古いお札やビールやスイーツの金券…大切にし過ぎて、持っていたことすら忘れていませんか?そんな人たちに朗報のSNSへの投稿が話題になりました。
「このいにしえの金券もう紙クズかな…と恐る恐る『まだ使えますか…?』と出したら『まだイケますよ!』って使えた」
Hkさん(@Hk1228_0528)のこんな投稿と共に紹介された画像は、十二単の女性のイラストの券。一定の世代から上の人たちには馴染みのある「図書券」です!
「いい絵ですよね〜〜!これぞ図書券の趣」
「お札いただくより嬉しかった」
「30歳超えてるけど知らない どの世代のやつです?」
「懐かし〜!普通のお金とは違った特別感があってすごく嬉しかったなぁ」
「今見たらこの図柄も本当に素敵ですね。もしかして紫式部のイメージなのかしら?」
「私もそろそろ使おうと考えてて、大々的に展開してた金券だし大丈夫だろうと思いつつも、実際に使えると聞いて安心しました! 情報ありがとうございます!」
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コメント欄は、図書券を知っている世代を中心に、懐かしい〜!まだ使えるの!?という声で沸きました。
今回の話題となった投稿をしたHkさんにお話をお伺いしました。Hkさんは人気コミカライズ『魔術師団長の契約結婚(SQEXノベル)』をはじめ、さまざまな作品を手掛ける小説家でもあります。
書店で恐る恐る「まだ使えますか?」と尋ねると…
——今回話題となった図書券は、いつ頃もらったものでしょうか?
「子どもの頃に誕生日とかお年玉の一部とかでもらっていた記憶があるんですが、他の金券と一緒に保管していました。家の整理をしていた中で出てきました。図書券はもらって嬉しかったものの一つです。
ちょうど子どもの本を買いにいこうと思っていたところだったので、店員さんに直接聞いてみたら使えたんです。家にはあと1枚ありますが、今回使えることがわかったんで、使ってしまうのが少しもったいないようにも感じています(笑)」
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——投稿への反響が大きかったことで、新たな発見もあったとか
「デザインがとても素敵だという意見が多く、同感でした。それから図書券に描かれているイラストの平安女性が広げているものが、巻き物ではなく本であることをコメントで知り、確かにそうで驚きました! 私も小説を書いていますので、本離れが進み、書店も減っていっている昨今を憂いていたのですが、紙の本が大好きなので、これからの子どもたちにもたくさん本を読んで欲しいと思います。それから、図書券が家に眠っている人がいたら、これを機にぜひ書店で使ってもらいたいですね」
トリビアがいっぱい!図書券の歴史を紐解く
さまざまな人が反応した図書券、今も使えるという情報は嬉しい限りですね。さらに図書券について、発行元の日本図書普及株式会社の担当者の方に伺ってみました。
———今回の投稿に登場した図書券は、いつ頃発行されたものでしょう?
「話題になっていた『全国共通図書券』は、昭和61年12月〜平成10年7月の間に発行されていた500円券です」
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———デザインされている十二単の女性が「紫式部では?」など、コメント欄では話題になっていましたが…
「これ以前の図書券は洋風のデザインでしたので、イメージを変えるため、和風のデザインを模索いたしました。最終的に、平安時代の女流作家をモチーフにした絵を職人さんに描いてもらい採用しました。描かれているのは実は特定の人ではありませんが、職人さんも『紫式部』や『清少納言』を想像して描いていたのかもしれませんね。因みに、このあとの平成10年7月〜平成17年9月の間は、同じデザインですが、ホログラムの入った図書券が発行されていました」
——図書券から図書カードに移行された経緯はありますか?
「『テレホンカード』(1982年〜/NTT(当時は日本電信電話公社))や『オレンジカード』(1985年〜/JR(当時は日本国有鉄道))といったプリペイドカードが各社から販売され、凄まじい勢いで全国に普及していったことと、書店で引き換えられた使用済みの図書券を回収しないといけないという物流の課題もあり、プリペイド化へ。発行当初は『全国共通図書券』の認知度が高すぎたため、図書カードへの切り替えには、長い期間かかりましたね」
——この図書券、今も使えるとのことですが、「いつまで」など期限はありますか?
「図書券も図書カードも加盟店制度に加盟している書店では、基本的に現在でもご利用いただけます。使用期限はございませんが、発行を終了して長期間経っておりますので、早めのご利用をおすすめしております」
——そもそも「図書券」は、なぜ生まれたんですか?
「図書券は、昭和35年、出版物の市場拡大と読書普及を旗印に、出版業界が共同して創設した本の商品券です。それまで多くの人々が『本を贈りものにしたい』と思いながらも、嗜好性が高く、個人の好みが強い本そのものを贈りものにするのは、なかなか難しいものでした。図書券の登場により、好きな本が選べるというメリットを兼ね備えながら、『本の贈りもの』が実現されたことで、多くの人々にご利用いただけるようになりました」
——現在の図書カードの利用状況は?
「2016年より発売開始しました『図書カードNEXT』が主流となっています。QRコードを読み取るタイプの図書カードで、サーバー管理型(Appleギフトカード、Amazonギフトカードなどもこのスタイル)の技術を採用しています。残高をサーバーで管理する事で、様々なサービスを提供できるようになりました。オンライン書店で使えるほか、オンラインでデジタル版の図書カードを贈れたり、残高確認や利用履歴も確認することができます」
Hkさんが「いにしえの」と表現したかつての図書券は、今やオンラインで扱える図書カードへと進化していました。図書券は進化しても、本に対する愛好家さんたちの気持ちは不変。クリスマスやお年玉の季節も到来するので、本や図書カードを贈ってみては?(もしかすると、大掃除で久しぶりに開けた引き出しから、図書券が出てきたりして!?)
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Hkさんは、人気コミカライズ『魔術師団長の契約結婚(SQEXノベル)』のほか、電子書籍『女王陛下は醜聞を避けたい』『偽装夫婦は素直になれない(共にミーティアノベルス)』も発売中。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・馬場 かやの)