなと思いました。この時期は、考えられなくなるまで振れと言われて、そのなかでバランスがよくなるティーを見つけたんです。そこから感覚がよくなって、ちょっとずつボールが見えてきました」

 11月は2週間の松山キャンプで1日1500スイング以上を振り込んだ。レパートリー豊富な練習メニューをこなしていくなかで、「バッティングが変わりそうな気がします」と、再び手応えをつかんだ。

「変わった時のイメージは(長岡)秀樹です。そんなこと言ったら秀樹には申し訳ないですけど(笑)。左の股関節から右の股関節に重心移動させても突っ込まない。それが何とかなれば、変化球はもう少し打てるようになるのかなと。実際、そこを意識して、ゲーム形式のバッティング練習で真っすぐ、スライダー、チェンジアップのミックスでやったところ、低めの変化球も拾えました。まだ1か2ですけど、徐々にできるようになっているので、もっと継続していきたいです」

 打ち上げ前日の練習後には「原点ができたかもしれない」と力強く話した。きっかけは、最終クールから合流した山崎晃大朗外野守備走塁コーチが「自分はこんな練習していたよ」と見せてくれた、ネットに向かってノックを打つティーだった。

「やってみると、ノックの感覚で打つと割れができて、ボールに入っていける感覚があったんです。ここを原点に、振っていくなかで多少の変化はあると思うのですが、このキャンプの練習で引き出しは増えたので、その時の自分にどれが合うのかを見極めながらやっていこうと思っています」

 来シーズン、ヤクルトの外野はレギュラー候補が目白押しで、丸山と似たタイプには西川遥輝、並木秀尊、岩田幸宏らがいる。

「大学や高校の時はこういう競争の経験がなかったので、正直、ちょっと怖いというか、プレッシャーを感じています。でも、そんなことをいってもマイナスになってしまうので、もっと強い気持ちを持っていきたいですね。目指すのは全試合スタメン、打率は3割。ヒットは150本打ちたいですし、何でもいいのでタイトルも獲りたいです。ただ、言うだけなら簡単なので、発言したことに責任を持ち、自分にもっとプレッシャーをかけてやっていきたいです」

 プロ野球はオフシーズンに突入。丸山はしっかりした土台をつくりあげるため、今も試行錯誤を続けている。

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